「このガラス製のミツバチの巣箱では、蜂の動きが時計の歯車のようによく見える。巣の中で蜂たちの活動は、絶え間なく神秘的だ。乳母役の蜂は蜂児童房で狂ったように働き、他のはたらきばちは生きた梯子のようだ。女王蜂はらせん飛行、間断なく様々に動き回る。蜂の群れの報われる事のない過酷な努力、熱気で圧倒しそうな往来、房室を出れば眠りはない。幼虫を待つのは労働のみ。唯一の休息たる死もこの巣から遠く離れなければ得ら . . . 本文を読む
PTA初期の作品には“擬似父子”をテーマにしたお話が非常に多い。『ブギーナイツ』『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』『ザ・マスター』、そして長編デビューとなる本作も、ベガスで一文無しになったジョン(クリス・ライリー)に救いの手をさしのべる赤の他人シドニー(フィリップ・ベイカー・ホール)の物語である。大富豪から莫大な遺産の相続人に指名された男を主人 . . . 本文を読む
40年前に喧嘩して以来口をきかなかったアイスランドの羊飼い兄弟が、仲直りするまでを描いたヒューマンドラマと思いきや....劇中なぜか兄さんの方のフルチンショット(ボカシつき)がやたらと出てくるなと思っていたらなるへそ、ラストはヤッパリそうきましたかという、“じいさんずラブ”しかも近親相姦のおまけつきゲイムービーだったのです。(弟の)ホモフォビアをオチにもってきたコメディ . . . 本文を読む
『ホールド・オーヴァース』が久々のスマッシュヒットとなったアレクサンダー・ペイン。この人が撮った映画にハル・アシュビーの影響を認める人は多いが、2003年のゴールデングローブ賞を総ナメした本作も、保険会社を定年退職した男が妻に先立たれ、娘の結婚式会場へとキャンピングカーを一人走らせるロードムービーになっている。この映画を劇場で見たときは、ジャック・ニコルソンのいかにもという役作りが鼻について今一ピ . . . 本文を読む
最近の出演作を見ると、マストロヤンニレベルの“胡散臭さ”まで漂いはじめてきたハリウッドきっての演技派俳優マーク・ラファロが、男ができた奥さんに家を追ん出された元敏腕音楽プロデューサーを演じている。ミュージックビデオ出身のアイルランド人監督ジョン・カーニーも絶賛のその演技、自分が立ち上げたレーベル会社からもクビを言い渡され、一人娘にも相手にされずアルコールに溺れ、自殺しようとまで思い詰めていたどん底 . . . 本文を読む
アメリカン・ニューシネマを代表するハル・アシュビーの映画というよりも、俳優キャリアにおいてどん底をさ迷っていた頃のピーター・セラーズが起死回生一発逆転を狙った作品といえるのだろう。アメリカ大統領も動かすほどの大物財界人のセレブ豪邸という、ハル・アシュビーらしからぬ舞台設定もさることながら、セレブ夫人役シャーリー・マクレーンとの視姦&オナニープレイは、“ピンク・パンサー”譲りのお色気シーンを . . . 本文を読む
90年代経済成長著しい台北が舞台の青春群像劇だ。カップルとおぼしき男女が複数登場するのだが、誰が誰と付き合っているのか映画中盤になるまでなかなかわからない不思議な映画なのである。台湾ニューシネマを代表する映画監督エドワード・ヤンは『牯嶺街少年殺人事件』(未見)を撮った後、次に「(敬愛する)ウディ・アレンのような映画を撮るんだ」と周囲に公言して . . . 本文を読む
オルコットの『若草物語』、ベルイマンの『叫びとささやき』、子供の頃欠かさず見ていたNHK子供向けドラマ=ローラ・インガルス・ワイルダー原作『大草原の小さな家』なんかもすべて、チェーホフ四大戯曲の一つあげられる『三人姉妹』をベースにしているらしい。ブロードウェイをこよなく愛するNY在住の映画監督ウディ・アレンが、その古典戯曲を現代劇に置き換えたお洒落ーなラブ・コメディである。長女ハンナ( . . . 本文を読む
なぞのウィルス感染によって滅亡の危機に陥った世界を救う元国連職員(ブラピ)の活躍譚。なにせZ(ゾンビ)に噛まれてからわずか10数秒で感染Zに変身して生身の人間を襲いだす超強力ウィルスのため、コロナウィルスのようにワクチンを何回も打ってマスクをしていればとりあえず大丈夫....なんて悠長に構えていたらたちどころに感染Zに大変身してしまうのである . . . 本文を読む
撮影当時27、8歳ぐらいだったはずのデカプリオが、実年齢17歳の天才偽造小切手詐欺師を見事に演じている。最近は、マーロン・ブランドの顔真似まで映画の中で披露してくれているデカプリオ、流石の演技力は間抜けなFBI捜査官カール・ハンラティを演じているトム・ハンクスを完全に喰っている。犯人を追い詰めてはすんでのところで逃げられる様子はまさに鬼ごっこ。実話ベースのシナリオらしいのだが、スピルバーグの手によ . . . 本文を読む
過去に起きた悲しい出来事。そのトラウマからなかなか立ち直れない姉弟を優しい目で見つめた本作は、ケネス・ロナーガンのオスカー受賞作『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016)と同テーマと言っても良いだろう。日本人が大好きなハート・ウォーミングな人間ドラマなのだが、何故か劇場未公開、DVDスルーとなった残念な1本なのである。敬虔なクリスチャンで一見真面目そうに見えるシング . . . 本文を読む
強面の水兵が、護送中の未成年水兵に同情し、束の間の“自由”を体験させてあげるファンタジーは、ミロス・フォアマン監督『カッコーの巣の上で』(75)に間違いなく影響を与えている。両作品で同じようなキャラの主人公を演じているのがジャック・ニコルソンであることからしても明らかだろう。識者に言わせると、アレクサンダー・ペインの近作『ホールド・オーバーズ』もまた本作の系譜に属する作 . . . 本文を読む
プッチーニが自作オペラのゲストである貴族の皆さんの贖罪意識を擽るために改竄を加えたであろう、H.ミュルジェーによる原作小説を無論読んだことはない。が、自称ボヘミアン監督の異名をとるアキ・カウリスマキにとってそれは許されざる暴挙であったはずなのだ。もしそうでなければ、本作映画化のため構想に15年?!もの歳月をかける必要もなかったと思うのだ。パリが舞台でしかも全編フランス語の作品なのだが . . . 本文を読む
ホン・サンスの編集の巧さを堪能できる初期モノクロ作品。モチーフの反復は後の『次の朝は他人』等でもお馴染みだが、別に小難しいことを考えなくとも楽しめるラブコメディに仕上がっている。大まかにいうと“もしかしたら偶然?”、“宙ぶらりんのケーブルカー”、“もしかしたら意図的?”の3つに分かれており、“宙ぶらりん”を挟んで前半と後半、同じようなストーリーがチャプターだてで展開され . . . 本文を読む
ほとんどボカシが意味をなしていない性器、性器、性器のオンパレード。ポルノさながらの本番プレーや、SM、堕胎、レズにスカトロまで、1&2合わせて5時間半という長尺におさめたラース・フォン・トリアー、完全にイってます。『アンチクライスト』『メランコリア』に続く“鬱”三部作のトリをつとめる本作は、下世話なコメディなのかダークな悲劇なのか、いまいちとらえどころがない1本だ。基本的には、天に唾を吐き . . . 本文を読む