ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

雨の中の慾情

2025年02月09日 | ネタバレなし批評篇
つげ義春原作の短編漫画4作品をベースに創作されたラブストーリーだそうだ。学生時代つげ義春の漫画が一時流行った記憶があるのだが、サブカルにはまっていた友人から貸してもらった漫画を読んでも何が面白いのかサッパリ。要するに当時の私がガキすぎて、つげの魅力がわからなかったのである。現代のウォークカルチャーの枠に当てはめるとすべてNGになりそうな、エロ、エロ、エロのオンパレード。しかしながら、無機質な絵とコ . . . 本文を読む

フォールガイ

2025年02月08日 | ネタバレなし批評篇
デヴィッド・リーチという監督、前作『ブレッド・トレイン』といい本作といい、スタントマン=身代わりを強く意識したシナリオが特徴で、ブラピのスタントマンとしての経歴が上手く反映されたアクションコメディに仕上がっている。主人公のスタントマンコルト・シーバースを演じたゴスリングはともかく、映画の舞台がオーストラリアのシドニーとあって、相手役の女流監督ジョディにはマーゴット・ロビーあたりが適任だと思ったのだ . . . 本文を読む

シック・オブ・マイセルフ

2025年02月06日 | ネタバレなし批評篇
ノルウェーは現在バブル真っ只中。西欧最大の産油国で、国内総生産の14%、輸出の40%を石油ガス産業が占めている。労働人口の約17%が同産業に従事しているため、オランダ病との懸念があるものの、自然再生エネルギーへの投資は未だ盛んではないらしい。ロシアのウクライナ侵攻とイスラエルのガザ侵攻により高止まりしている石油価格に胡座をかいて、日本のバブル期同様ノルウェーの若者の頭はパンプキン状態、要するにスカ . . . 本文を読む

八犬伝

2025年02月01日 | ネタバレなし批評篇
CGアニメーター出身の曽利文彦監督が、映画化の企画を長年あたためていたという山田風太郎原作『八犬伝』。曲亭馬琴原作『南総里見八犬伝』=虚構と、馬琴&葛飾北斎の交流=現実を並列に描いた奇想天外な作品だ。調べてみるとあな意外、馬琴と北斎の間には実際交流があったようで、本八犬伝以外の読本には、北斎がかなりの量の挿し絵を馬琴に提供しているらしい。映画では『八犬伝』のストーリーを来訪した北斎につど聞 . . . 本文を読む

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

2025年01月30日 | ネタバレなし批評篇
トランプが大統領に就任するまでのフェミニズム&LGBTQ礼賛ムードとはまったく逆さまのマチズモ&女性蔑視形式で、“女性”を徹底的に醜く描いた吉田大八監督のデビュー作品である。女優になるための努力をしていないのにプライドだけは一人前の澄伽(佐藤江梨子)が、両親の事故死で里帰り。自分が女優になれないのは、血のつながった妹清深(佐津川愛美A . . . 本文を読む

ヒットマン

2025年01月27日 | ネタバレなし批評篇
大学で哲学を教えているゲイリー(グレン・パウエル)は冒頭「自分とは何か」という命題を生徒に考えさせる。その人の思考や役割が幼いころから構築されたものだとすれば、それは“自己”を演技していることに他ならないのではないか。リンクレイターは実在の偽装警察官をモデルにして、ゲイリーが成りすますヒットマン=ロン=〈イド〉と、虫一匹殺せない善良な哲学教授ゲイリー=〈超自我〉との橋渡 . . . 本文を読む

よこがお

2025年01月20日 | ネタバレなし批評篇
最近はすっかり肩の力が抜けて“怒り”もおさまったのか、深田晃司は問題作をコンスタントに世に送り出しているようだ。甥っ子の達雄がおこした女子高生連れ去り事件のせいでとんだとばっちりを受けた訪問看護師の市子(筒井真理子)が、女子高生の姉でニートである基子の彼氏(池松壮亮)を誘惑し復讐するといったお話だ。時系列通りにエピソードを並べると面白さが半減 . . . 本文を読む

すべての夜を思い出す

2025年01月17日 | ネタバレなし批評篇
また一人将来有望な新人映画監督が現れた。清原惟(36)。濱口竜介と同じ芸大大学院出身という芸術エリート、目ざとい海外メディアからもすでに注目されているようで、ベルリン国際映画祭などにもお呼ばれしているようだ。ゆるーいシスターフッドが特徴の作風は、ケリー・ライカートと比較される方も多いとか。同じく新人女流映画監督として注目を浴びている山中瑶子。その経験の少なさを危惧されて業界の映画ゴロにああだこうだ . . . 本文を読む

クレオの夏休み

2025年01月13日 | ネタバレなし批評篇
シンプル・イズ・ベスト。余計な装飾をそぎおとしたフランス映画らしい1本だ。ジョージア系フランス人のマリー・アマシュケリ監督を、実際6歳になるまで育ててくれたポルトガル人ナニー(乳母)がモデルになっているという。ずっと前にママを癌で亡くしたクレオは、いつも一緒にいてくれるナニーのグロリアが大大大好き。でも母親の急死でグロリアは故郷のカーボベルデに帰国しなければならなくなっ . . . 本文を読む

ゴッドランド

2025年01月12日 | ネタバレなし批評篇
デンマーク人の巨匠カール・テオ・ドライヤーを評して、その昔日本の大島渚監督がこんなことを述べていました。(キリスト教の)神と対峙する覚悟をもった映画監督である、と。敬虔なプロテスタントその中でも特に厳格なことで知られるルター派の教えを国教として定めているデンマークでは、ラース・フォン・トリアーをはじめとして反キリスト教的な映画を撮る映画監督が多いような気がします。デンマーク国教会からアイスランドに . . . 本文を読む

お母さんが一緒

2025年01月11日 | ネタバレなし批評篇
ワン・シチュエーションの会話劇は、ペヤンヌマキ原作の戯曲を映画化した作品だそうです。どうも会話の切れ間に(観客を意識した)演劇的なタメを感じると思ったら、そういうことだったらしいのです。9年ぶりにメガホンをにぎった橋口亮輔監督も、あえてその“間”を正さずに原作そのままの雰囲気で演出している気がするのです。“戯曲”が原作である点が、本作にとってとても重要な要素であることを . . . 本文を読む

オールドフォックス 11歳の選択

2025年01月04日 | ネタバレなし批評篇
クレジットを見るまではまったく気づかなかったのだが、優しくて誠実なお父さんの昔の恋人(回想シーンの衣装は“クーリンチェ少年殺人事件”へのオマージュだろうか)で、現在はヤクザの女房におさまっている金持奥様を、門脇麦が演じている。バブルにわいていた1989年の台湾が舞台のため当然中国系女優さんが演じているものとの先入観が勝手に働いたせいかもしれない。老けメイクもバッチリ決まっていて、雨中のわけありキス . . . 本文を読む

リトルハンプトンの怪文書

2025年01月02日 | ネタバレなし批評篇
一見すると、娘イーディスを永久に手元においておきたいおっかない父ちゃんや、無能のくせに序列をわきまえろとインド人女性警察官にパワハラを繰り返す警察署長たち男どもに、“穴をまくって”見せたフェミニズム映画であるが、私の意見はちと異なる。なぜなら、この映画欧米のリベラル系映画評論家の受けがあまりよろしくない、というよりも最悪だからである。アレックス・ガーランドの『MEN』でも、夫の愛を拒否ったあまり大 . . . 本文を読む

人間の境界

2024年12月31日 | ネタバレなし批評篇
2021年以降、プーチン支持を表明しているベラルーシ大統領ルカシェンコが、中東やアフガニスタンからの難民や移民数万人を集めて隣国ポーランドに送り込む一方、ポーランドは国境警備隊を組織してこれに対抗。いわゆる“ハイブリッド戦争”と呼ばれるもう一つの紛争が映画前半に描かれている。まるでおじゃまむしのようにバラ線で仕切った国境をいったりきたり、EUに行けばバラ色の未来が待っていると勘違いしている難民の皆 . . . 本文を読む

熊は、いない

2024年12月30日 | ネタバレなし批評篇
この度息子さんがめでたく監督デビューしたジャファル・パナヒ。血は濃しというべきか、ジャファルの直近作も息子さん同様“密出国”がテーマになっている。度重なる干ばつの影響ですっかり農業がダメになってしまった国境近くの廃れた村で、お隣トルコで撮影中の劇中劇(こちらも密出国ネタ)をその村から遠隔操作で指揮をとるパナヒ(本人)だったが、村のしきたりに触 . . . 本文を読む