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HPCをビジネスに使える時代が来た!

○ HPCが企業競争力の源泉に 最新の活用法と技術のトレンドを知る。

多くの企業にとって、コンピューティング・パワーはビジネスに欠かせないものとなった。コンピューターをうまく使いこなせる企業が製品やサービスをすばやく開発し、市場支配力を獲得できる。また、企業活動において気候変動への対応や再生可能エネルギーの開発、スマートシティ、物流の高度化、自動運転、高機能材料の開発など、社会課題の解決が大きな目的になりつつあり、その実現のために、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速や、ビッグデータやデジタルツイン、人工知能(AI)の活用が進んでいる。こうした時代において、いま大きな注目を集めているのが「ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)」だ。簡単に言えば、スーパーコンピューターの現代版である。

HPCといえば、メーカーや研究所が複雑な解析やシミュレーションに使うようなイメージが強い。しかし最近では応用範囲が急速に拡大し、コストも下がって多くの企業が利用しはじめている。

「AIや機械学習が登場し、HPCのイメージは大きく変わりました」と語るのは、HPCの動向に詳しいインテル インダストリー事業本部 HPC事業開発部長の矢澤克巳氏だ。

矢澤 克巳 氏
Θ 矢澤 克巳 氏・インテル インダストリー事業本部 HPC事業開発部長。

例えば、コロナワクチンの開発はHPCを活用することにより劇的に加速した。膨大な実験データを機械学習させて開発期間を短縮したり、分子構造から新材料の特性を計算で創り出すような開発が行われている。交通渋滞の緩和や災害時の最適な行動ルート、物流ルートや送電ルートの解析、街づくりの未来予測やエネルギーの効率化などにもHPCが使われる。HPCは特別なものではなく、社会課題の解決に不可欠な存在になりつつある。

しかし、課題もある。例えば、大きな電力が必要になることだ。計算能力を高めながら消費電力を下げるための技術開発が進んでいる。ハードウエアだけでなく、ソフトウエアやデータセンターなど、様々な角度から効率化が進む。

次ページから、HPCの最新の活用法やそれを支える技術のトレンドなどについて解説し、HPCのビジネス活用を検討するうえで参考になる情報を提供する。

応用分野が拡大し、HPCへの期待が高まる。

HPCの応用分野が広がっている。特にAIの登場によってシミュレーションの効率が大きく上がったと同時に、対象になりづらかった分野にも幅広く使えるようになっている。

例えば、これまで自動車ボディの最適形状を導き出すためには、流体アルゴリズムを使ってパラメーターを一つひとつ変えながら、何千回、何万回というシミュレーションを重ねるしかなかった。コンピューターを24時間稼働させても、半年や1年はかかる。ところがAIの登場により、事情が一変した。過去の膨大なシミュレーション結果を機械学習させることで、最初から可能性の高い仮想実験だけに絞り込み、最小限の実解析で正解を引き出せるようになってきている。

高機能材料や創薬の世界もそうだ。かつては研究室で少しずつ合成を変えて実験を繰り返し、目的の性能を出せる物質を模索していた。しかし、実験には膨大な時間とコストがかかる。そこで、ある程度は実験するが、足りないデータは計算で補完するような技術が進んでいる。また、欲しい性能を生み出す分子構造を計算で先に求め、その結果を実験で確かめるような開発方法も普及しつつある。シミュレーション、実験、AI。この3つを適材適所で組み合わせ、開発のリードタイムを劇的に短縮する動きが加速している。

それだけではない。近年、HPCの活用は前述したような業種や分野に限られず、様々なビジネスシーンで広く使われるようになっている。例えば、大規模な需要予測や物流チェーンの最適化、ビッグデータの解析などだ。HPCは企業の経営戦略や課題解決を支援する頼もしい存在になりつつある。

そして、さらにその先あるのはデジタルツインやメタバースの世界だ。リアルな空間をサイバー空間に再現し、そこで様々なシミュレーションを行う。例えば、海水の温度が1度下がると海面の高さがどう変わるかといった温室効果ガスの影響や、土砂崩れや津波が起きたらどうなるかといった災害時の被害予測、クリーンエネルギーシステムの最適化などに使われている。街づくりにおいても、パラメーターを変えれば未来を予測したり過去を探索することができる。効率的で住みやすい街の設計や、エネルギー消費を減らす方法など、社会課題を解決するシーンでHPCの活用が広がっている。

ただし、課題もある。例えば、高速な計算には大きな電力が必要になる。様々なニーズに応えるコンピューティング・パワーを提供しながら、同時に消費電力を削減していく技術開発が進んでいる。そのためには、HPCの心臓部であるCPUにも最適な設計が求められる。また、ソフトウエアの最適化やデータセンターの省エネ化など、あらゆる方面からの対策が進んでいる。

「HPCとAI」の時代に向けた新技術でコスト低減へ。

いまHPCに使われているCPUの主流の一つが、開発コードネーム“Ice Lake”と呼ばれていた「第3世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー」だ。矢澤氏は「使いやすくて高い性能が出せるCPUです」と表現する。HPCがよく使われる20種類の用途において、基本性能が前世代より49%向上しただけでなく、AIや3Dモデリング、動画処理、暗号化、データ圧縮などに特化したデータ・パフォーマンスを備えた。

例えば、同プロセッサーに搭載されている「インテル® AVX-512」は、整数と浮動小数点の演算を512ビットまで拡張した。一度の命令で実行できるデータ容量を大幅に増やしている。これも、大量のデータを高速に処理するための技術だ。AVX-512はSkylakeで初めてインテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーに採用されたが、Ice LakeでAVX-512の処理効率が大きく改善され想定以上のその性能を実感できる。HPCでは、インテル製品の中で最高性能を誇るこのCPUを多数同時に使用し、演算処理の効率を大幅に改善している。

また、従来は深層学習を高速に処理するためには外付けのGPGPUをアクセラレーターとして用いる必要があったが、インテルはCPUの設計を根本的に見直し深層学習向けアクセラレーターをCPUの中に入れ込み、データ処理をさらに高速化する技術開発を進めている。次に出てくる第4世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーにAMX(Advanced Matrix Extension)として搭載される予定だ。

HPC向けのAVX-512と双璧をなすAMXが登場、HPC/AIの両輪が揃うことになる。これもHPCとAIを組み合わせて使いたいユーザーが増えていることに対応する動きだ。

データは宝の山、HPCで新たな価値を引き出せ。

ソフトウエアの分野でも変革が進んでいる。インテルは「インテル® oneAPI ツールキット」という新たな開発環境の提供を始めた。主な目的は、HPC向けのアプリケーション開発コストを大幅に削減し、ソフトウエアエコシステムの開発を業界全体で加速することにある。

「インテル® oneAPI ツールキット」のコンセプト。HPCのアプリケーションを一つの言語で開発できるようにした。無償で配布している
 
「インテル® oneAPI ツールキット」のコンセプト。HPCのアプリケーションを一つの言語で開発できるようにした。無償で配布している

これまでのアプリケーション開発では、CPU、GPU、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)などについて個々の開発言語やコンパイラがあり、それぞれの専門用語でプログラムを書かなければならなかった。インテル® oneAPI ツールキットではオープンスタンダードなC++とSYCLをベースにした「Data Parallel C++」という共通言語で書けば、コンパイルするだけでそれぞれに使えるようになる。インテルはインテル® oneAPI ツールキットを標準化されたソフトウエア開発環境として無償で配布しており、これにより、ユーザーが増え、エコシステムが形成されつつあるという。

HPCのメインプレイヤーであるインテル。同社のロードマップを知ることで、今後のHPCの動向がわかると言っても過言ではない。

インテルのHPCのロードマップ。2027年までにゼタスケールのHPCを実現する
 
インテルのHPCのロードマップ。2027年までにゼタスケールのHPCを実現する

2027年にはHPCで世界初となるゼタスケールを実現する。HPCがゼタバイト(10の21乗)に到達することで、HPC活用のすそ野も広がり、身近な存在になっていく。

「データそのものに価値があるわけではなく、解析によって引き出される意味にこそ価値があります」(矢澤氏)。同じデータを使っても、解析の視点や方向性を変えることで誰にも気づけないユニークな価値を見いだせる。すでに多くの企業がHPCを活用し、データから新たな価値を引き出している。この動きに乗り遅れてはいけない。


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