【訪問日時】
2016年10月28日(土)19時30分頃
池袋の夜の繁華街。冷たい雨が降りしきる南池袋パーク商店街に出た。見渡せば一風堂や二郎、もう少し歩けば屯ちんも健在といった近い範囲に軒並み有名店が犇めくラーメン激戦区である。濡れたペイヴメントが灯りに反射して光っている。こんな日は週末を迎える金曜日でも店内は空いている。暖簾をくぐり、引き戸を開けて券売機の前に立ち、もう既に決めていた”もりそば”のボタンを徐に押下。カウンターの真ん中あたりに座り、中国系らしき新人女性店員に食券を渡す。新人さんの応対ぶりを後方で静かに見守る他のスタッフたち。なかなか緊張感が伝わる。
中盛りでお願いしていたもりそばが出された。デフォルトで心持ちぬるく仕上げたスープは甘みと酸味と辛みといつもの三拍子で今夜は辛みが勝っているような印象を受けたものの、それでも東池袋の本店よりもやや控えめで自分としてはこちらの方が好みかも。水で締めて艶面を晒したボリュームたっぷりの中太麺。食べ応えのあるチャーシューに味わい深いメンマ。なにもかもが”直営”という特権的な立ち位置をモチベーションとして充分に生かされている美味しさを感じた。
それにしても、というか、実は私は”もりそば=つけ麺”の食べ方を未だ知らない。方法などというものはないんじゃない?と言われればそれまでだけど、つまり自分にとってのつけ麺の美味さをベストに引き出す最善な食べ方なるものを自身で確立していないような気がするのだ。それは”疑問”という疑いを問うことの無謀さをもりそばを食べている最中にもつい思いを巡らせて、はしたない身振りとして晒してしまうのは、形式的なざる蕎麦の食べ方をこのもりそば対しても同じような方法で食してしまう。それはまさに箸で取った麺の3分の1くらいをスープにちょっと浸けただけで、すぐ口に持っていってしまうという事態に他ならず、蕎麦なら蕎麦自体の蕎麦の実からくる香り食感と共に味わう楽しみがあるけれど、もりそばの麺にはもちろん全く味はしないことはないけれど、その物足りなさを克服しようとるならば麺をどれだけスープに馴染ませることが可能かの素材云々とは異質の、意外にもテクニカルな問題を抱えていたりはしないだろうか。そこではデフォルト仕上げる温いスープのなぜに?こだわるたいし、それにはもりそば発祥の経緯を今一度確認することが大事で、ここで故山岸一雄氏のインタビューを載せた、もりそばが生まれた瞬間というエピソードを読む。
『俺が店を任されるようになってからは、兄貴の味の他に新しいメニューもいろいろ考え出してはいたんだ。あるとき、夏の暑い時期に出すメニューを考えるようになってね。あの頃のラーメン屋ってどこも四月あたりから冷やし中華を出していて、そうでないと夏が越せなかったんだよ。だけど冷やし中華はタレ作りが大変だったし、もっといいメニューはないかなと考えてた。ちょうどそんな時にいつものように賄いで麺をスープにつけて食べていたら、お客さんが美味しそうだねって言ってきた。それで食べてもらったら美味しいからメニューにした方がいいと言われて研究を始めたんだ。つけだれを甘酸っぱくしたものも冷し中華がそもそもの発想。冷し中華の甘酸っぱい美味しさをラーメンで表現できないかと思ってつけだれに酢や砂糖を入れた。お腹いっぱい食べて欲しいから元々ラーメンも量は多かったけど、ラーメンと同じ量だと貧弱で見栄えが悪いのでもっと増やしてね。
(出典引用:トーキョーノスタルジックラーメン: 懐かしの「東京ラーメン」完全ガイド 著者: 山路力也)』
もりそばを”賄い”の延長上で発展していったトピックにはさしたる関心はないものの、ここではもりそばがそもそも夏季限定で、しかも冷やし中華への対抗メニューとして開発されていったこと、同時に冷やし中華の模倣として作られていったことに多少とも興味がわくところではあるまいか。結論を急ぐと、”もりそば=つけ麺”は徹底的にスープを冷やして食べるような夏季限定に相応しいメニューなのである。
【ざるそばは22℃以上で売れ始める】
http://www.foodwatch.jp/strategy/tabledesk/35742(Food Wacth Japan)
せっかく冷水でキチッと締めた麺を再びお湯を通して出すような”あつもり”などわけのわからないオプションでダラダラと通年メニューに固執せずにここは脂が固まるほどに冷たくなくてもいいから、常温より少し冷たいスープなら酸味もより効いてきて麺の3分の1を浸けても十分に馴染んでくれる。つけ汁のやがて冷めてくることの虚しさまでも過去の懐かしさへと葬り去ることのできるまたとないチャンスではないだろうか。
2016年10月28日(土)19時30分頃
池袋の夜の繁華街。冷たい雨が降りしきる南池袋パーク商店街に出た。見渡せば一風堂や二郎、もう少し歩けば屯ちんも健在といった近い範囲に軒並み有名店が犇めくラーメン激戦区である。濡れたペイヴメントが灯りに反射して光っている。こんな日は週末を迎える金曜日でも店内は空いている。暖簾をくぐり、引き戸を開けて券売機の前に立ち、もう既に決めていた”もりそば”のボタンを徐に押下。カウンターの真ん中あたりに座り、中国系らしき新人女性店員に食券を渡す。新人さんの応対ぶりを後方で静かに見守る他のスタッフたち。なかなか緊張感が伝わる。
中盛りでお願いしていたもりそばが出された。デフォルトで心持ちぬるく仕上げたスープは甘みと酸味と辛みといつもの三拍子で今夜は辛みが勝っているような印象を受けたものの、それでも東池袋の本店よりもやや控えめで自分としてはこちらの方が好みかも。水で締めて艶面を晒したボリュームたっぷりの中太麺。食べ応えのあるチャーシューに味わい深いメンマ。なにもかもが”直営”という特権的な立ち位置をモチベーションとして充分に生かされている美味しさを感じた。
それにしても、というか、実は私は”もりそば=つけ麺”の食べ方を未だ知らない。方法などというものはないんじゃない?と言われればそれまでだけど、つまり自分にとってのつけ麺の美味さをベストに引き出す最善な食べ方なるものを自身で確立していないような気がするのだ。それは”疑問”という疑いを問うことの無謀さをもりそばを食べている最中にもつい思いを巡らせて、はしたない身振りとして晒してしまうのは、形式的なざる蕎麦の食べ方をこのもりそば対しても同じような方法で食してしまう。それはまさに箸で取った麺の3分の1くらいをスープにちょっと浸けただけで、すぐ口に持っていってしまうという事態に他ならず、蕎麦なら蕎麦自体の蕎麦の実からくる香り食感と共に味わう楽しみがあるけれど、もりそばの麺にはもちろん全く味はしないことはないけれど、その物足りなさを克服しようとるならば麺をどれだけスープに馴染ませることが可能かの素材云々とは異質の、意外にもテクニカルな問題を抱えていたりはしないだろうか。そこではデフォルト仕上げる温いスープのなぜに?こだわるたいし、それにはもりそば発祥の経緯を今一度確認することが大事で、ここで故山岸一雄氏のインタビューを載せた、もりそばが生まれた瞬間というエピソードを読む。
『俺が店を任されるようになってからは、兄貴の味の他に新しいメニューもいろいろ考え出してはいたんだ。あるとき、夏の暑い時期に出すメニューを考えるようになってね。あの頃のラーメン屋ってどこも四月あたりから冷やし中華を出していて、そうでないと夏が越せなかったんだよ。だけど冷やし中華はタレ作りが大変だったし、もっといいメニューはないかなと考えてた。ちょうどそんな時にいつものように賄いで麺をスープにつけて食べていたら、お客さんが美味しそうだねって言ってきた。それで食べてもらったら美味しいからメニューにした方がいいと言われて研究を始めたんだ。つけだれを甘酸っぱくしたものも冷し中華がそもそもの発想。冷し中華の甘酸っぱい美味しさをラーメンで表現できないかと思ってつけだれに酢や砂糖を入れた。お腹いっぱい食べて欲しいから元々ラーメンも量は多かったけど、ラーメンと同じ量だと貧弱で見栄えが悪いのでもっと増やしてね。
(出典引用:トーキョーノスタルジックラーメン: 懐かしの「東京ラーメン」完全ガイド 著者: 山路力也)』
もりそばを”賄い”の延長上で発展していったトピックにはさしたる関心はないものの、ここではもりそばがそもそも夏季限定で、しかも冷やし中華への対抗メニューとして開発されていったこと、同時に冷やし中華の模倣として作られていったことに多少とも興味がわくところではあるまいか。結論を急ぐと、”もりそば=つけ麺”は徹底的にスープを冷やして食べるような夏季限定に相応しいメニューなのである。
【ざるそばは22℃以上で売れ始める】
http://www.foodwatch.jp/strategy/tabledesk/35742(Food Wacth Japan)
せっかく冷水でキチッと締めた麺を再びお湯を通して出すような”あつもり”などわけのわからないオプションでダラダラと通年メニューに固執せずにここは脂が固まるほどに冷たくなくてもいいから、常温より少し冷たいスープなら酸味もより効いてきて麺の3分の1を浸けても十分に馴染んでくれる。つけ汁のやがて冷めてくることの虚しさまでも過去の懐かしさへと葬り去ることのできるまたとないチャンスではないだろうか。