情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

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判例時報「裁判員裁判における評議の進め方」最終回~評議の秘密への疑問

2009-12-14 04:00:13 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 一度、判例時報で連載中の「裁判員裁判における評議の進め方」について取り上げて、この論文の筆者が所属する研究会は、裁判官主導の裁判にすることを研究しているおそれがあるということを書いたことがある。2053号に最終回が掲載された。ようは、論点を結論のどこに関係するのかを示しつつ、分かりやすく説明したうえで、議論を進めようというような感じで、特に誘導的ではないようであり、少し、安心した。

 しかし、問題は、今後、このような「進め方」を磨くにあたって、誘導する技術を磨くものとならないようにすることができるか否かである。裁判官主導で議論が進めば、そういう類の研究になりかねない。

 そこで、市民も参加して広く議論をする必要がある。

 ところが、上記論文では、裁判員の評議は秘密とされているが、それを録音したうえ、「専門家」と「実務家」が制度改良目的で研究する場合には、その録音内容を利用できるようにするべきだと提言している。

 もちろん、評議の秘密はプライバシー侵害予防に限定されるべきであるから、専門家と実務家に開放すること自体は、反対しないが、解放する先を専門家と実務家に限定する必要はない。

 限定して研究した場合、結局、誘導的な評議の進め方を確立する方向で議論が進みかねない。

 すでにうろこは剥がれかかっている。すなわち、量刑についての評議の仕方について、裁判長が語るべき内容として次のようなことが上記論文に掲載されている。

【では、これまで執行猶予についても考えてみましたので、具体的に系の年数を決めていきましょう。過去の殺人と傷害の量刑の分布がありますので、これを参考にしながら、年数を考えてみましょう。グラフの山になっているところが、殺人未遂に科せられた刑に対して最も多い年数ということになります。本件では、こよりも重くすべきと考える事情があるのか、これまでの話し合いを踏まえて考えていきましょう】

 つまり、従前の量刑を基準にすることへの疑問を口にする余地がないような運び方を推奨しているわけだ。

 ぜひ守秘範囲を限定されたい。

 

 
 

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