goo blog サービス終了のお知らせ 

ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

1秒先の彼

2024年08月22日 | ネタバレなし批評篇


チェン・ユーシュン監督の台湾オリジナルを拝見したことがあるのだが、ジャパンリメイクするにあたりキャラクターの男女入れ替え案は以前から持ち上がっていたらしく、ワンテンポ早い主人公男子を誰に演じさせるかで難航、企画がなかなか前進しなかったという。郵便局員の主人公役がはれて岡田将生に決まった後は、脚本担当のクドカンも具体的なイメージがわいてサクサク筆がすすんだのだとか。要するに、オリジナルの完成度がもともと高かった証拠といえるだろう。

チェン監督曰く、ワンテンポ遅い彼氏がフリーズしたワンテンポ早い彼女を連れていく場所決めに苦労したと語っていたが、SFチックなファンタジーストーリーに相応しい場所として、“天橋立”を選んだ山下監督ならびにクドカンの選球眼はなかなかのもの。この“天橋立”には、“神々が美しい女が住む地上と天を行き来するための橋の残骸”とのとてもロマンチックな伝承があるからだ。因みにオリジナルでは台湾の“七夕バレンタインデー”が“その日”に設定されていて、彼氏と彼女を牽牛と織姫になぞらえたストーリーになっている。

本作の(清原果耶演じる)ワンテンポ遅いレイカと、ワンテンポ早いはじめの父ちゃん(加藤雅也)が実は死んでいたんじゃないかと私は思っていて、その意味で日本の幽霊が最も多く住んでいそうな“京都”を舞台にしたのでは、と勝手に勘ぐっているのである。つまり、本作のラストシーンに登場するレイカはトラックに牽かれてすでに死んでいたのだが、ワンテンポ遅いご褒美として“天橋立”を渡ってはじめに会いに来たのではないか、ともとれるのである。

オリジナルからの変更点として、華奢な清原果耶が長身の岡田将生を一人で担ぎ動かすのは、どう考えても無理があるとふんで、不思議キャラ役者として定評のある荒川良々にお声がかかったのだとか。はじめの乗ったバスを運転していた良々が、時間がフリーズしてしまったことが信じられず、エキストラの通行人(多分知り合い)の頬を二度見ならぬ二度叩きするアドリブシーンは必見!清原果耶だけでは間延びしそうな隙間タイムをうまく埋めているのである。

『ソウルメイト』の韓国リメイク版なんぞは演出が甘々で見るに耐えなかったのだが、それに比べると本ジャパンリメイク作品は結末がわかっていたとしても飽きない工夫が盛り沢山。山下敦弘監督ならびにクドカンが仕込んだジャパンオリジナルの脚色が、茶番化を未然に防いでいるのである。不人気のカマラ・ハリスを民主党大会で「イエス・シー・キャン!」と讃えた白髪混じりのバラク・オバマだが、その茶番劇がまったくもって白けきっていただけになおさらそう感じたのかもしれない。

1秒先の彼
監督 山下敦弘(2023年)
オススメ度[]

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 3つの鍵 | トップ | 柳川 »
最新の画像もっと見る