喜多喜久の『ビギナーズ・ドラッグ』のあらすじと感想。
文庫化にあたり『ビギナーズ・ラボ』に改題されている。
元製薬会社の研究員ならではの視点で描かれた創薬小説。
読む前は危険ドラッグ関連のミステリーかと思っていたが、推理もミステリーもなしの「創薬&ときどき恋」の物語だった。
処方してもらえる薬があるって実は凄い奇跡なんだなぁと思った。
『ビギナーズ・ドラッグ』(『ビギナーズ・ラボ』)
著者:喜多喜久
単行本は講談社より2017年に刊行
文庫化にあたり『ビギナーズ・ラボ』に改題
ビギナーズ・ドラッグあらすじ
水田恵輔は旭日製薬の総務部勤務。
真面目でロボット的な人間だが、ある日、祖父の見舞いに施設を訪れたことで人生が変わる。
不治の病ラルフ病を患っていた滝宮千夏へ恋心を抱いたことから、薬がないなら作れば良いと社内のテーマ募集に応募。
しかし、研究員でもない創薬の素人の恵輔に対し企画潰しが始まる。
同期の研究員・綾川理沙の協力を得て、何とか臨床まで持ち込もうと悪戦苦闘する恵輔だったが……。
ダメ部下がまるっと変わる
社内で評判が悪い研究員の春日と元山をチームメンバーに加えることになったが、春日は大事なパートナーと会う為の出張も嘘をついて1人で帰ってしまう始末。
でも恵輔はあきらめない。
2人の良い所だけを見て褒める!
「全面的に2人の技術を信頼して信用している」スタンスが、面倒くさい2人の研究員の心を掴むのさ。
ダメ研究員だった春日は会社での研究が面白くて、家でも変わったらしい。
読みながら、恵輔みたいな人が上司だったら仕事が楽しめそうだなと思った。
一日の大半を会社で過ごすんだもん。
会社がつまらないなら、家でも暗いわな。
『ビギナーズ・ドラッグ』を読んで、高校のクラスメートに中学時代有名だった凄いヤンキーがいたことを思い出した。
ヤンキーだけどが絵がうまかったんだよね。
高校でちょっと真面目に油絵を描いたら、県展で大賞受賞。
新聞社のインタビューに答えたり、周囲から褒められているうちに、まるっと人間が変わりました。
真面目な良い子になっちゃった(笑´∀`)
パチンコ屋通いをやめて、学校で授業を受けるようになって、今はデザイン会社の社長ですよ。
人間、褒められることが大事なんだね。
創薬とは運であり奇跡であり
製薬会社も会社である以上、利益やコストを無視できない。
まずは、会社側をその点で説得しなければ研究に着手できない。
ただの事務員だった恵輔が、上を説得する為に必死に繰り出す言葉の数々。
恵輔、頑張れ!と本を持つ手に思わず力が入る。
でも、相手はプロ。なかなか突破できない。
そしてついうっかり、ダメなら転職してベンチャーでやる発言をしてしまった。
おいおい、プレゼンで転職する言うたらアカンやろ(笑´∀`)
たとえ研究ができても、成果が出なければあっさり打ち切られる。
研究員の方々は寝る間も惜しんで研究しているのだけどね。
期限内に臨床まで持ち込める物質を見つけることって奇跡なんだな、と思った。
今ある薬も当たり前に存在しているわけじゃないんだね~。
運良く見つけられて勝ち残って世の中に出てきてくれたわけだ。
トローチ1粒でも感謝だよ!
●文庫
日々研究にいそしんでおられる研究員の方々に感謝です。
ご訪問ありがとうございましたm(_ _)m
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