ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

フォールガイ

2025年02月08日 | ネタバレなし批評篇

デヴィッド・リーチという監督、前作『ブレッド・トレイン』といい本作といい、スタントマン=身代わりを強く意識したシナリオが特徴で、ブラピのスタントマンとしての経歴が上手く反映されたアクションコメディに仕上がっている。主人公のスタントマンコルト・シーバースを演じたゴスリングはともかく、映画の舞台がオーストラリアのシドニーとあって、相手役の女流監督ジョディにはマーゴット・ロビーあたりが適任だと思ったのだか、おそらくご懐妊で腹がはち切れそうになっていたマーゴットに代わり、やむを得ず英国訛りが抜けきれないエミリー・ブラントが代役でキャスティングされたのかもしれない。

しかし、本作で一番盛り上がったシーンは、ゴスリングのスタントダブルによるアクションではなく、ある陰謀に巻き込まれたコルトが👽️の着ぐるみをきてジョディにトレーラーハウスにこっそり会いに行く場面である。レイパーが襲いにきたと勘違いしたジョディが、意外や意外ジョン・ウィック並みの無双を繰り広げるのだ。何せ相手は元恋人、しかも殴られ役には慣れっこのコルトは、分厚い台本でチョーク攻撃されようが、ペンを🦵に突き立てられようが無抵抗。野太い悲鳴を上げながらサムアップするコルトの姿に、何ともいえない哀愁が漂っているのである。

今やスタントの顔と主役スターの顔を360度スキャニングすれば、後で顔だけすげ替ることなんて朝飯前。大スターが薬中でぶっ倒れようが、殺人をおかして撮影現場から雲隠れ?しようがおかまいなし。このまま生成AIの精度があがってくれば、ハリウッドスターはそれこそ名前貸しだけで映画が1本撮れてしまうようになるだろう。そんな俳優不要の暗ーい未来を想像させながら、業界に燻り続けるスターのスキャンダル潰しに巻き込まれたコルトは、(スタントダブルならぬトリプルの力を借りて)まさに身体をはって身にふりかかる難局を乗り越えるのである。

今後のハリウッド映画は、生成AIとVFXによって極限のアクションを極めるのか、トム・クルーズのようにスタントを使わない生身のアクションをあえて追求するのか、の2択に分岐していくのではないだろうか。人を乗せた車を7回半だか、8回ローリングさせる体当たりのシーンなど、もう誰も喜んではくれなくなるだろう。どうせスタントマンが“身代わり”で撮ったアクションだろ、とわかった時点で観客はソッポをむいてしまうに違いない。しかし、スタントマンを含む裏方さんの苦労を映画にもりこんだ本作の演出には、あの『カメラを止めるな!』と同じ映画スタッフの心意気が感じられるのだ。

フォールガイ
監督 デヴィッド・リーチ(2024年)
オススメ度[]


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