(半田山中腹の紅葉)
福島盆地の北部に伊達郡桑折(こおり)町という所がある。青りんごの代表品種である王林や皇室献上桃のあかつきなどの果樹栽培で知られ、盆地からは東に屏風連山の霊山、そして西には銀山として有名であった半田山を望むことが出来る。ボクは昨年福島を訪れたときに半田山を歩こうとしたのだが、東日本大震災の影響でアクセス道路が崩壊して入山することができなかった。現在は登山道を含めて問題なく歩くことが出来る。今回地形図などの十分な準備ができなかったので、福島駅近くのコラッセふくしま内にある、「ふくしま情報ステーション」にて「桑折まちナビマップ」を入手して歩くことにした。
朝桑折駅に着くと綺麗な駅舎の向こうに今日歩く予定の半田山が見える。半田山は、桃畑で有名な伊達崎(だんざき)地区から見ると、稜線は櫛のような丸いカーヴを描いている。だがそれ以上に目立つのはまるで氷河が削ったかのような東斜面である。この山の歴史についてはこちらを読んでほしいのだが、地すべり自体はこの山特有の地質によるものらしい。現在は治山事業により地すべりは落ち着いていて、ただ東側の急斜面にその名残を見ることができるだけだ。だが地すべりによって出来た光景はこの山を周辺の山とは一風変わったものにしていることは間違いない。
(桑折駅から中央に半田山)
桑折駅から中腹にある半田沼までは長い車道歩きが待っている。まずは桑折駅から北へと進路を取る。新幹線と在来線が地上部分で並走する珍しい光景が見られるガードを潜ると半田山を示す道標が点々と置かれている。桑折駅の西側に広がる住宅街を抜けると柿や葡萄などの果樹畑が目立ってくる。東北自動車道の近くからは国見町方面の山並みがよく見える。あの山の向こうはもう宮城県なのだ。
(柿)
(葡萄畑と国見町の山並み)
温泉施設である「うぶかの郷」への道を進むと地元の小父さんに「どこまで行くんだい」と声をかけられる。半田山までと答えると、そこの道を上がってもそのまま舗装路を上がっても行かれるという。お礼を言ってそのまま舗装路を進み、「うぶかの郷」への道を見送って、林道林王寺線を進む。半田沼まで続くこの林道は半田山東斜面の緩やかな丘陵地帯を蛇行しながら延びていく。農作業に励む地元の人たちと挨拶を交わしながら、林道の分岐点へ近づくと薬師堂がある。傍らに紅葉の盛りを迎えた椛の木が立ち、なかなか趣がある。
(薬師堂 写真では良さは伝えにくい)
緩やかなアップダウンのある道を行き、弘法大師のお堂の脇を通りかかると凄まじい発砲音が鳴り響いた。この辺りの山は11月に入ると猟期に入るらしい。弘法大師のお堂を過ぎると駐車場のある休憩所がある。休憩所と言ってもちょっとした椅子があるだけだ。佐久間川を渡るため一旦大きく下って登り返す。この辺りは赤松の木が多い。半田山の稜線も顔を覗かせる。車道の分岐点が近づくと枝垂桜の植林帯が現れる。自然の小径と書かれた看板が指す道は旧道だそうだ。とりあえずガイドマップどおりに進むと国見町方面が開けた展望地に出る。ここも枝垂桜の植林地らしい。
(弘法大師のお堂)
(休憩所から見える半田山)
(枝垂桜の植林地)
枝垂桜の植林地から先は大きく蛇行しながら進んでいく。段々と紅葉が美しくなってきた。黒山方面から延びてくる林道に合流する辺りに蛇沼と呼ばれる赤松に囲まれた沼が見えてくる。周囲が急斜面なので淵まで近づくことは出来ない。牧場への自然の小径を見送ると半田醸芳小学校の学校林がある。その赤松林を過ぎるとまたも自然の小径がある。ここを入ると直接半田沼へと行ける(後でわかったことだが)。そのまま林道を進み、半田沼が近づくと落葉松林が黄色く色づいている。周囲の紅葉も良い感じだ。
(蛇沼)
(学校林)
(落葉松林)
(落葉松林と紅葉)
黒山方面への道を分けると大きな駐車場のある半田山自然公園に着く。広い駐車場があり、観光客らしき軽装の若者の姿を見かける。ビジターセンターなどがあるようだが、先に山頂を踏んでおきたい。芝の生える広場で準備を整える。広場周辺は随分と木々の色付きが良い。埼玉の山で500m未満でこれほど紅葉する所はなかなかないだろう。キャンプ場を見送り、そのまま林道を進み続ける。この辺りも落葉松が多い。しばらく進むと山側の斜面に土留めの木段が設けられた登山口が見えてきた。ガイドマップではその先の林道産ヶ沢線を進むようになっているが、林道を歩くより登山道のほうが良い。前回の山歩きより一月以上経っていることもあり、木段を上がるだけで息が上がる。一旦木段が途切れてもその後も断続的に木段が現れる。一気に150mほどを登ってしまうのだから仕方がない。そんな厳しい道でも慰められるのが、奥武蔵や奥多摩ではなかなか見られない美しい紅葉である。奥多摩でも高い所ならそれなりの紅葉は見られるが、600mにも満たない所でこれほど色付くことはあまりない。夏暑く、冬寒い、昼夜の温度差が大きいという福島盆地特有の気候がこうした光景を生み出しているのだろう。
(半田山自然公園前の紅葉)
(広場内の紅葉)
(登山口)
(登山道内の紅葉)
木段が終わり、傾斜が緩むと半田沼を望む展望地に出る。半田沼は農業用の溜め池として使われているため、今日はまだ水位が低いようだ。半田沼の背後には福島盆地が広がり、その奥には茶臼山城のある古城山や屏風のように広がる霊山が見える。雲がかかってはっきりと見渡せないのが残念でならない。展望地から山側へ進路を変えると間も無く産ヶ沢線に出る。ここで初めて中高年のグループと擦れ違う。左へ少し上がると駐車場のある半田山山頂登山口だ。道標には半田山山頂と萱尻牧場を指している。牧場のほうはてっきり過去のものと思っていたのだが、調べてみると現在も現役として使われているらしい。
(半田沼)
(背後は桑折の町並みが広がる福島盆地 さらに奥は霊山辺りまでが見えている)
(半田山山頂登山口)
舗装路を上がっていくと駐車場があり、その奥が牧場への道。登山道はそこから分岐している。歩き始めは緩やかなスロープ。すぐ上に東屋があったので、休憩を取る。すると山頂のほうから中高年の女性二人組が下りてきた。半田沼周辺では若い人を見たが、山中は中高年ばかり。最近は若者の姿が目立つようになったとはいえ、福島においてはまだ山ガールズ・ボーイズは中高年のようだ。東屋を出発し、緩やかな斜面を登っていく。刈払いがなされ、裏岩手縦走のような藪の辛さは微塵もない。やがて標高差100mほどの半田山の肩までの厳しい登りが待ち受ける。道は直線的に付けられているものの、木段はなく、山慣れている人には容易いだろう。ただ今日はスニーカーである。足を滑らせぬようじっくりと歩いていると今度は中高年の男性が三人やってきた。ストックは持っているが、へっぴり腰で見ているこちらが怖い。小父さんたちを見送ると少し雨が降ってきた。標高が高くなってきたせいか、紅葉も終わり、登山道は冬枯れの雰囲気である。しばらくゆっくりと登っていると看板の掛けられた木を見かける。山頂から駐車場までの距離を知らせる看板だ。100m刻みで掛けられているので、目標とするにはちょうど良い。
(写真ではわかりにくいがなかなかの急坂)
(山頂と駐車場までの距離を知らせる看板)
やがて東側の斜面が少し開けてくると半田山の肩の部分に出る。眼下には半田沼と福島盆地が見える。ここから先は道がぐっと緩やかになる。ボク好みの緩やかで広いスロープが続く。雨は先ほどから断続的に降り続いたままだが、落ち葉が敷き詰められた冬枯れの道にはよく合っている。崩壊地の近くまでやってくると国見方面の眺めが得られる。手前の色付く尾根は下山ルートで、その奥は小坂峠などが見えているらしい。小雨が降っていてもこの道はゆっくりと歩きたくなる。一歩一歩踏みしめて、いよいよ半田山(863.1)の頂上へと出る。
(半田沼と福島盆地 雨で大分煙っている)
(冬枯れの緩やかな登山道 ボク好みの道だ)
(崩壊地の上から 天気が良ければもっと手前の紅葉が映えるだろう)
三角点と山頂標識、小さな祠とベンチが置かれた山頂からはいくらか福島盆地が見える。だが山腹を彩る紅葉や緩やかな稜線からの展望に比べると山頂は地味な印象だ。ベンチに腰を下ろし、昼食を取ろうとすると雨が急に強くなり始めた。少し経てば弱くなるだろうと思っていたのだが、一向に止む気配がない。おにぎりを食べ終わったところで已む無く下山することにした。
(山頂からの展望)
(山頂の様子)
下山は北側のルートを採る。来たときと同じようにこちら側も緩やかな冬枯れの道だ。濡れた落ち葉の道だが、意外にも滑らないのでぐんぐんと高度を落としていく。こちら側にも山頂と北駐車場までの距離を示す看板がある。但し距離は南側が900mなのに対して2200mもある。高度を落としていくと傾斜が急にきつくなる。それとともに周囲は段々と色付く葉が目立ってきた。小ピークを越え、九十九折に入ると紅葉はより色を濃くしていく。ゆっくりと眺めていきたいところだが、雨脚は相変わらず強い。色付く落葉松林の中に東屋があるのが見えたので、そこで少し休んでいく。帽子はびっしょりと濡れ、吸った雨水が鍔から滴り落ちている。この東屋はかつては展望台として使われていたようだが、現在は落葉松が伸び、その用をなさなくなっている。
(北側ルートの歩き始め)
(傾斜がきつくなり始める)
(小ピークの辺り)
(九十九折の紅葉)
(展望台という名の東屋)
(展望台下の落葉松林)
展望台下には更に九十九折が続いていたようだが、それを知らずに落葉松林を抜けて半田沼へと向かう。道は緩やかにアップダウンを繰り返し、急な下りを経て林道へと下り立つ。雨は止み始めた。すぐ近くに大きな駐車場がある。おそらくここが看板にあった北駐車場なのだろう。駐車場に入ると半田沼へと続く遊歩道が延びる。大きな椛の木が黄色く色付いている。半田沼へ向かって下っていくと水神岬と書かれた道標がある。その先は半田沼と周囲を彩る紅葉が美しい。水神岬へ向かって歩き始めるとそこはまさに紅葉の盛り。オレンジ・山吹・朱・赤と色も様々。天気が良ければもっと鮮やかな紅葉が楽しめたことだろう。
(展望台から林道へと向かう途中の紅葉)
(林道 奥が北駐車場)
(半田沼へと向かう道)
(半田沼)
(周囲を彩る紅葉)
北側から回り込み、やや沼に突き出た所が水神岬。祠があり、側には大きなポプラの木が立つ。岬からは椛の紅葉が美しい。岬からは半田沼を一周せず、そのままビジターセンター方面へと向かって歩く。ビジターセンター前に出ると中年の男性に半田山の様子を聞かれる。問題ない旨伝えたのだが、結局ビジターセンター内にいる職員に道の様子を確認したようだ。ビジターセンター内にはちょっとした売店と広い休憩所がある。雨に大分濡れたので、少し休んで乾かしていく。休憩所内には中高年の女性が二人。如何にも観光といった風情で、職員の男性にストーヴを炊いてもらっていた。ボクも当たっていこうと思ったものの、雨が再び強くなりだす前に下山することにした。ビジターセンターを出て、朝来た舗装路を下ろうとすると駐車場からやって来たクルマが側に止まった。下まで乗せて行ってくれるという。二つ返事でクルマに乗り込み、桑折駅まで送ってもらうことにした。宮城県の白石市から来たという中高年の男女で地震直後の半田山の様子や旧道のことなどを教えてもらった。男性のほうは100回以上半田山に通っていて、こんなに紅葉が綺麗だったのは今日が初めてだと言っていた。ボクはどうやら運が良かったらしい。別れ際伊達の郡役所を見てから帰ったら良いと言われる。郡役所はボクが幼い頃祖父母に連れて行ってもらったことがある。桑折の街をのんびりと歩き、郡役所の建物の前まで来るとそこは休館中であった。地震の影響で今も復旧中だという。残念だが、今度は天気の良いときに半田山とともにまた来よう。そう誓い福島駅行きのバスに乗り込んだ。
(水神岬)
(水神岬から見る紅葉)
(半田沼南側の紅葉)
(ビジターセンター)
(半田山)
(凝った刈り込み)
(桑折市街の蔵)
(伊達郡役所)
半田山でクルマに乗せていただいたお二人にはこの場を借りましてお礼申し上げます。どうもありがとうございました。
DATA:
桑折駅9:35~9:58薬師堂~10:10弘法大師のお堂~10:17枝垂桜の植樹地~10:35蛇沼~11:00半田山自然公園
~11:11半田山登山口~11:42半田山山頂登山口~12:10半田山山頂~12:48落葉松林の東屋~13:01北駐車場~
13:12水神岬~13:21半田山ビジターセンター13:32(好意にて同乗させてもらう)13:50桑折駅~
14:05伊達郡役所・桑折本町バス停(福島交通)
トイレ 半田山ビジターセンター内
歩数 31,898歩
地形図 桑折
福島盆地の北部に伊達郡桑折(こおり)町という所がある。青りんごの代表品種である王林や皇室献上桃のあかつきなどの果樹栽培で知られ、盆地からは東に屏風連山の霊山、そして西には銀山として有名であった半田山を望むことが出来る。ボクは昨年福島を訪れたときに半田山を歩こうとしたのだが、東日本大震災の影響でアクセス道路が崩壊して入山することができなかった。現在は登山道を含めて問題なく歩くことが出来る。今回地形図などの十分な準備ができなかったので、福島駅近くのコラッセふくしま内にある、「ふくしま情報ステーション」にて「桑折まちナビマップ」を入手して歩くことにした。
朝桑折駅に着くと綺麗な駅舎の向こうに今日歩く予定の半田山が見える。半田山は、桃畑で有名な伊達崎(だんざき)地区から見ると、稜線は櫛のような丸いカーヴを描いている。だがそれ以上に目立つのはまるで氷河が削ったかのような東斜面である。この山の歴史についてはこちらを読んでほしいのだが、地すべり自体はこの山特有の地質によるものらしい。現在は治山事業により地すべりは落ち着いていて、ただ東側の急斜面にその名残を見ることができるだけだ。だが地すべりによって出来た光景はこの山を周辺の山とは一風変わったものにしていることは間違いない。
(桑折駅から中央に半田山)
桑折駅から中腹にある半田沼までは長い車道歩きが待っている。まずは桑折駅から北へと進路を取る。新幹線と在来線が地上部分で並走する珍しい光景が見られるガードを潜ると半田山を示す道標が点々と置かれている。桑折駅の西側に広がる住宅街を抜けると柿や葡萄などの果樹畑が目立ってくる。東北自動車道の近くからは国見町方面の山並みがよく見える。あの山の向こうはもう宮城県なのだ。
(柿)
(葡萄畑と国見町の山並み)
温泉施設である「うぶかの郷」への道を進むと地元の小父さんに「どこまで行くんだい」と声をかけられる。半田山までと答えると、そこの道を上がってもそのまま舗装路を上がっても行かれるという。お礼を言ってそのまま舗装路を進み、「うぶかの郷」への道を見送って、林道林王寺線を進む。半田沼まで続くこの林道は半田山東斜面の緩やかな丘陵地帯を蛇行しながら延びていく。農作業に励む地元の人たちと挨拶を交わしながら、林道の分岐点へ近づくと薬師堂がある。傍らに紅葉の盛りを迎えた椛の木が立ち、なかなか趣がある。
(薬師堂 写真では良さは伝えにくい)
緩やかなアップダウンのある道を行き、弘法大師のお堂の脇を通りかかると凄まじい発砲音が鳴り響いた。この辺りの山は11月に入ると猟期に入るらしい。弘法大師のお堂を過ぎると駐車場のある休憩所がある。休憩所と言ってもちょっとした椅子があるだけだ。佐久間川を渡るため一旦大きく下って登り返す。この辺りは赤松の木が多い。半田山の稜線も顔を覗かせる。車道の分岐点が近づくと枝垂桜の植林帯が現れる。自然の小径と書かれた看板が指す道は旧道だそうだ。とりあえずガイドマップどおりに進むと国見町方面が開けた展望地に出る。ここも枝垂桜の植林地らしい。
(弘法大師のお堂)
(休憩所から見える半田山)
(枝垂桜の植林地)
枝垂桜の植林地から先は大きく蛇行しながら進んでいく。段々と紅葉が美しくなってきた。黒山方面から延びてくる林道に合流する辺りに蛇沼と呼ばれる赤松に囲まれた沼が見えてくる。周囲が急斜面なので淵まで近づくことは出来ない。牧場への自然の小径を見送ると半田醸芳小学校の学校林がある。その赤松林を過ぎるとまたも自然の小径がある。ここを入ると直接半田沼へと行ける(後でわかったことだが)。そのまま林道を進み、半田沼が近づくと落葉松林が黄色く色づいている。周囲の紅葉も良い感じだ。
(蛇沼)
(学校林)
(落葉松林)
(落葉松林と紅葉)
黒山方面への道を分けると大きな駐車場のある半田山自然公園に着く。広い駐車場があり、観光客らしき軽装の若者の姿を見かける。ビジターセンターなどがあるようだが、先に山頂を踏んでおきたい。芝の生える広場で準備を整える。広場周辺は随分と木々の色付きが良い。埼玉の山で500m未満でこれほど紅葉する所はなかなかないだろう。キャンプ場を見送り、そのまま林道を進み続ける。この辺りも落葉松が多い。しばらく進むと山側の斜面に土留めの木段が設けられた登山口が見えてきた。ガイドマップではその先の林道産ヶ沢線を進むようになっているが、林道を歩くより登山道のほうが良い。前回の山歩きより一月以上経っていることもあり、木段を上がるだけで息が上がる。一旦木段が途切れてもその後も断続的に木段が現れる。一気に150mほどを登ってしまうのだから仕方がない。そんな厳しい道でも慰められるのが、奥武蔵や奥多摩ではなかなか見られない美しい紅葉である。奥多摩でも高い所ならそれなりの紅葉は見られるが、600mにも満たない所でこれほど色付くことはあまりない。夏暑く、冬寒い、昼夜の温度差が大きいという福島盆地特有の気候がこうした光景を生み出しているのだろう。
(半田山自然公園前の紅葉)
(広場内の紅葉)
(登山口)
(登山道内の紅葉)
木段が終わり、傾斜が緩むと半田沼を望む展望地に出る。半田沼は農業用の溜め池として使われているため、今日はまだ水位が低いようだ。半田沼の背後には福島盆地が広がり、その奥には茶臼山城のある古城山や屏風のように広がる霊山が見える。雲がかかってはっきりと見渡せないのが残念でならない。展望地から山側へ進路を変えると間も無く産ヶ沢線に出る。ここで初めて中高年のグループと擦れ違う。左へ少し上がると駐車場のある半田山山頂登山口だ。道標には半田山山頂と萱尻牧場を指している。牧場のほうはてっきり過去のものと思っていたのだが、調べてみると現在も現役として使われているらしい。
(半田沼)
(背後は桑折の町並みが広がる福島盆地 さらに奥は霊山辺りまでが見えている)
(半田山山頂登山口)
舗装路を上がっていくと駐車場があり、その奥が牧場への道。登山道はそこから分岐している。歩き始めは緩やかなスロープ。すぐ上に東屋があったので、休憩を取る。すると山頂のほうから中高年の女性二人組が下りてきた。半田沼周辺では若い人を見たが、山中は中高年ばかり。最近は若者の姿が目立つようになったとはいえ、福島においてはまだ山ガールズ・ボーイズは中高年のようだ。東屋を出発し、緩やかな斜面を登っていく。刈払いがなされ、裏岩手縦走のような藪の辛さは微塵もない。やがて標高差100mほどの半田山の肩までの厳しい登りが待ち受ける。道は直線的に付けられているものの、木段はなく、山慣れている人には容易いだろう。ただ今日はスニーカーである。足を滑らせぬようじっくりと歩いていると今度は中高年の男性が三人やってきた。ストックは持っているが、へっぴり腰で見ているこちらが怖い。小父さんたちを見送ると少し雨が降ってきた。標高が高くなってきたせいか、紅葉も終わり、登山道は冬枯れの雰囲気である。しばらくゆっくりと登っていると看板の掛けられた木を見かける。山頂から駐車場までの距離を知らせる看板だ。100m刻みで掛けられているので、目標とするにはちょうど良い。
(写真ではわかりにくいがなかなかの急坂)
(山頂と駐車場までの距離を知らせる看板)
やがて東側の斜面が少し開けてくると半田山の肩の部分に出る。眼下には半田沼と福島盆地が見える。ここから先は道がぐっと緩やかになる。ボク好みの緩やかで広いスロープが続く。雨は先ほどから断続的に降り続いたままだが、落ち葉が敷き詰められた冬枯れの道にはよく合っている。崩壊地の近くまでやってくると国見方面の眺めが得られる。手前の色付く尾根は下山ルートで、その奥は小坂峠などが見えているらしい。小雨が降っていてもこの道はゆっくりと歩きたくなる。一歩一歩踏みしめて、いよいよ半田山(863.1)の頂上へと出る。
(半田沼と福島盆地 雨で大分煙っている)
(冬枯れの緩やかな登山道 ボク好みの道だ)
(崩壊地の上から 天気が良ければもっと手前の紅葉が映えるだろう)
三角点と山頂標識、小さな祠とベンチが置かれた山頂からはいくらか福島盆地が見える。だが山腹を彩る紅葉や緩やかな稜線からの展望に比べると山頂は地味な印象だ。ベンチに腰を下ろし、昼食を取ろうとすると雨が急に強くなり始めた。少し経てば弱くなるだろうと思っていたのだが、一向に止む気配がない。おにぎりを食べ終わったところで已む無く下山することにした。
(山頂からの展望)
(山頂の様子)
下山は北側のルートを採る。来たときと同じようにこちら側も緩やかな冬枯れの道だ。濡れた落ち葉の道だが、意外にも滑らないのでぐんぐんと高度を落としていく。こちら側にも山頂と北駐車場までの距離を示す看板がある。但し距離は南側が900mなのに対して2200mもある。高度を落としていくと傾斜が急にきつくなる。それとともに周囲は段々と色付く葉が目立ってきた。小ピークを越え、九十九折に入ると紅葉はより色を濃くしていく。ゆっくりと眺めていきたいところだが、雨脚は相変わらず強い。色付く落葉松林の中に東屋があるのが見えたので、そこで少し休んでいく。帽子はびっしょりと濡れ、吸った雨水が鍔から滴り落ちている。この東屋はかつては展望台として使われていたようだが、現在は落葉松が伸び、その用をなさなくなっている。
(北側ルートの歩き始め)
(傾斜がきつくなり始める)
(小ピークの辺り)
(九十九折の紅葉)
(展望台という名の東屋)
(展望台下の落葉松林)
展望台下には更に九十九折が続いていたようだが、それを知らずに落葉松林を抜けて半田沼へと向かう。道は緩やかにアップダウンを繰り返し、急な下りを経て林道へと下り立つ。雨は止み始めた。すぐ近くに大きな駐車場がある。おそらくここが看板にあった北駐車場なのだろう。駐車場に入ると半田沼へと続く遊歩道が延びる。大きな椛の木が黄色く色付いている。半田沼へ向かって下っていくと水神岬と書かれた道標がある。その先は半田沼と周囲を彩る紅葉が美しい。水神岬へ向かって歩き始めるとそこはまさに紅葉の盛り。オレンジ・山吹・朱・赤と色も様々。天気が良ければもっと鮮やかな紅葉が楽しめたことだろう。
(展望台から林道へと向かう途中の紅葉)
(林道 奥が北駐車場)
(半田沼へと向かう道)
(半田沼)
(周囲を彩る紅葉)
北側から回り込み、やや沼に突き出た所が水神岬。祠があり、側には大きなポプラの木が立つ。岬からは椛の紅葉が美しい。岬からは半田沼を一周せず、そのままビジターセンター方面へと向かって歩く。ビジターセンター前に出ると中年の男性に半田山の様子を聞かれる。問題ない旨伝えたのだが、結局ビジターセンター内にいる職員に道の様子を確認したようだ。ビジターセンター内にはちょっとした売店と広い休憩所がある。雨に大分濡れたので、少し休んで乾かしていく。休憩所内には中高年の女性が二人。如何にも観光といった風情で、職員の男性にストーヴを炊いてもらっていた。ボクも当たっていこうと思ったものの、雨が再び強くなりだす前に下山することにした。ビジターセンターを出て、朝来た舗装路を下ろうとすると駐車場からやって来たクルマが側に止まった。下まで乗せて行ってくれるという。二つ返事でクルマに乗り込み、桑折駅まで送ってもらうことにした。宮城県の白石市から来たという中高年の男女で地震直後の半田山の様子や旧道のことなどを教えてもらった。男性のほうは100回以上半田山に通っていて、こんなに紅葉が綺麗だったのは今日が初めてだと言っていた。ボクはどうやら運が良かったらしい。別れ際伊達の郡役所を見てから帰ったら良いと言われる。郡役所はボクが幼い頃祖父母に連れて行ってもらったことがある。桑折の街をのんびりと歩き、郡役所の建物の前まで来るとそこは休館中であった。地震の影響で今も復旧中だという。残念だが、今度は天気の良いときに半田山とともにまた来よう。そう誓い福島駅行きのバスに乗り込んだ。
(水神岬)
(水神岬から見る紅葉)
(半田沼南側の紅葉)
(ビジターセンター)
(半田山)
(凝った刈り込み)
(桑折市街の蔵)
(伊達郡役所)
半田山でクルマに乗せていただいたお二人にはこの場を借りましてお礼申し上げます。どうもありがとうございました。
DATA:
桑折駅9:35~9:58薬師堂~10:10弘法大師のお堂~10:17枝垂桜の植樹地~10:35蛇沼~11:00半田山自然公園
~11:11半田山登山口~11:42半田山山頂登山口~12:10半田山山頂~12:48落葉松林の東屋~13:01北駐車場~
13:12水神岬~13:21半田山ビジターセンター13:32(好意にて同乗させてもらう)13:50桑折駅~
14:05伊達郡役所・桑折本町バス停(福島交通)
トイレ 半田山ビジターセンター内
歩数 31,898歩
地形図 桑折