〇 データ通信機能を搭載していないノートPCを出先でインターネットにつなぐとき、スマートフォンのテザリング機能かモバイルルーターを使うケースが多いはずだ。
テザリングは多くのスマートフォンで利用可能だが、モバイルルーターには根強いニーズがある。スマートフォンのバッテリーを消費せずに運用できるメリットがあるからだ。展示会などで長時間通信するために会社で用意しているケースもあるだろう。
モバイルルーターには大きく2つのタイプがあるが、その中で僕は「ドングルタイプ」をお薦めしたい。今回は、ドングルタイプのモバイルルーターの特徴と、僕がこのタイプをお薦めする理由を説明していく。
まず2つのタイプについて少し触れておこう。モバイルルーターと聞いて、思い浮かべる人がいちばん多いのはバッテリーを内蔵したタイプだろう。重量や画面の有無などの違いはあるが片手で持てる重さとサイズで、自宅やオフィスにいるときに充電して持ち出し、どこでもインターネットにつなげられるというものだ。
そしてもう1つが。ここで取り上げるドングルタイプだ。製品数はバッテリー内蔵タイプと比べると明らかに少ないが、メリットも少ないというわけではなく、僕はむしろ多いと思っている。
先祖返りしたように見えるが別物。
ドングルタイプのモバイルルーターは、いま使われている機器に例えると、USB接続のWi-Fiクライアント(子機)のような形をしていると考えればよい。
だが役割も含めていえば、いちばん近いのはSIMを挿して使うUSBモデムだ。この手のUSBモデムは最近あまり見かけなくなったが、昔USBモデムを使ったことがあって「先祖返りしたようなものか」と思った人もいるかもしれない。だが両者には明確な違いがある。USBモデムはPCの周辺機器でありPCに挿さないと使えない。だがドングルタイプのモバイルルーターは、単体でルーターとして機能するのだ。
今回紹介するのはピクセラのLTE対応USBドングル「PIX-MT110」である。約42g(公表値)と軽く、サイズも持ち歩いて邪魔になるようなものではない。ただしバッテリーは内蔵していない。
本体にはUSB Type-A端子がついていて、コネクター部分は折り畳める。持ち歩き時むき出しにならず、PCに挿し込んで角度を調整して利用できる仕組みだ。
使っていて手が当たって邪魔になるようなら、水平に挿せばよい。もしくは付属のケーブルを使って、外付けのSSDのようなスタイルで使うことも可能だ。面ファスナーでPCの天板に取り付ける使い方もできる。ノートPCがUSB Type-Cポートしか備えていなければ、変換アダプターを使えばよい。
SIMをセットして簡単な設定をするだけ。
PIX-MT110は、キャップを開けるとnanoSIMをセットできる仕組みだ。今回はインターネットイニシアティブ(IIJ)の「IIJmio」のSIMを利用した。
この機種はメジャーなMVNOに対応しているが、5Gは利用できずそこは残念だ。僕は仕事でバリバリ使いたいので、5G対応モデルも望みたい。
設定は簡単で、PCに挿した状態でWebブラウザーから指定されたIPアドレスを打ち込み、設定ツールでAPN情報を入力する。MVNOのSIMを使ったことがあれば、それと同じだと考えていい。
ノートPCに挿したときはUSBモデム、ほかはモバイルルーター。
モバイルルーターは単体で通信をしており、PCやタブレットなどとWi-Fiでつながる機器だ。PIX-MT110も基本はそうなのだが、先ほど説明したノートPCのUSBポートに挿す使い方のときはPC直結となり、役割はUSBモデムと同じになる。PC直結の使い方は、Wi-Fiに比べると通信が安定するというメリットがある半面、PCに挿しておかなければいけないというデメリットもある。
PCのUSBポートに挿す以外の使い方をする場合は、単体のモバイルルーターになる。この場合は給電が必要で、モバイルバッテリーやUSB充電器のUSB Type-Aポートに挿して使う。これでノートPCをはじめとするさまざまな機器をWi-Fiでつなぎインターネットを利用できるわけだ。大容量のモバイルバッテリーと組み合わせれば長時間使えるし、USB充電器と組み合わせればバッテリー切れの心配もない。
なおPCに挿して利用していても、スマートフォンやタブレットからはWi-Fiで接続できる。これらの端末からは、一般的なモバイルルーターと同様に使えるのだ。
ドングルタイプのモバイルルーターの良さは、使い方を選べるところだろう。PCからはUSBモデムとして使えるし、単体で使う場合は給電手段をPCのUSBポート・USB充電器・モバイルバッテリーから選べる。うまく使うとメリットはかなりあるわけだ。