自民党の一部議員が今国会ででも制定しようとしている「青少年有害情報閲覧防止法」には多くの問題点があるが、問題点の怖さを正確に伝える報道はまだまだ少ない。他方、この法案は、油断したら、あっという間に成立してしまう。そこで、今回は、この防止法の恐ろしさについて説明する。
この法案が例によって、政府による表現の自由規制となっていることが重要だし、ある意味、それが問題点の全てだといってもよい。
ポルノや犯罪誘発情報などが青少年の育成にとって有害たりうることは否定しない。したがって、そのような情報に青少年が接しないようにするための「ゾーニング」(区分け)規制をすること自体は必要だと思う。
したがって、青少年が利用するパソコンなどにフィルタリングソフトを導入することにより、青少年が有害情報に接しないようにするというこの法案のコンセプト自体には反対しない。
しかし、問題は、冒頭の図にも書いたように、
①有害であるかどうかの基準を政府(青少年健全育成推進委員会)が決定する、
②必要な処置などに関する是正命令や立ち入り検査を政府(主務大臣等)が決定し、それに違反すれば処罰される、
③削除などの処置に伴う民民間の紛争については、政府(主務大臣等)が指定した機関が政府(主務大臣等)の示す指針に従って処理をする
という、政府による検閲となっていることだ。
先進諸国では、このような規制は、政府以外の独立した機関が行ったり、業界団体による自主的機関が行うことが多い。そして、有害性について司法の判断に全面的に委ねているところもある。この法案のように、政府が全てを決めてしまうようなシステムはきわめて珍しい。
今回は、有害情報だが、このシステムが構築されれば、政府は、ネット上の誹謗中傷表現についても、同様のシステムを盛り込んでくることは間違いない。
現に今回の法案にも、規制対象として、「特定の青少年に対するいじめに当たる情報であって、当該青少年に著しい心理的外傷を与えるおそれがあるもの」が含まれている。
政府がこのような名誉毀損的表現の規制にまで踏み込むことを許してはならない。表現の自由規制に政府が直接踏み込んでくると、最初は、ポルノや犯罪誘発情報に限定されていても、それはすぐに拡張してしまう。
たとえば、政府の施策批判について「テロを煽っている」とは、政治家に対する批判について、「政治家の子供がいじめられているから削除しろ」とか、拡張解釈したら、どんどん規制範囲が広がっていく。
政府が行う様々な施策が正しいか誤っているか、それを自由に語ることができなければ、誤った施策をただすことはできない。だからこそ、施策を実行する政府がメディアを規制することを許してはいけない。
ところが、例えば、朝日新聞は、上記のような根本問題にふれず、【議員立法案は、有害情報を「著しく残虐性を助長する情報」「著しく犯罪、自殺及び売春を誘発する情報」などと定義。業界の自主判断ではなく、独立した権限をもつ行政委員会が具体的な基準を定め、携帯各社やネットカフェ業者などにフィルタリングを義務づける】というあまりに無批判的な評価しかしない(※1)。
確かに条文には、「青少年健全育成委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う」と書いてあるが、それを実効あるのとする何らのシステムも設けられていない。NHKの経営委員長が選出された経過などを見ると、この条文は何ら意味のあるものではないことは明白だろう。
メディアは、なぜ、このような根本的な批判をしないのか?…と怒りが湧いてきたら、「マスコミはなぜ『マスゴミ』と呼ばれるのか」(現代人文社より近刊)を予約してください(笑)。
冗談は置いておいて、この法案は、政府が2010年の成立を目指す、現代の治安維持法、「情報通信法」のさきがけとなるものだ。なんとしてもたたいておく必要がある。
ネットの民主主義のため、自民党のトンでも法案に反対しましょう!
自民党に抗議の声を!
マスメディアに抗議するよう求めよう!
※1:http://www.asahi.com/politics/update/0321/TKY200803210348.html
★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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この法案が例によって、政府による表現の自由規制となっていることが重要だし、ある意味、それが問題点の全てだといってもよい。
ポルノや犯罪誘発情報などが青少年の育成にとって有害たりうることは否定しない。したがって、そのような情報に青少年が接しないようにするための「ゾーニング」(区分け)規制をすること自体は必要だと思う。
したがって、青少年が利用するパソコンなどにフィルタリングソフトを導入することにより、青少年が有害情報に接しないようにするというこの法案のコンセプト自体には反対しない。
しかし、問題は、冒頭の図にも書いたように、
①有害であるかどうかの基準を政府(青少年健全育成推進委員会)が決定する、
②必要な処置などに関する是正命令や立ち入り検査を政府(主務大臣等)が決定し、それに違反すれば処罰される、
③削除などの処置に伴う民民間の紛争については、政府(主務大臣等)が指定した機関が政府(主務大臣等)の示す指針に従って処理をする
という、政府による検閲となっていることだ。
先進諸国では、このような規制は、政府以外の独立した機関が行ったり、業界団体による自主的機関が行うことが多い。そして、有害性について司法の判断に全面的に委ねているところもある。この法案のように、政府が全てを決めてしまうようなシステムはきわめて珍しい。
今回は、有害情報だが、このシステムが構築されれば、政府は、ネット上の誹謗中傷表現についても、同様のシステムを盛り込んでくることは間違いない。
現に今回の法案にも、規制対象として、「特定の青少年に対するいじめに当たる情報であって、当該青少年に著しい心理的外傷を与えるおそれがあるもの」が含まれている。
政府がこのような名誉毀損的表現の規制にまで踏み込むことを許してはならない。表現の自由規制に政府が直接踏み込んでくると、最初は、ポルノや犯罪誘発情報に限定されていても、それはすぐに拡張してしまう。
たとえば、政府の施策批判について「テロを煽っている」とは、政治家に対する批判について、「政治家の子供がいじめられているから削除しろ」とか、拡張解釈したら、どんどん規制範囲が広がっていく。
政府が行う様々な施策が正しいか誤っているか、それを自由に語ることができなければ、誤った施策をただすことはできない。だからこそ、施策を実行する政府がメディアを規制することを許してはいけない。
ところが、例えば、朝日新聞は、上記のような根本問題にふれず、【議員立法案は、有害情報を「著しく残虐性を助長する情報」「著しく犯罪、自殺及び売春を誘発する情報」などと定義。業界の自主判断ではなく、独立した権限をもつ行政委員会が具体的な基準を定め、携帯各社やネットカフェ業者などにフィルタリングを義務づける】というあまりに無批判的な評価しかしない(※1)。
確かに条文には、「青少年健全育成委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う」と書いてあるが、それを実効あるのとする何らのシステムも設けられていない。NHKの経営委員長が選出された経過などを見ると、この条文は何ら意味のあるものではないことは明白だろう。
メディアは、なぜ、このような根本的な批判をしないのか?…と怒りが湧いてきたら、「マスコミはなぜ『マスゴミ』と呼ばれるのか」(現代人文社より近刊)を予約してください(笑)。
冗談は置いておいて、この法案は、政府が2010年の成立を目指す、現代の治安維持法、「情報通信法」のさきがけとなるものだ。なんとしてもたたいておく必要がある。
ネットの民主主義のため、自民党のトンでも法案に反対しましょう!
自民党に抗議の声を!
マスメディアに抗議するよう求めよう!
※1:http://www.asahi.com/politics/update/0321/TKY200803210348.html
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