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白川紺子著『九重家献立暦』あらすじ感想。“捨てられた人たち”の再生物語

白川紺子著『九重家献立暦』あらすじ・ネタバレ感想。
旧家で同居することになった“捨てられた人たち”の家族再生の物語。
小学校の卒業式に母親が駆け落ちしてしまった茜は、何かと煩わしい地元を離れ大学生活を送っていたが就活に失敗してしまう。
仕方なく実家に戻ると、なんと母の駆け落ち相手の息子と同居することに!?


『九重家献立暦』

著者:白川紺子
カバーイラスト:慧子
カバーデザイン:坂野公一(welle design)
発行:株式会社講談社(講談社タイガ)
著者:白川紺子 『九重家献立暦』 tataraworks

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『九重家献立暦』あらすじ・ネタバレ感想


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『九重家献立暦』登場人物 

●九重 茜(ここのえ・あかね)
 小学校の卒業式に母親が駆け落ち
 伯父の頼みをきく代わりに就職先を紹介してもらう

●十日市/仁木 一(とおかいち/にき・はじめ)
 茜の小学校時代の同級生
 父親が茜の母と駆け落ち
 九重家の年中行事を調べる名目で居候

●九重千代子(ここのえ・ちよこ)
 兄が家を出た為、九重家の跡継ぎになる
 兄の子供・景子を養子に迎える
 茜を厳しく育てた大叔母

●九重喜夫(ここのえ・よしお)
 景子の兄で茜にとっては伯父
 茜の就職先を紹介
 茜に千代子の遺言状など探らせる

●五味幸三(ごみ・こうぞう)
 茜の勤務先の初老で眼鏡の上司

●百合丘むつ美(ゆりおか・むつみ)
 茜の勤務先の先輩社員
 実は茜の母とは高校の同級生

●九重景子(ここのえ・けいこ)
 茜の駆け落ちした母

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『九重家献立暦』のあらすじ 

小学校の卒業式の日、母親が同級生の父親と駆け落ちしてしまった。
以来、九重茜は祖母のような存在の大叔母・九重千代子と旧家の大きな屋敷に二人で暮らし厳しくしつけられる。
母親ゆずりの容姿が災いし、中学校の教師はストーカーと化し、高校では全く蚊帳の外であったにもかかわらず痴話喧嘩に巻き込まれ周囲から白い目で見られることになる。
茜は、家からも地元からも逃げだし大学生活を送っていたが、やはり容姿が災いし就活に失敗してしまう。


大学の卒業を前に、母の実兄で茜にとっては伯父の九重喜夫から電話がかかる。
喜夫は、就職先を紹介するので地元に戻り九重家に住んで千代子が遺言状に何を書いているかを探れと言う。
伯父は、千代子が最近、若い男を家に入れていると言う。
気乗りはしなかったが就職先を紹介してもらえることは有り難く、茜は伯父からのミッションを果たすべく九重家に戻る。


伯父の話の通り、家には若い男がいた。
十日市と名乗る男は初対面にもかかわらず「茜ちゃん」呼ばわりをする。
不快感をあらわにする茜に十日市は、自分たちは小学校時代の同級生で、自分の旧姓は「仁木」であると告げる。
仁木…それは茜の母と駆け落ちした同級生の父親の姓だ。


仁木は、大学で民俗学のゼミに入っており卒業論文の研究の為、旧家の九重家の年中行事を調べたいと言う。
驚いたことに一週間前から九重家に引っ越して来ていた。
いくら卒論の為とは言え、自分の父親と駆け落ちした女の実家に住むなど考えられない。
訝しむ茜だったが……。

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『九重家献立暦』ネタバレ感想 

茜は母親ゆずりの容姿でかなりの美人のようだが、彼女にとってはその顔こそがコンプレックスでしかない。
ストーカーとなった中学の教師も、茜を好きになったことを理由に彼女と別れようとした男子生徒も、就活生の弱みにつけ込もうとするOBも茜にとっては気持ち悪いばかり。
だが、母親のやらかしで世間から蔑まれ、顔が綺麗なばかりに同性からはやっかまれる茜のような女性は、自分に落度がなくても味方をしてくれる人がいない。
それどころか悪者扱いされてしまう。


モテる女性に対して酷い言葉を吐いたりする女性って意味不明だなぁとちょいちょい日常生活で疑問に思う。
美人に生まれてもセクハラや痴漢の被害に遭うことは嬉しいことじゃない。
それなのに同性に相談すると、8割真面目に受け取ってもらえず、モテる自慢をしているかのような反応をされる。
あれって根本にあるのは妬みだと思う。
だから、相手の話に寄り添えないのだろう。


寄ってくるのが超イケメンとか超お金持ちとかなら妬まれるのも仕方ないと思う。
でも、ストーカーとかセクハラ野郎とかでも妬むのって変じゃない?
あんたはそんなんでも羨ましいと思うのかと言いたい。


そんなこんなでろくに友達もできず、大学では友達だと思っていたのにあっさり裏切られてしまった茜は、人間関係に疲れて就活も頑張れなくなってしまう。
それで伯父の提案をのんで実家に戻ってみれば、おそらくこの世で一番会いたくない人の1人である母の駆け落ち相手の息子と同居することになる。


千代子は、養子の景子に2度裏切られた。
茜も母親に捨てられ、仁木も父親に捨てられた為、九重家に住む3人は皆、捨てられた過去をいつまでも引きずっている人達だ。
そして、茜が伯父からのミッションを遂行しようとしているのを隠しているように、千代子も仁木も何かを隠している。
仁木からしたら憎い女の実家。
何か企みがなかったら住むわけない。


ある時、それぞれの思惑が露見してしまう。
それをきっかけに気持ちがぶつかり合う。
隠したままでいるより腹の中にため込んでいる感情をぶちまける方が良い。
それを受けとめられなかったら一緒に住むことはできず解散になるけれど。


自分が幸せじゃないのは全て母親・景子のせいだと思っていた茜にとって、3人で感情をぶつけ合ったことは良かったと思う。
自分に自信が持てず上っ面の人間関係すらまともに築けない茜が、関係が壊れることを覚悟して言いたいことを言えるようになったことは大きな成長だ。


若干人間関係がどろっとしていて重たいが、年中行事に関して面白く読めた。
作法とか料理とか、私だって知らないもん。
昔からの行事をちゃんとこなしているおうちって何となく格が違うように思う。
細かくて面倒くさいけどそれらの行事には幸せを家に呼び込む為の意味がある。
そういうのを意識できる余裕や丁寧な暮らしぶりが素敵だなと思う。

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ご訪問ありがとうございました(人´∀`*)

コメント一覧

tataraworks-lynx50
@29qlove ラムネちゃんとキーちゃんのママん様、コメントありがとうございます。
遊山箱、Amazonで探したらべらぼうに高かった~。
そして地味な画像しかありませんでした(笑´∀`)
カバーイラストに合わせて桜模様とか、可愛い箱を探していたのですが。

そうそう、女の人って素直に褒めないですよね。
チクりと嫌味を言うような言い回しが多い気がします。
男女平等なんて言いますけど、今の風潮は人間関係がややこしくなるだけで今まで以上に生きづらくなる気がします。
嫌味でも無茶苦茶でも声の大きな人が有利になりそうで、正しくあることは難しいと言いますか……。
だから私は白川紺子さんの品が良いおうちの話が好きなんですよね。
フィクションの世界くらいは上品さを楽しんでも良かろうと思って。
29qlove
沢山画像が出てきた遊山箱、実は徳島県の文化なんだそうで、徳島県では昔の子供はみんな持っていたんだとか。おやつやおにぎり入れてもらって友達と遊びに行った、なんてお話をよく聞きました。そして、今はその遊山箱を作ってみよう!みたいな工房やワークショップがあったりして、我が子達も作ったことがあります。(^^)
遊山箱、良い懐かしい日本の風習ですよね。

確かに『女性の敵は女性』と言われるのはそういった妬みの生き物だからなんでしょうね。人のいい所を素直に褒められない、いいなぁと思ったことも女性は『いいなぁ!』って直ぐに言えない人が多いですね。自分が特別扱いを受けたいとみんなが思ってるから???同じように扱って貰えないと機嫌が悪くなるのは女性に多い気がします。
(;´Д`)

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