PIPES OF PEACE(1983 Paul McCartney)
もともと2枚組となるはずだった『TUG OF WAR』を、この『PIPES OF PEACE』との1枚ずつの“連作”としたため、ジョージ・マーティンを始めとする制作メンバーは『TUG OF WAR』とほぼ同じ。
そのせいかあらぬか、前作よりもちょっと小粒で散漫な気もするが、個々の曲は十二分に素晴らしいものもあり、個人的には結構好きなアルバムだ。
ただ、無理やっこ連作にする必要はなかったような気がするのだが、制作の過程上、やむなしというところなのかな。
スティービー・ワンダーに代わる今回の目玉ゲストは、マイケル・ジャクソン。
このころまでは初々しかったんだけど、その後宇宙人化し、ビートルズの版権を買い上げてポールの怒りを買っている。
ちなみに最近の関係性は、こういう感じらしい。
01 Pipes of Peace
ポールお得意のサンドイッチ形式。当時はMTV全盛期で、凝ったプロモビデオが多かったが、この曲も第一次大戦のフランスとドイツのクリスマス休戦(だっけ?)をモチーフにした物語仕立てで、なかなか面白かった。裏っぽいピアノと抑え気味のボーカルが妙。SEのせいか、宇宙的なスケールも感じる。
http://youtu.be/J7ErrZ-ipoE
02 Say Say Say
マイケルとの共作で、これも詐欺師のプロモが大評判に(なんせマイケルは『Thriller』の後だからなあ)。どうでもいいけど、マイケルの米語はスティービーのそれよりクリアやね(声質の違いだろうけど)。
http://youtu.be/NByEArAM6wQ
03 The Other Me
ちょっと異色の童謡チックな曲。シンセっぽいベースの音と、息づかいまで聞こえるボーカルが素敵。
04 Keep under Cover
ストリングスでリズムを刻むスピード感とサビのコーラスがキモ。一度「キ(黄)、パンダ、カバ!」と聞いてしまったら、以後そうとしか聞こえなくなってしまったから不思議だ(単なるバカ)。
05 So Bad
ポール曰く「ただのセンチメンタルなバラード」らしいが、いやいや、全編ファルセットの限りなく美しいポールならではの曲。ポールのベースとリンゴのドラミングが秀逸だ。これもプロモビデオ、特に真上から撮るカメラを見上げるシーンがカッコイイ。
http://www.youtube.com/watch?v=P4ys4auEDfY
06 The Man
こちらもマイケルとのデュエット。ササッと書いたっぽい、ベタなデュエット曲。
07 Sweetest Little Show
『Rock Show』とは対照的に、Aギターのソロを小さなショウに見立てた構成。原題は“Sweetest”と最上級だが邦題はなぜか『スウィート・リトル・ショウ』とわざわざ原級にしてある。
08 Average Person
前曲からメドレー形式で勢い良くなだれ込む軽快な曲。half spokenなボーカルに様々なSE、妙なコーラスなどけっこう遊んでいるが、間奏から呪文のようなコーラスがきて「パッパパ~ン、パパパパパパ~ン」。ちょっと悪ノリしすぎ?
09 Hey Hey
スタンリー・クラークとの共作のインストロメンタル。いかにものジャムっぽい曲。以上。
10 Tug of Peace
連作を強調したいのだろうが、蛇足のような気がする。
11 Through Our Love
静かなバイオリンから始まって、途中からティンパニがスンドコスンドコ。得意のラストを飾るスケールの大きなバラードを狙ったのだろうが、無理矢理仰々しくしてしまった感あり。どうした、ジョージ・マーティン。いや、ポールの曲が弱かったということか(少なくともラストにもってくるには)。
***CD版ボーナストラック***
12 Twice in a Lifetime
1985年公開のジーン・ハックマン主演の同名映画のテーマ曲。こういうのをAORというのだろうか。リバーブバリバリのサックスにドラムス、そしてボーカル。以上。
13 We All Stand Together
1984年リリースの、ポールが手がけた短編アニメーション映画『Rupert and The Frog Song』のテーマ曲で、名義はPaul McCartney & the Frog Chorus(笑)。プロデュースはジョージ・マーティン。
mccartney We All Stand Together
14 Simple as That
ヘロイン撲滅を謳うチャリティ・アルバム『IT'S A LIVE-IN WORLD』に提供した曲なんだと。ササッと書いたのかな、あまり気合いが感じられん。
***この時期の他のオリジナルシングル***
15 The Girl Is Mine
ポールのシングルではなく、1982年にリリースされたマイケル・ジャクソンの『THRILLER』からのシングルカット。まあ、どうでもいいや
16 Ode to a Koala Bear
シングルカット『Say Say Say』のB面。転拍子が面白いロッカバラード。けっこう好きなんだけどなあ。
(つづく)
CONTENTS
パイプス・オブ・ピース EMIミュージック・ジャパン 詳細を見る |
パイプス・オブ・ピース(紙ジャケット仕様) EMIミュージック・ジャパン 詳細を見る |