つらつら日暮らし

今日は人日の節句(令和4年版)

今日1月7日は「人日の節句」である。これを知るために、まず「五節句」から確認していこう。古来、日本には、中国から取り入れて定着した「五節句」があった。

  日付   名称  関連草花
①一月七日 人日の節句・七草
②三月三日 上巳の節句・桃
③五月五日 端午の節句・菖蒲
④七月七日 七夕の節句・笹
⑤九月九日 重陽の節句・菊


現在の我々は、場合によっては桃の節句と呼び、端午の節句と呼んだりと、正式なる名称と、関連する草花の名称とを混同して用いるが、実際には上記のように全てに正式な名称がある。なお、江戸時代までは現代的な意味での祝日ような扱いだった五節句だったが、明治時代に入ると新暦が採用された関係で、各植物の季節が合わなくなった。それから、明治政府は天皇中心の祝日に改めるつもりだったらしく、結果として五節句は廃止された。今では、暦を知る一つの手段としてのみ民間で語られる程度である。

さて、本日「一月七日」は、「人日の節句」と言う。何故、「人日」と呼ぶかだが、中国で一月一日の元旦から様々な動物などを当て嵌め、その七日目が人だから、だそうだ。

古人曰く「元日、鶏と曰う。二日、狗と曰う。三日、猪と曰う。四日、羊と曰う。五日、牛と曰う。六日、馬と曰う。七日、人と曰う」と。
    臨済宗大本山妙心寺11世・悟渓宗頓禅師(15世紀の人)『虎穴録』「人日示衆」


この「古人」というのが、中国の言い伝えを意味している。よって、七日目に「人」が出ており、ここから「人日」という言葉の元になったと理解できるかと思う。そのため、干支と同じように、とりあえずこれらの並びに従いつつ、7番目が「人」であるとしか理解出来ないのである。

ただし、上記の教えとは異なる見解もある。

〔歳時記〕云、正月七日、七種の菜を以羹とし、綏勝を剪て人とし、あるひは鏤めて人とし以て相送る。
    「江府年行事」、三田村鳶魚編『江戸年中行事』中公文庫・昭和56年、33頁


ここで、「綏勝」とあるのだが、おそらくは「綵勝」で女性の髪飾りの意味だそうだ。それを人(の形?)にすることをいうそうだが、これもこれ以上はよく分からない。

さて、「人日の節句」と言えば、「七草」がその植物になるが、当然に「七草粥」が有名である。朝には、七種の野菜(七草)が入った粥を食べる風習がある。具体的には「せり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ・すすな・すずしろ」であり、これらを食べることで、邪気を払って万病を除ったという。しかし、呪術的な意味のみに限定されず、現代的な視点では、おせち料理で疲れた胃を休めて、野菜が乏しい冬場に不足しがちな栄養素を補うという効能も期待されているようだ。

ところで、こちらについてもその始まりなどに興味を抱くところだが、以下の説がある。

正月上の子の日、若菜七種を奉る事、宇多天皇の御宇より始る、
    前掲同著、33頁


宇多天皇は第59代の天皇で、生没年は867~931年になる。それで、上記の典拠を知りたいところだが、室町期に成立した文献に以下のようにある。

内蔵寮並びに内膳司より正月上の子の日これを奉るなり寛平(宇多)年中より始まれる事にや。延喜(醍醐)十一年正月七日に後院より七種の若菜を供ず。
    一条兼良『公事根源』「一月 供若菜 上子日」項


なるほど、どうもこの辺が「江府年行事」で用いた典拠だったようだが、良く見ると、宇多天皇の御宇に、「正月上の子の日」に若菜を奉ったことが分かるが、これが「七草」となったのは、醍醐天皇の時代であったことも分かる。ただ、比べれば平安時代初期から中期にかけて、このような習慣が出来てきた、と伝承されていたことを示すといえよう。

まずは、以上のように見てきたが、この1年の無病息災を願い、新型コロナウィルス感染症への対策も思いつつ、七草粥を頂戴したいものである。

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コメント一覧

tenjin95
コメントありがとうございます。
> 風月 さん

ご参考になれば幸いです。

当方でも、朝に作って食べました。
風月
七草がゆ
https://blog.goo.ne.jp/fugetu3483
今、貴ブログを訪問して、今日は七草がゆの日であった、と気が付いた次第です。お正月行事でやはりちょっと疲れ気味の脳の状態だったようです。
明日、手元にある野菜と外になにか摘みに行って7種くらいにしてみます。
こちらにお邪魔してよかったです。すっかり忘れていたのです。
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