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雑感録

これがぽ~ちゃんだ その11『TUG OF WAR』

 
TUG OF WAR(1982 Paul McCartney)

ジョンの死後、引きこもりと化していたポールが2年ぶりにリリースしたアルバムは、ビートルズ解散後のポールの迷いやわだかまりを全て払い落としたかのような1枚。
「これだ! これこそポール・マッカートニー! 僕らはこれを待っていたんだ!」と叫びたくなるような会心作だった。
最大の要因は、プロデューサー、ジョージ・マーティンの存在。
やっぱり一人の頭で考えるより二人の頭の方がいいし、天才と組むのはそれなりに偉大な人間でないと、凡人では天才の言いなりにしかならないから意味がないのだ。
エンジニアは今回もジェフ・エメリックが担当し、ビートルズの黄金チームが復活。
ポール自身も“beatly”(ビートルズっぽい)という言葉を使っているように、敢えてビートルズ的なものを打ち出しているのは、ジョン亡き今、自分がビートルズを語り継がなければいけないといった心境にでもなったのだろうか(別にジョンが生前にそういうことをやっていた訳ではないが)。
サブ的な要素としては、スティーヴィー・ワンダーをはじめ、スタンリー・クラーク、エリック・スチュアートなどのゲストがあるが、個人的にはオマケ程度にしか思ってないし、セッションマン的な参加についてはどうこう言うほど繊細な耳もない。実はデニー・レインもけっこう参加している。

01 Tug of War
「イッツァ、タ~コボ~」ときて、「タコ」の歌と思いきや、「ツナ」の歌(ちゃんちゃん)。「ド~アイノ~アイマッスングランボーリッツァタ~コボ~」とひと息で歌いきるあたりが妙。アコースティックなメインパートから、ちょっとだけヘヴィなミドル、ジョージマーティンのさりげないけどキリリとしたオーケストレーションが光るコーラス部分という流れも美しい。
http://www.youtube.com/watch?v=zIfPIfuTFXA

02 Take It Away
もともとはリンゴに提供するために書いた曲らしいが、危ないところだった。こんないい曲をリンゴにあげるなんてもったいない。当のリンゴはスティーヴ・ガッド(誰や?)とともにツイン・ドラムで活躍してくれている。やるべき人がやるべき仕事をやってこそ、いい曲も生きるというものだ。
http://www.youtube.com/watch?v=5z-iApVMr2Y

03 Somebody Who Cares
怪しげなイントロでちょっとフォルクローレ調? マイナーとメジャーを行ったり来たりで転拍子もさりげなく入り、面白い。Aギターのソロがまたいい。

04 What's That You're Doing?
スティービーとの共作で、いかにものジャムっぽい曲。以上。

05 Here Today
言うまでもないが、言わないと後が続かないので言っておくと、ジョンへの追悼曲。「レノンは天才だ」「君は愛を叫んでいた」「もう一度会いたいジョニー」とかの偉人を讃える歌ではなく、「こんなことを言ったら君は笑うだろうね」という、ジョンと最も長くいっしょにいたポールにしか書けない曲。Aギターに弦楽四重奏という『Yesterday』的なアレンジは、ポール自身が『beatly』と説明している。ジョンはポールをからかうのによく『Yesterday』を引き合いに出していたものだが。

06 Ballroom Dancing
タイトル通り、ブギ調の舞踏曲。「バリウドゥンオ~ウェイサッチャプリリサイッ…」のコーラス、サビのオクターブ唱法など、ポールのボーカル聴きどころ満載。ブラス隊も張り切ってるよ。

07 The Pound Is Sinking
世界各国の通貨が出てくるエコノミックソング(?)。当時はポンド(その頃のイギリスの通貨)は沈んでいて、円は驚くほど強くなっていたらしい。ドラクマとか『世界まるごとHOW MUCH』でしか聞いたことのないような通貨も登場する。曲はさりげないけど3つのパートから構成されていて、展開が面白い。

08 Wanderlust
ポールの歌唱力全開!「ライラ~ウ、ワ~ンダ~ラ~ス…」と「オウフェ~ディライ、ゴ~ロンマイラ~ブ」の2つ別のパートを重ねたコーラスは圧巻。エンディングもカッコイイ。

09 Get It
ビートルズで『Honey Don't』『Everybody's Trying to Be My Baby』をカバーしたカールおじさん(明治製菓のアレじゃないよ)とのデュエット。アルバム中、最もどうでもいい曲で、カールおじさんも呆れて笑ってるよ。

10 Be What You See(link)
“link”ってのはやっぱ「つなぎ」か? 『WILD LIFE』のリプライズ的タイトルのテキトーなlinkとは違い、曲は短いが独立しているし、『Get It』から『Dress Me Up~』へのつなぎの役割もしっかりしていて、流れが美しい。

11 Dress Me Up as a Robber
スパニッシュギターをフィーチャー。ボーカルは大半がファルセットだが、2回目の地声のパートのコーラスがまたゾクッとするほどカッコイイ。

12 Ebony and Ivory
前曲からの流れというか、登場感がいい。曲そのものはそこまで大したことないと思うのだが、ポールのイギリス英語とスティービーのアメリカ英語のコントラストが面白く、ポールのソロバージョンを聞くと妙に平たく聞こえる。80年代に流行った大物のデュエットの先駆けか。
http://youtu.be/TZtiJN6yiik

*ボーナストラックはCD再販の際にも付けられなかった模様

***この時期の他のオリジナルシングル***
13 Rainclouds
シングルカットされた『Ebony and Ivory』のB面。なんとも不思議な曲で、歌い方は後の『First Stone』っぽい感じ。好きなんだけど未だデジタル化されてないのが残念。

14 I'll Give You A Ring
こちらは『Take It Away』のB面で、こちらに関してはシングルも聞いてない、数少ない未聽曲。乞うデジタル化!

つづく
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