あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

悲しい結末のはずなのに

2013-04-25 | 本(文庫本)
伊坂幸太郎さんの『アヒルと鴨のコインロッカー』を読みました。
これも桜の時期です。読書はしたいのだけど、新刊のかなで「これ読みたい!」というものに出会えなかったので、こういうときこそ伊坂さんの未読のものに行くべきと、手にしたのがこの作品でした。

大学入学のために入居したアパートに「河崎」と名乗る不思議な隣人がいた。初対面なのにいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と河崎からヤバイ話を持ちかけられた椎名。奪うのは1冊の広辞苑。同じアパートに住むブータン人の青年へのプレゼントだと言う河崎なのだが…。
↑これが物語のイントロ。ここから物語は2年前と現在が連続して描かれ、読み進めていくうちにタイトルの「アヒル」と「鴨」と「コインロッカー」の意味が徐々にわかってきます。

この作品も、いかにも「伊坂作品」な緻密な物語構成でした。独特な魅力を持った登場人物たちと、彼らの会話の洒落ていてユーモアがあるところも「いかにも!」という感じ。でも読み飽きるようなパターンではなく、読む者をグイグイ引き込むパワーには「参りました」と言うしかなかったです。
そして伊坂さんの小説に音楽は欠かせませんが、今回はボブ・ディラン。その世界観が本当にピッタリ。久々に、あのタルそうだけど説得力のある歌声を聴いてみたくなりました。

河崎と琴美とドルジが辿った結末は悲しいものでした。でも何故か悲しくならなかったです。逆にスカッとしました。何故でしょう。たぶん、3人が3人なりに自分が信じた正しいことをやり遂げて、愛する人を愛し通せたからではないかと思います。
正しいと信じてやり遂げることと愛し通せること…。ちょっと臭いワードかもしれないけど、やはりこれは強いのですよ。悲劇を勝利に変えることができるのだと、そんなことは伊坂さんの目論見にはなかったのかもしれないけど、私はそう受け止められました。
良いものを読ませていただきました。第25回吉川英治文学新人賞受賞作品というのも納得です。伊坂さんの初期の作品の中でも、お気に入りの上位にランクインいたしました。
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