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『ノスタルジア4K修復版』

2024-01-28 23:59:00 | 映画鑑賞
鑑賞日時1/28(日)13:30 
Bunkamura ル・シネマ渋谷宮下

 快晴の日曜日。午前中は新宿マルイにあるKEYUCAで買い物をして、そのまま渋谷の映画館へ向かった。『ノスタルジア4K修復版』を鑑賞した。

 なぜ今『ノスタルジア』をこんな寒空にわざわざ映画館まで出向いて観にいくのか?行動する動機とはなんなのか?…それはやはりアンドレイ・タルコフスキー監督の作品だからに他ならない。

 タルコフスキーが表現する精神世界(映像)は、昨今の映画が頻繁にテーマとする、性の葛藤、生命の尊重、社会の中での疎外感などの普遍的であろうとするヒューマニズム=共感とは無縁の領域であり、観客はそこへ積極的に踏み込むことによって日常の生活では決して体験することのない一種独特のカタルシス(快感)に酔うことができる。

 ただあまりにもタルコフスキー自身の個人的な問題が表出されているためこの作品を楽しむにはいくつかの前提知識が必要となってしまう。私の稚拙な解釈だけど簡単に挙げてみる。

 ①『国境』『言語(詩)』『信仰』。この3つの抽象的なキーワードを確実におさえておきたい。この映画作品の骨肉となる概念であり、物語の流れとして最終的には『信仰』に収斂していくものと感じる。これはイングマール・ベルイマン監督の作品にも示されていた態度と同じものだ。②次に登場人物の関係性からゴルチャコフ=ドメニコ(鏡像関係)を頭に入れておく。これはゴルチャコフがドメニコの思想に感化されていく重要な場面がいくつかある。
この2つの項目だけでいい。とりあえずは。

 私はゴルチャコフ役のオレグ=ヤンコフスキーの終始深淵な表情の演技が好きだし、ラストの場面でドメニコとゴルチャコフのシンクロさせたような命がけの行動に、前記した『信仰』の悲しみ、いや悲しみではなくて、この世界はそもそもこうなんだ、だからこれは必然なんだ…という覚醒と諦念の思いが湧き立ってくるのがわかってくる。その瞬間に言葉にならない感情の浄化作用が起こるのだ。

 日常生活のサイクルになかなか余裕がなくて、映画館で観るべき映画をつい厳選してしまうが、今年もこのスタンスでいこう。






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