山口拓夢・「短歌で読む」シリーズ紹介

哲学者かつ神話学者・山口拓夢の著書を紹介します。

「短歌で読むユング」数首③

2025-02-12 08:00:18 | 哲学の短歌
錬金術の泳ぎ方
ユングは、後半生、錬金術の読みときに没頭しました。
「哲学者の薔薇園」という、錬金術の教本の挿絵に
深い意味を見出しました。
「密やかな王と女王の結婚は 対立物の結合の比喩」

ふつう、一つの国で、王と女王が同時に君臨することは
ありません。けれども、錬金術では、両者を結婚させるのです。
これをユングは、心の中の対立物の調和だと、読みときました。

「両性が浴槽深く身を浸し母胎の海へ回帰している」
この、王と女王が、裸で浴槽に身を浸している挿絵が出てきます。
これをユングは、母胎または無意識への回帰として、いい徴候と見ています。

「両性が長い心の旅を経て 原初の海でついに抱き合う」
この両性の結合の成就は、心が完全性に近づいていることだ、と考えました。

「蛇を持ち翼の生えたキリストは賢者の石で自己のシンボル」
心の深化の到達点が、この異教のキリスト像であり、錬金術の完成を
示す、賢者の石だと、ユングは考えました。

このように、心の深化のプロセスとして、ユングは錬金術を見ていました。

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