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『ミステリアス ピカソ天才の秘密』
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1956年公開
アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督作品
鑑賞日時:2/16(日)11:00~12:20
鑑賞映画館:銀座メゾンエルメス Le Studio
煙草の煙をくゆらせながら歴史的名画家パブロ・ピカソが何やら撮影用に準備された特殊なキャンバスを使って絵画を制作を始める。その特殊なキャンバスというのは半透明な白板で、ピカソと数十年来の友人同士であるこれも歴史的名監督のアンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督が、その裏側に置かれたカメラの視線をキャンバスに向けて撮影を続けている。ピカソのドローイングから色付けまでの創作過程の時間的な流れが画面いっぱいに一部始終観客に向けて示されるわけだ。
全編を占めるピカソ自身の創作過程が大変興味深くて飽きることがない。最初ドローイングの段階では何が描かれているのかわかるのに、輪郭や色付けに進むと思いつきの修正の連続なのか、何がなんだかわからなくなってくること。さらに「いよいよ完成かな…?」と思ったら、「なぜそこで黒で上塗りを始めてしまうんだ?」と驚嘆しながら眺めていて、ピカソが筆を止めると、その絵は「ああ、やっぱりピカソの絵だ!」と妙に納得してしまう。人物が眠っている様子なのか?と思ったら突如ど真ん中に闘牛の頭が現れたり、しまいにはピカソ本人が「ひどいことになってしまった。」「だんだんひどくなる。」と独り言をつぶやく始末。
ここに意識的なのか無意識的なのか写実→崩壊→再構築といったキュビズムの特徴が実証、再現されている。ピカソ自身にとって絵画創作とはこんなにもミステリアスなものだったのか!?「ゲルニカ」はともかく、「泣く女」や「アヴィニョンの娘たち」はほんとうに完成したものだったのか?怪しくなってきた。
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