セイナルボンジン

時代を逆行する大きなお友達ブログ。宇宙戦艦ヤマトや東映特撮ほか。

ノワール映画特集(2) やがて復讐という名の雨

2013-05-08 00:11:34 | 映画
やがて復讐という名の雨
2008年 オリヴィエ・マルシャル監督作品

主人公・ルイは、パリ警察の刑事。
腕利きの刑事でしたが、自分が不倫している間に家族が事故に会い、娘は死亡、妻は植物状態。罪の意識からアル中になり、酩酊状態で事件を起こして殺人事件の捜査を外されてしまいます。
公私ともにどん底の刑事、最後の意地をかけて連続殺人鬼を追いますが、それも警察組織の闇に阻まれてしまい…というお話。


どん詰まり刑事の最後の選択を情感たっぷりに描いた、現代のフレンチ・ノワールの一本。
話の筋立てよりも、キャラクターや全体の雰囲気で見せるあたり、ヨーロッパ映画らしいというか、往年の松本零士作品っぽいと言うか。

いやあ、何がイイって、まず邦題がとにかく秀逸ですよね。別に主人公は復讐をしている訳ではないのですが(笑)、この映画のもつムードをうまい事現していると思います。

お話自体は、個々のエピソードはインパクトあるのですが、(模範囚を装って出獄するサイコ野郎のくだりは強烈)全体のまとまりはあまりない感じ。
ただ、一つ一つの場面がとにかく絵になります。小便漏らしたとか言ってる薄汚ないボロボロの親父が何であんなにカッコ良く見えるんだろう。
また、女性陣もさほど出番は多くないのですが、いずれも美しく、弱さと強さを持った魅力的なキャラクターとして描かれています。特に、主人公と不倫していた女性が印象に残ります。理性的なエリートなのに、どうしようもない男と関係を持たずにいられないという。すごく美人でもないんだけど、不思議と説得力あります、調べてみたら監督の奥さんだそうで…

同じ監督・俳優の組み合わせでは「あるいは裏切りという名の犬」も良かったです。というか、話はこっちの方が面白かった。
フランス映画って、ただそこに人が立っているだけで絵になるような、そんな気がした一本でした。

ノワール映画特集(1) SPL/狼よ静かに死ね

2013-05-04 23:04:36 | 映画
SPL/狼よ静かに死ね
2005年 ウィルソン・イップ監督

サモ・ハン演じるマフィアのボスと、彼を捕まえようとするサイモン・ヤム、ドニー・イェンらはみ出し刑事チームの激しい闘いを描く、香港ノワール・アクション。

一言で言うと、大好き(笑)
久しぶりに、自分の好みドストライクの映画です。あんまり好き過ぎて上手く面白さを説明出来る気がしませんが、思いつくままに感想を書いてみたいと思います。
マーシャルアーツは漢のたしなみ!

① 渋過ぎるストーリーが素晴らしい!
話自体は先に書いたとおり、至ってシンプルな筋立てです。
しかしタイトルのSPL(占星術の言葉で「殺破狼」)が示す通り、まさに女子供のつけいる隙のない、全編ハードな、男の意地と血に塗れたド熱い物語が展開します。
様々なキャラクターが登場しますが、共通するテーマは父性愛。裏社会に生きる男たちの不器用な優しさと、非情な闘いのコントラストにグッと来ます。

②コテコテの人物造形が素晴らしい!
香港映画らしい、いかにもな人間ドラマ。だが、それがいいのです。

チャン刑事(サイモン・ヤム)
前半の主人公にして、捜査チームのリーダー。サモ・ハンに殺された証人の娘を養女として育てています。不治の病に侵され数日後に退職を控えていますが、その前に何としてもサモ・ハンを逮捕しようという執念がやがて暴走していき…

マー刑事(ドニー・イェン)
真の主人公。サイモン・ヤムの後任として捜査チームに加わる、かつての武闘派刑事。過去にとある犯罪者を殴った事で重い後遺症を負わせており、今もその件を引きずっています。
サモ・ハン逮捕を焦るあまり、証拠の捏造に手を染める捜査チームと衝突しながらも、やがて固い友情を築いて行きます。
組織の殺し屋(ウー・ジン)とのドスVS警棒バトルはこの映画の白眉!

ポー(サモ・ハン)
マフィアのボス。邪魔者を即抹殺するなど冷酷非情な悪党ですが、一方で妻子をこよなく愛する良き家庭人でもあります。
終盤には彼とドニー・イェンの対決があるのですが、鬼のように強いんだ、これが!当時50代半ばのサモ・ハンによるキレッキレのアクション(要所には吹替も使ってはいるんでしょうけど)、往時のカンフー映画好きとしてはこの残酷な闘いを見ているだけで幸せな気持ちに浸ることができました。素敵過ぎる!

メイン三人以外にも、刑事チームの面子は家族とのわだかまりを捨てきれない人間臭い連中でしたし、全編に渡って暗躍するドス使いの殺し屋は、真っ白なスーツ姿で不気味な存在感を放っていましたよ。

③激しい肉弾バトルが素晴らしい!
一介の刑事からマフィアの1番えらい人まで、さも当然のごとく達人級の大格闘を演じます。現代の香港が舞台ですが、銃火器に頼らない肉弾バトルオンリーという潔さに痺れます!
特に殺し屋のドスVS警棒と、ラスボスのサモ・ハン戦(伝統的なカンフーではなく総合格闘って感じ)が好きですね!!
元々この映画はドニー・イェンがタイのガチバトル映画「マッハ!!!」に触発されて制作したという事で、現代の香港アクションの最高峰が堪能出来ますよ。

とはいえ、恥ずかしながら自分はこれまでドニー・イェンを存じ上げませんでした。これからしっかりチェックして行きたいと思います。


話のラストは決してハッピーエンドではありませんし、細かいツッコミどころもあるのですが、男っぽい熱いドラマと香港系肉弾アクションが好きな方にはオススメの傑作だと思います!