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着々と布石を打つ米マイクロソフトのAI戦略

〇 生成AI、とりわけ「ChatGPT」をはじめとする大規模言語モデル(LLM)は、わずか数カ月のうちにテクノロジー業界だけでなく社会全体をも大きく変えようとしている。

中でも、先手を打ってAI戦略を打ってきたのが、ChatGPTの開発元でもある米OpenAIに巨額の出資をし、自社製品、サービスに積極的に組み込んできた米マイクロソフトだ。

以前にもこのコラムで紹介したように、同社はOpenAIといち早く提携。そのソースコードに独占的にアクセスする権利を得た。ChatGPTをはじめとするOpenAIの技術は、APIを通じて呼び出して利用したり、独自の強化学習を施したりすることで、特定用途向けにアレンジ可能だ。だが、ソースコードを参照して自社製品に組み込めるのはマイクロソフトだけの特権だ。

さらに、開発ツールからOfficeアプリまで「Copilot」というブランドで開発者やオフィス従事者を支援する機能も開発してきた。検索エンジンの「Bing」へのLLM応用も進めている。「Microsoft 365」のオプションとして月額30ドルでAI機能を提供することも発表済みだ。

一石二鳥の両面作戦を展開。

これらの生成AIを活用した機能は同社のクラウドサービス「Azure」上で稼働させ、日々の開発を通じて最適化が進められている。この戦略は本当に見事だ。

最先端のAI技術を自社製品にいち早く統合し競争力を高められる上、より効率的に生成AIを動かす基盤としてAzureを育てていける。結果としてOpenAIの技術が広がれば、今後利用者が増えていくだろう生成AIのプラットフォームとしてのAzureの価値も高まる。

同社の収益のうち3分の1以上を占めるAzureと、同じく3分の1近いOffice向けアプリケーション事業の両方で競争力を高められるわけだ。それだけではない。

「Bing Chat Enterprise」と呼ぶChatGPTに似たサービスを月額5ドルで提供。これはGPT-4を用いつつも、質問や回答、強化学習などのデータをクラウドに流出させないように設計した企業向けAIサービスだ。

米メタ・プラットフォームズとも提携、メタがオープンソースで開発してきたLLM「Llama 2」をAzureを通じて提供する。Llama 2は改変しない限り商業利用を含めて誰でも利用可能。Azure上のAIモデルカタログとして提供されるため、Windowsの開発者は容易に開発アプリケーションに機能を取り込める。また、Windowsパソコン上でのLlama 2への最適化も進める予定で、DirectML(Machine Learning)でLlamaを実行プロバイダーに指定し、アプリケーションを作成できるようになる。

これにより、生成AIのプラットフォームとしてAzureが業界標準へ近づくだけでなく、アプリケーション開発環境の整備を通じ、Windowsが動作するサーバーやコンピューターにも浸透していく。

近い将来までを見渡すならば、パソコン用OSが生成AIと深く結び付き、日々のコンピューティングをサポートするようになっていくはずだ。そのとき、マイクロソフトの名前はあらゆるコンピューターのユーザーにとって、より身近で手放せないブランドになっている可能性がある。

生成AIを武器に着々と次世代への布石を打つ
画1、生成AIを武器に着々と次世代への布石を打つ
米マイクロソフトは米国時間の2023年7月18日、企業向けにBingを大幅に拡張した「Bing Chat Enterprise」のプレビュー版を提供開始するなど、広範なAI戦略を発表した。

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