脳卒中は他の病気と違い、
手術で患部を切除したり、
薬物投与で患部を治癒したり出来ない病気だ。
脳の血管が梗塞し血流が止まると、
血管の先の脳細胞は最終的に壊死する。
壊死した脳細胞は、
現代医学をもってしてもよみがえることは無い。
私個人の意見だが、「闘病」という言葉は
脳卒中患者には当てはまらないと考えている。
壊死した脳細胞を頭の中に抱えたまま、
生きている脳細胞を繋ぎ、
脳の神経伝達回路を新しく構築することが
失った脳機能を取り戻す唯一の治療法だからだ。
つまり、病気と闘うというより、
病気と向き合いながら脳を再構築し、
新しい自分としてよみがえるのだ。
入院中、とても励みになったのがこの本だ。
振り返れば、
「麻痺した部位を再び動かす」
「動かし方がわからない」
という感覚は、
赤ん坊の成長過程で体験するそれであった。
寝返り、ハイハイ、つかまり立ち、歩行の成長過程をもう一度辿っていく。
脳自体も若返ったように
新しいネットワークを作り始める。
そして動く右腕右脚とリハビリ士を教師とし、
各関節の可動とは、動くとは何かを考えながら、
一つ一つの動作を反復する。
昨日まで出来なかった動作が出来ていく喜び、
赤ん坊の自分が成長していく喜びだ。
4月4日から6月8日の今日まで、
このような小さな成長に喜びを感じ、
積み重ねていく毎日だった。
今では脳梗塞前とほぼ変わらない、
むしろ運動機能や知能が向上している気分である。
OT、PT、ST、それぞれのリハビリ士と、
日本の医療体制に本当に感謝している。
生まれ変わった自分。
明日から新しい生活様式の世界へ。
限りある人生。
入院中、やりたいことリストを作った。
明日からの人生も楽しもう。
まずはステイホームでホットケーキを作ろう。