主役のトランスジェンダー俳優カルラ・ソフィア・ガスコンがその昔ツイッターでかました差別発言が明るみに出たせいで、オスカー最優秀作品賞をとりそこなったと言われている。イスラム教徒→「治療が必要な憎悪の根源」、警官に首を圧迫され死亡した黒人男性→「麻薬中毒者の詐欺師」とツイートしたのだとか。差別されていたものが差別する側に回るととんでもないレイシストに変わることはよく知られているが、ガスコンもまたその . . . 本文を読む
映画公開当時、ジャン・ギャバン は50歳、ジャンヌ・モローは 26歳、リノ・バンチュラ は35歳である。現代の平均寿命に当てはめれば、50歳なんてまだまだ男盛りで老け込むには早いような気がするのだが、このギャバンそろそろ現役引退を考えている大物ギャング=マックスを演じている。空港でせしめた“金の延べ棒”×8本を換金して、悠々自適の老後を送ろうと準備をしていたマックスだが、相棒のリトン( . . . 本文を読む
「朽果てていくこの世界で、どう狂気に抗えと?」冒頭賢者が観客に問う意味深な言葉。ラテン語で“狂気”を意味するディメンテス(クリス・ヘムズワース)に母親を殺されたフュリオサ(アニャ・テイラー・ジョイ)の15年にわたる復讐譚である。ヒロインの名前通り、狂気に対して“怒り”を持って抗えば、その者もやがて狂気にのみ込まれる。ニーチェでは . . . 本文を読む
韓国俳優の自殺が続いている。ついこの間麻薬常習を疑われたイ・ソンギュが自殺したばかりだというのに、今度は天才子役とうたわれたキム・セロン(24)だ。酒酔運転による事故で発生した多額の損害賠償を苦にした自殺と言われている。この度国連親善大使に就任した日本の元天才子役芦田愛菜(20)とは対照的な、韓国芸能界の闇を感じずにはおれない痛ましい事件である。実は本作にも、父親(ソル・ギョング . . . 本文を読む
米農家との兼業で映画を撮り続けてきた安田淳一監督の執念が実ったのか、インディーズながら全国展開へ、ほんでまさかの超ロングランを記録。おまけに日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた2024年の大ヒットムービーどす。映画を撮り上げた時は、銀行預金残高が7000円やったちゅうさかい驚きや。過去、私財を作品に突っ込んでそのままま消えていった監督がぎょうさんおいではった中で、この安田監督まだ運がええほうやろう . . . 本文を読む
これまでにも、自己矛盾の塊のようなヒロインをずっと描き続けてきた鬼才ブリュノ・デュモン。今作では、女優として油ののりきったレア・セドゥにTV局の人気キャスターを演じさせている。しかし、本作を普通の映画だと思って観ると手痛いしっぺ返しを食らう羽目になる。哲学畑の人が映画を撮ると、ゴダールやテレンス・マリックを引き合いに出すまでもなく、限りなくひとりよがりな映画に陥ってしまうことが多いようだ。それが“ . . . 本文を読む
こんなことを書くと「またかよ」と叱られそうなのだが、2024年に公開された○○賞狙いの映画の多くが、いかにトランプvsハリスのアメリカ大統領選挙に注目していたかがよくわかる。くしくも現在病状悪化で危篤状態が続いている、バリバリのグローバリスト=フランシスコ現ローマ教皇をモデルにしているようにも思えるが、本作は間違いなく“コンクラーベ”の姿を借りた、(マスゴミがなぜか極右と形容する)保守とグローバリ . . . 本文を読む
なんだこりゃ。わずか12分たらずの短編ながら、ヨルゴス・ランティモスがそこに何かしらのメッセージを仕込んだことは明らかだ。しかしこのギリシャ人監督のメッセージは実に分かりにくい。おそらく過去作を探したところで似たような作品が一つとして見当たらない、“オリジナル”に拘った監督さんだからだろう。『聖なる鹿殺し』(2017)ではEU批判を、『女王陛下のお気に入り』ᦀ . . . 本文を読む
ハリウッドにとうとう下ネタコメディが帰ってきた。2000年前後に沢山作られたロマコメは結構際どい下ネタ満載で、それはそれはお下劣で江頭2:50がかわいく見えるほど。それがどうだろう、オバマ“リベラル”大統領の登場によりこの手の映画はすっかり姿を消し、代わりにその座についたのは“LGBTQ”という今まで誰も見向きもしなかったキワモノジャンル。あのデップーとてその波には逆らえず、ノンケなのかゲ . . . 本文を読む
TVドラマ用に向田邦子が書き下ろしたシナリオを一本の映画にまとめたせいか、はしょり感は否めない。今までピンシャンしていた男が突然倒れたり復活したり、夫の浮気を心配する老妻がいきなり倒れて帰らぬ人になったり、恋愛とは無縁だった女が突如としてコクられたり、浮気相手の女が偶然結婚することになってすべてが丸く収まったり...ご都合主義といえばそれまでだが、1979年から80年の飛ぶ鳥を落とす勢いだった昭和 . . . 本文を読む
韓国フェミニズム・ブームの先魁ともいえる同名ベストセラー小説を映画化、未だに家父長制が根強い韓国においては異例の大ヒットになったのだとか。オバマ-バイデン時代にリベラルが必死になって拡散したフェミニズム・ブームも、トランプが大統領に返り咲いてからはすっかり尻つぼみ、莫大な広告費をかけたフェミニズム・ムービー『バービー』も日本では大ゴケで、あっという間にアマプラ配信コンテンツになり下がったことも記憶 . . . 本文を読む
ジェイソン・ステイサム演じるアダム・グレイが、なぜ養蜂家であらねばならなかったのか?別に衣服の“汚れ”を落とすクリーニング屋とか、家庭から出た“ゴミ”を回収する業者でも何でもよかったと思うのである。ChatGPTに聞いてみたところ「アメリカ社会の矛盾や問題を「ハチ社会」になぞらえて解決する手段として、養蜂家である主人公が描かれています。ビーキーパーが自分たちの代わりに国家という巣箱を . . . 本文を読む
ユダヤ人を主人公にした『ブルータリスト』や『名もなき者』、そして多様性を前面に押し出した『エミリア・ペレス』をさし置いて、本作『アノーラ』がアカデミー賞主要5部門を独占した。リベラルの巣窟といわれるアカデミー会員ならびにハリウッド内部にも、トランプ大統領就任によってかなりの変化が生じたという証だろう。共和党の🟥と民主党の🟦をモチーフに、ポリティカルなメッセージをスト . . . 本文を読む
それまで毎晩2本の高級ワインボトルを空けていたデンゼル・ワシントンは、還暦を迎えてキッパリと酒を断ったらしい。大金持ちとなり低きに流れる映画業界人が多い中で、この決断は立派である。本作監督ホン・サンスはかなりの大酒飲みとしても有名だ。どうなのだろう、最近は“死”をテーマにした作品を多く撮っているホン・サンスだけに、もしかしたら体調があまりよろしくないのかも。そんなホン・サンスの酒に対する自戒を込め . . . 本文を読む
タイトルからして仏教の禅に言及した映画だと思いながら観はじめたのだが、まさかその境地=悟り=円相をまんまテーマにもってくるとは、荻上直子なんたる大胆不敵。仏教の開祖ゴータマ・シッダールタでさえ7年間の苦行と2ヵ月間の断食を経た後たどり着いた悟りの境地をこうも簡単に映像化されてしまうと、個人的には嫉妬心さえ覚えるのである。ジム・ジャームッシュ監督『パターソン』にも、主人公の職業“循環バス運転手”や部 . . . 本文を読む