1位『悪は存在しない』濱口竜介監督
鑑賞日7/21
鑑賞場所シモキタエキマエシネマK2
私が好きになる映画作品は物語(ストーリー)よりも題材(テーマ)が醸し出す世界観の表現に重点を置いている作品となる。起承転結を追って楽しむことよりも、一瞬でも不意に映し出されてしまう映像表現に感動すればそれでいい。『悪は存在しない』で言えば都会と田舎、自然と開発等の二項対立の図式をリアルな社会問題として読み取ることは容易い。でも”悪は存在しない”という否定のテーゼは当然表裏一体的に肯定の”悪は存在する”を内包している。そうなると私の解釈は”悪は存在する”のは人間の世界であり、”悪は存在しない”のは鹿(シカ)の世界なのである。この作品には人間の世界とは別に、鹿の世界が描かれていると思う。それは巧(大美賀均)と花(西川玲)が存在するもうひとつのパラレルな世界。そう、巧と花は鹿の化身と私は断定する。花が手負いの鹿の親子に近づいたのは花が鹿の世界に居る存在だからだ。花を抱えたまま全力疾走する巧はすでに鹿の姿に変わっている。そう解釈すればラストも理解可能となる。以下5位を書き記す。さりげなく主人公たちがアクチュアルに体験する"異世界"を描いた良い作品が多かった。
2.ルート29 森井勇佑監督
3.ピアニストを待ちながら 七里圭監督
4.違国日記 瀬田なつき監督
5.夜明けのすべて 三宅唱監督