つらつら日暮らし

マルティン・ルター『九十五箇条の提題』を学ぶ・16

ドイツ宗教改革の発端にもなったとされるマルティン・ルターの『九十五箇条の提題』の日本語訳を学んでいく連載記事である。連載16回目である。

16 地獄、煉獄、天国の違いは、絶望、絶望への接近、救いの確かさの違いに対応している。
    深井氏下掲同著・17頁


この辺は、キリスト教の世界観と相即した見解だということになるだろう。地獄と煉獄の違いについては、【前回の記事】でも申し上げた通りなので、割愛するけれども、ルターは、死後の行き先について、生前に於けるその人の心のあり方に由来することを指摘している。

ここ数回の記事で、死を迎えようとしている者の魂の癒やしや愛によって充たされることの重大性を説いていたことを確認したが、最後の「救いの確かさ」を持っている魂は、天国に行くことになる。一方で、ここでルターが述べる「絶望」とは何であろうか。「絶望」と聞くと、キェルケゴールを参照したくもなるが、ルターを考える時には意味が無いかな。

下掲している深井氏の著作には、ルターの『キリスト者の自由』が収録されているのだが、やはり神の言葉と信仰を通して、魂が聖なるもの、真の神の子になるなどと示されているので、絶望とはそのような神の言葉を信じられない状態だと判断できようか。

【参考文献】
・マルティン・ルター著/深井智朗氏訳『宗教改革三大文書 付「九五箇条の提題」』講談社学術文庫・2017年
・L.チヴィスカ氏編『カトリック教会法典 羅和対訳』有斐閣・1962年
・菅原裕二氏著『教会法で知るカトリック・ライフ Q&A40』ドン・ボスコ新書・2014年
・ルイージ・サバレーゼ氏著/田中昇氏訳『解説・教会法―信仰を豊かに生きるために』フリープレス・2018年
・田中昇氏訳編『教会法から見直すカトリック生活』教友社・2019年

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