黒沢清はいつまで映画を撮り続けるのだろうか。かつての教え子であった濱口竜介たちのお情けでベルリン国際映画祭銀熊賞(2020)に輝いたものの、本作を含め近年撮った映画はほとんど誰がどうみても凡作の域を脱していない。その濱口とのトークイベントの中で、「撮影現場で撮れてしまったものは、一回限りの非常に貴重なものなので、可能な限り大切にしたい、という考え方がどうも染み付いているんです。一回限りのフィルムに . . . 本文を読む
生涯独身を通した文豪ヘンリー・ジェイムスがゲイであったかどうかは、明らかにされていない。この映画もはじめは『ドライブ-アウェイ・ダイクス(レズビアンの意)』というヘンリー・ジェイムスの(おそらく短編)小説と同名タイトルが予定されていたという。しかし、将来大統領になるかもしれない有力共和党代議士の勃起チ◯コを型どったディルドに欲情するレズビアン . . . 本文を読む
新しく建ったマンションの住人の訴えで、段ボールの集積場所が目茶苦茶遠くなったことがある私にとって、フランスからスペインの田舎町にわざわざ引っ越してきて、地元住民にとっては棚からぼた餅的な風力発電誘致に反対するアントワーヌ(ドゥニ・メノーシェ)にはむしろ反感を覚えるのである。余所者のクセにコミュニティーのしきたりにクビをつっ込むんじゃねえと、暴力にうったえる野獣兄弟の気持 . . . 本文を読む
フラン・クランツという新人監督さんが撮った本作の英語原題は“MASS”。英語で“ミサ”を意味するらしい。プロテスタントとカソリックのちょうど中間に位置する“聖公会”教会?の一室で、これからなにやら重た~い雰囲気のミーティングが行われるらしいのだが、表れた2組の夫婦がなんのために呼び出されたのか初めは観客にわからない演出がとられている。トランプ政権時代、アメリカ内に広まっ . . . 本文を読む
若いBFとのSEXでできちゃった赤ん坊を、「産みたくない」といって簡単に中絶薬でおろしてしまう主人公ジョーンズ。それ以降なぜか生理がとまらなくなってしまうジョーンズは、子守をしている少女フランシス(黒人)の家のキッチンチェアや、男との行為の途中にベッドを血だらけにしてしまう。このメンスが何かしらジョーンズの後ろめたさを表現しているのかと思いきや、どうもそれがハッキリしな . . . 本文を読む
他人が書いた小説を原案にした初めての試みも、ワーナーブラザースというハリウッドメジャーが配給元になったことも、西川美和にとっては全てが裏目に出てしまった失敗作であろう。作家佐木隆三の下に「自分をモデルに小説を書いてくれ」と延べ23年間を刑務所で暮らした男が売り込みにやって来た事が、小説を書く動機になったという。本来ならば、小説家→TVディレクターに置き換えられた津乃田(仲野太賀)が語り部をつとめる . . . 本文を読む
ヨボヨボである。白人は老け込むのが早いと言われているけれど、往年のダーティ・ハリーの白髪も半分抜け落ち、身体中シワとシミだらけ、腰はグニャリと曲がっていて、歩くのもやっとこといった有り様だ。元ロデオ・スターのマイクを取り巻くメヒコの皆さんも、イーストウッドの超スローな動きと台詞回しに合わせるように、普段よりワン・テンポいなツー・テンポ位おさえ気味の演技を強いられているのが、傍目から観ても明らかなの . . . 本文を読む
科学的考証を全く無視したイベントが次から次へと発生するため、観ている人の突っ込む意志が途中で萎えてしまう1本だ。入院中でヨボヨボの元大統領(ビル・プルマン)に、人種の壁を越えて世界がワンチームになれたことは人類の誇りだとアジられ、思わずその気になってしまってはいけない。それじゃあ、バイデ○に騙されて日本国民への大増税を繰り返すバラマキ眼鏡と一緒になってしまうぞ。本作は中国資本の支援を受けて作られた . . . 本文を読む
フランスではすでに“漫画”が9番目の芸術として認知されているらしく、本作の原作漫画もルーブル美術館から直々荒木飛呂彦に依頼があった読み切りモノらしい。漫画が芸術?なんて(わたしを含め)バカにしている方がほとんどの日本ではあるが、考えてみれば、今や総合芸術として認識されている映画だって出始めの頃は似非芸術扱いされていたわけで、日本でもやがて漫画が芸術と呼ばれ . . . 本文を読む
このタイ・ウェストという監督、多分伏線をうまく引けない人なのであろう。クリストファー・ノーランの初期作品も伏線下手がとても目についたのだか、ノーランとウェストではそもそも格が違うのである。前作の60年前を描いたということで、『X』への伏線をビシバシかましてるのかと思いきや、次に繋がるのは🐊とΨだけという捻りのなさ。せめて時系列をいじくるぐらいの工夫が必要だったと思うのだかそれも . . . 本文を読む
アンリ=ピエール・ロシェというフランス人美術収集家が書いた原作小説は、はっきりいってアマチュアレベルのソープオペラに過ぎない。同作家原作のジャンヌ・モロー主演『突然炎のごとく』が、女性解放運動で盛りあがっていた英米で大ヒット。トリュフォー自身はそんな前作の社会現象的風評に批判的だったらしいが、同作家による小説を映画化したということは、もしかしたら2匹目のドジョウを狙っていたのかもしれ . . . 本文を読む
突如機能停止状態に陥ったAIに、現在の家族より以前のメモリーが圧縮された状態で残っていたとしたら、それは人間の“前世”と同じことになるのだろうか。そのAIは世にいう“輪廻転生”を繰り返していたということになるのだろうか。韓国系アメリカ人コゴナダの新作は、ある白人作家が書いたSF短編小説を脚色し、東洋の精神哲学的命題に触れるところまで膨らませている。しかし、本作はさくっと見終わる上映時間わずか96分 . . . 本文を読む
中川龍太郎の身内に自殺者がいるのかどうかはわからんが、この若き日本人監督間違いなく“自殺”を映画のテーマの一つに選んでいる。確かカイエ・ド・シネマの目にとまった次作『走れ絶望に追いつかれない速さで』も、自殺した友人の後を追おうとして死に切れなかった若者が希望を取り戻すお話だ。本作に関しては自殺者及び自殺未遂者がこれでもかと登場するため、倫理的に言ってこれってどうなの?という感想を持た . . . 本文を読む
本作の脚本家エフティミス・フィリップは、ヨルゴス・ランティモス監督『ロブスター』の脚本を共作した人らしい。若きギリシャ人鬼才監督の名前につられてつい見てしまったのだが、内容はイマイチ。『ロブスター』の映画冒頭に登場したおっかない女に射殺される🐴さんがどこでどうつながるのか、最後まで予想だにできなかった『ロブスター』に比べると、本作の結末は映画序盤ですでにバレバレだったのではないだろ . . . 本文を読む
胡錦濤元国家主席を議会場から強制排除、現在No.2の李克強ら共青団一派を中枢から追い出し、習近平一極集中をより強化なものにした今回の中国共産党人事を端からのぞくにつけ、中国ももう長くは続かないなぁという印象を改めて強くした。辛亥革命から第一次国共合作にいたる中国近代史を、時の権力者に嫁いだ宋家3姉妹の視点から描いた本作は、映画としての出来はかなりお粗末だが歴史の勉強にはちょうどいい。主人公は年の離 . . . 本文を読む