我昔所造諸悪業 皆由無始貪恚痴
従身語意之所生 一切我今皆懺悔
しかし、この度、浄土宗系で伝えられていた授戒作法書を見ていたところ、別の形の偈が見られたので、紹介しておきたい。
至心懺悔無始来 自他三業無量罪
今対仏前皆懺悔 懺悔已後更不作
『授菩薩戒儀則』
浄土宗系の授戒作法は、元々天台宗から導入されたものであるが、この偈文については、一般的な天台宗の作法書には見られないものである。よって、おそらくは日本の浄土宗で伝承される間に付加されたものであるかと思う(他の箇所にも、明らかに浄土教系の教学に基づくと思われる語句が見られるため、以上のように判断した)。
それでは、これを訓読して意味を探ってみたい。
無始より来たる自他三業の無量罪を至心に懺悔す、
今仏前に対して皆懺悔す、懺悔已後更に作らず。
以上である。簡単な意味としては、先ほどの『華厳経』由来の偈を再度詠み直した感じとなっており、最初の2句などはまさに詠み換えである。問題は後半2句で、『華厳経』由来の偈の場合は、誰に対して行うかといったような具体性が無いけれども、『授菩薩戒儀則』の場合は、仏前(仏像を前にということだろう)に懺悔して、しかも、懺悔した後は二度と悪事をなさないようにする、と誓っているのが特徴である。
無論、問題も無いわけではない。特に、しっかりとした漢詩の場合、同じ語句は1回しか使わないということになっていると思うのだが、この偈の場合3度も「懺悔」が使われている。よって、不自然さがある。しかも、罪と作はともに「仄字」であって、本来は各句の末尾には用いられないため、平仄もおかしい。
上記のことからして、おそらくは日本で作られた偈頌なのだろうと思う。意味としては、『授菩薩戒儀則』の内容で問題無いが、形式的な完成度が低いのである・・・そういえば、懺悔の偈頌って、他にもあるのかな?
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