○ お役御免となったWindows 10パソコン、「検証機」として使い倒す。
新たにWindows 11搭載のパソコンを購入し、お役御免となったWindows 10搭載のパソコンが手元に残ったら、その10搭載機を「検証専用」のパソコンとして利用してはどうだろう。
目的はセキュリティリスクの有無を判断する材料として使うこと。不審なアプリや怪しいウェブサイトの危険度を判断するために用途を失った10搭載機を活用する。パソコンが、ウイルスやマルウエアなどに感染すると、パソコン内に保存している文書や写真といった大切なデータが勝手にアップロードされてネットにさらされたり、データを人質に取られて金銭を要求されたりする恐れがある。
そこで、10搭載機を検証用とすることで出所不明のアプリやスクリプトを実行し、怪しいメールやウェブページを閲覧する。万が一ウイルスやマルウエアに感染しても、個人データを保存していなければ実害はない(図1)。事前に必要最低限の環境を構築し、その状態でバックアップを作成しておけば、感染前の状態へ簡単に戻せる(図2)。
図1、古くなったWindows 10パソコンを検証機として活用してはどうだろう。未知のアプリや怪しいウェブサイトは検証機で試すとよい。万が一、ウイルスなどに感染しても初期状態に書き戻すだけ。これなら安心だ。
Θ 簡単に初期状態に戻せるシステムを構築。
図2、未知のアプリや怪しいウェブサイトを試した後でも、10を初期状態に書き戻せば検証機をきれいな状態に保てる。フリーソフトを使ってOSのインストール直後の状態を丸ごとバックアップし、簡単に書き戻せる環境を構築しよう。
クリーンインストールで10をまっさらな状態に。
今回はパソコンの内蔵ドライブの中身をすべて初期化し、パーティションを再構築したうえで、10をクリーンインストールする。クリーンインストールなら無駄なアプリが組み込まれないため、それを起因とした問題も発生しにくい。パソコン内のデータをすべて消すので、検証機を作成する前にパソコン内に保存していたすべてのデータを、USBメモリーや外付けHDDなどにバックアップしておく。
また、今回紹介する方法でクリーンインストールすると、ほかのデータ領域やリカバリーに必要な領域も削除するので、パソコンを購入したときの状態に戻すのが難しい。もし、購入時の状態に戻す必要があれば、検証機を作成する前に回復ドライブを必ず作成しておく(図3)。
Θ 新規インストールで検証機を構築。
図3、新規インストール用のUSBメモリーを作成後、内蔵ドライブのパーティションを再構築して10をクリーンインストールする。それを丸ごとバックアップしておけば、簡単にインストール直後の状態に戻せる。
パソコンの内蔵ドライブを全消去し、パーティションを再構築して10をインストールするには、インストール用のUSBメモリーが必要。中身が消えてもよい8GB以上のUSBメモリーを新規インストール用のメディアとして用意する。それをパソコンに挿して10のインストーラーを起動。内蔵ドライブを初期化し、パーティションを再構築して10をインストールする。
なお、インストールやパーティションを再構築する際に、誤って自分の大事なデータを消してしまうことがないように、関係のない外付けHDDやUSBメモリー、SDカードなどのドライブ類は、事前にすべて外しておくことをお勧めする。
マイクロソフトのツールを用いて起動用USBメモリーを作成。
10のインストール用のUSBメモリーは、マイクロソフトが提供するツールで作成できる。ツールはほかのパソコンでも利用可能。もちろん11搭載機でも実行できる(図4)。
Θ インストール用のUSBメモリーを作成。
図4、上記ウェブページから「メディア作成ツール」を入手して実行し、画面の指示に従い操作を進める。中身が消えてもよい8GB以上のUSBメモリーを用意する。なお、図6までは別パソコンで作業しても構わない。
ツールをダウンロードしたら、画面の指示に従って実行する。検証機にインストールする10を11と同じ環境に合わせるなら、途中の「アーキテクチャ」を「64ビット(x64)」に指定する(図5)。そして使用するメディアで「USBフラッシュドライブ」を選択。その際、USBメモリーに保存しているデータはすべて消えるので注意する(図6)。
図5、「実行する操作を選んでください」の画面では「別のPCのインストールメディアを…」を(1)、「言語、アーキテクチャ、エディションの選択」では、「アーキテクチャ」で「64ビット(x64)」を選ぶ(2)(3)。
図6「 使用するメディアを選んでください」で、用意したUSBメモリーをパソコンに挿し「USBフラッシュドライブ」を選ぶ(1)。「USBフラッシュドライブを選んでください」では、挿したUSBメモリーを選択する(2)。
インストール用のUSBメモリーが完成したら、それを使い検証機に10をインストールする。USBメモリーをパソコンに挿した状態で電源を投入すると、10のインストーラーが起動する。もしも起動しない場合は、USBメモリーを挿すUSB端子を替えてみよう。それでも起動しなければ、パソコンの起動メニューを表示し、一覧からUSBメモリーを選ぶ(図7)。起動メニューは、電源を投入し、メーカーロゴの表示前から表示中にかけて、特定のキーを何度か押すと現れる。そのときに押すキーは、メーカーや機種によって異なるので、説明書やウェブサイトで必ず確認する(図8)。
Θ USBメモリーから10をインストール。
図7、図4〜図6で作成したUSBメモリーを検証機として使うパソコンに挿し電源を入れると、USBメモリーからWindows のインストーラーが起動する。起動しない場合は、起動メニューを開いてUSBメモリーを選ぶ。
Θ パソコンの起動メニューの表示方法。
図8、起動メニューの表示方法は、メーカーや機種によって異なる。電源を投入後、メーカーロゴが表示されているときにこれらのボタンを素早く何度か押すと、起動メニューを表示できる。
USBメモリーからパソコンを起動すると、最初に言語や文字入力、キーボードの設定画面が開く。ここはそのままで構わないから「次へ」をクリック。表示された画面で「今すぐインストール」を選ぶと、10のインストール画面が現れる(図9)。
Θ 10のインストーラーを実行。
図9、最初に言語の設定画面が表示されるが、そのまま「次へ」で進める(1)。次の画面では「今すぐインストール」を選ぶ(2)。
内蔵ドライブの構成を変更 2ドライブ構成で再構築。
10のインストール画面では、インストールの種類で「カスタム」を選ぶ(図10)。インストールの場所を選ぶ画面で、内蔵ドライブのパーティション構成を変更できる。
図10、ライセンスの承諾などは画面の指示に従って進める。この「インストールの種類を選んでください」の画面では「カスタム」を選ぶ。
今回は、パソコンの内蔵ドライブのパーティションをすべて削除し、新たなパーティションを設けてCとDの2つのドライブに分割する(図11)。そのうえでCドライブに10を、Dドライブにバックアップイメージを保存する。こうしておくと、DドライブにバックアップしたOSイメージを簡単にCドライブに書き戻せる。
Θ パソコンの内蔵ドライブをすべて初期化する。
図11、インストール場所を選ぶ画面では、パソコンが認識しているHDDやSSDが一覧表示される。ここで表示されているドライブ0が、通常は内蔵ドライブとなる。その領域をすべて消去する(1)(2)。なおパソコンによってドライブ構成が異なる場合もあるため、慎重に作業する。
10をクリーンインストールするには、最低でも30GB程度が必要。そこで、Cドライブには余裕をもって50GB以上、多くても内蔵ドライブの全容量の半分未満を割り当てる(図12)。最初にパーティションを作成すると、起動に必要な「システム」と「MSR(予約済み)」のシステム領域も同時に作られる。あとは、残りの領域を同じように割り当てるだけ。図13までの操作をすると、パーティション1から4まで作成されているはずだ。パーティション3がCドライブ、パーティション4がDドライブとなる。この後、CドライブとDドライブを必ずフォーマットする。そうしないと10のインストール後にDドライブが表示されない(図14)。
Θ 1つのディスクをC、Dの2ドライブに分割。
図12、「割り当てられていない領域」を選択し(1)、「新規」でCドライブのパーティションを作成する(2)。今回はCドライブに10をインストールし、Dドライブにバックアップデータを保存するため、Cドライブの容量を200GB(200000MB)とした。容量は多くても全体の半分程度の容量があればよい(3)(4)。
図13、Cドライブの領域を作成すると、システム領域も作られる。残りの領域には、図12と同じ操作でDドライブを割り当てる(1)~(4)。
図14、CドライブとDドライブの領域を作成後、それぞれ「フォーマット」する。これをしておかないとOSのインストール後にDドライブを認識しないので、必ず実行しておく。
Cドライブを選んで10のインストールを進める(図15)。必要なファイルのコピー後に再起動がかかるので、その時点でインストール用のUSBメモリーは取り外しておく。再起動後、設定方法を選ぶ画面では「個人用に設定」を選択(図16)。アカウントの追加画面では、ローカルアカウントを作成する(図17)。Microsoftアカウントを利用しても問題ないが、検証機はほかのパソコンと関係性を断ち影響を排除しておくほうがよい。10のインストールが完了したらWindows Updateが「最新の状態です」と表示されるまで繰り返す(図18)。次に検証機に必要なアプリや周辺機器のドライバーなどをインストールし、必要最低限の環境を整える(図19)。
Θ 10を新規インストール。
図15、図12でCドライブとして作成したパーティションを選択し「次へ」を選ぶ(1)(2)。ファイルのコピーが始まり、10のインストールを開始する。
図16、画面の指示に従い、言語やキーボード、Wi-Fiの接続設定などを実行する。画面の「設定する方法を指定してください」では「個人用に設定」を選ぶ。
Θ ローカルアカウントで10をインストール。
図17、「アカウントを追加しましょう」では、左下にある「オフラインアカウント」を選ぶ(1)。次の画面で「制限付きエクスペリエンス」を選ぶと、ローカルユーザーの作成画面に切り替わる(2)。覚えやすいユーザー名を入力してユーザーを作成する(3)。パスワードは空白で構わない。
Θ Windows Updateやアプリなどを追加。
図18、10のインストールが完了したら、OSの「設定」アプリからWindows Updateを実行する。「最新の状態です」と表示されるまで何度か繰り返す。
Θ バックアップ前に必要なアプリもインストール。
図19、ウェブブラウザーやメールなど必要なアプリや周辺機器のドライバーなどもインストールしておく。バックアップイメージを作成する前に、これらを済ませておこう。
10を丸ごとバックアップ 10の領域だけ書き戻す。
こうして必要最低限の環境を構築したら、システム領域と10をインストールしたCドライブを丸ごとバックアップする。そのデータをDドライブに保存しておき、問題が発生したらそのデータを書き戻し、10をきれいな状態にする。
システム領域や一部のフォルダーはWindowsのエクスプローラーではコピーできないため、バックアップ専用のフリーソフト「EaseUS Todo Backup Free」を使う。このソフトの「システムバックアップ」機能を使ってシステム領域をバックアップする(図20)。
Θ フリーソフトで10をバックアップ。
図20、提供サイトの上部メニューから「バックアップ&クローン」を開く(1)。一覧から「Todo Backup Free」の「ダウンロード」をクリックする(2)(3)。
このフリーソフトは提供元のウェブサイトからダウンロードできる(図21)。個人・ホームオフィス向けとして「Free」と「Home」の2つのエディションがあり、前者は無料、後者は有料だ。無料版でも今回使うシステムバックアップ機能を利用できる。ソフトの初回起動時にライセンスを尋ねられるが、これを閉じれば無料版として起動する(図22)。
図21、文字が隠れて見にくいが、「EaseUS Todo Backup Free」の「ダウンロード」を選ぶ(1)。次の画面でメールアドレスを入力し、無料版の「ダウンロード」を選ぶ(2)。
Θ 初回起動時のライセンスはキャンセルでOK。
図22、初回起動時にライセンスを問われるが、今回の用途であれば無料版で作業できるため、右上の「×」ボタンをクリックしてキャンセルする。
ソフトが起動したら「バックアップを作成」から「システム」を選ぶ(図23)。パソコンにDドライブがある場合は、保存先は自動でDドライブとなる。もし、保存先がDドライブにならない場合は設定を変更する(図24、図25)。設定が完了したら、バックアップを作成する(図26)。
Θ Cドライブとシステム領域を丸ごとバックアップ
図23 最初の画面で「バックアップを作成」を選ぶ(1)。次に「バックアップ内容の選択」を開き(2)、「システム」を選択する(3)。
Θ バックアップの保存先を変更する場合は?
図24、Dドライブを作成して10をインストールしている場合、バックアップの保存先は自動でDドライブになる。外付けHDDなどに保存する場合には、ディスクのアイコンをクリックする。
図25、ストレージの選択画面では「ローカルドライブ」を選択(1)。ディスクツリーが表示されるので、保存先のフォルダーを選ぶ(2)。
Θ システム部分のバックアップを作成。
図26、保存内容と保存先を設定して確認したら、「今すぐバックアップ」を選びOSとシステム領域をバックアップする。バックアップには相当の時間がかかる。バックアップ完了後の操作を選んだうえで、就寝前に作業するのがお勧め。
バックアップした10を書き戻す際は、再びソフトを起動してバックアップしたファイルを選ぶ(図27)。システムバックアップ機能で作成したデータの場合、システム領域とCドライブのみ書き戻す。書き戻した後、パソコンを再起動すれば、必要最低限の環境を構築した直後の状態に戻る(図28)。
Θ 初期状態への書き戻しも簡単
図27、10を書き戻すには、ソフトを起動し「参照して復元」を開く(1)。「ローカルのドライブ/LAN」を選択し(2)、図23~図26で作成したバックアップファイルを選択する(3)(4)。
図28、バックアップ元のデータを選択する画面になるので「ハードディスク0」にチェックを入れ(1)、「次へ」で進める(2)。復元先も同様にチェックを入れて進める(3)(4)。SSDの場合は「高度なオプション」で「SSDに最適化」をオンにする。確認画面が表示されたら「実行」を選ぶ(5)