あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

それぞれの意趣返し

2015-08-02 | 本(文庫本)
浅田次郎さんの『赤猫異聞』を読みました。
文庫本は随分前に購入していたのですが、何せ年始から超大作を読み始めていましたから、こちらを読むまでに時間がかかってしまいました。その分とても楽しみにしていて、楽しみにする気持ちはつのるばかりでしたけれど。

江戸最後の大火。江戸から明治へ、混乱の世を襲った大火事で、鎮火後に戻ってくることを約束に小伝馬町牢屋敷の囚人たちが解放された。思いがけず解き放ちとなった囚人たちの中には、曰くつきの重罪人、繁松・お仙・七之丞がいた。必ず戻るまでの時間で、三人はぞれぞれに命がけの意趣返しに向かう。それぞれの場所で三人が見たものとは?

タイトルの「赤猫」とは、江戸の火事を理由に囚人を解き放ったことの隠語。めらめらと燃える炎が、赤い猫が跳ねまわっているように見えるからなんだそうです。
そんな江戸最後の大火に解き放たれた三人は、時代が変わるどさくさにまぎれ、明治の時代にそれぞれに「生まれ変わり」、「赤猫」の思い出を語る。そこには「不浄役人」と蔑まれていた武士、牢屋敷の鍵役同心の存在が大きくありました。
そして「赤猫」の顛末を、複数の登場人物が語る形式、三人の元囚人たちが見た光景などから「浅田作品」であることを考えると、赤猫の結末は何となく分かっちゃいました。でも、そこを最後までグググッと読ませてしまうのが浅田次郎だと、ファンは思っております。七之丞の「生きていてよかった」というセリフの重さとか、今回も「すっかりやられた~」ってところですね。ま、これが快感なんですけど。

時代が変わっていく中で、決してヒーローだけが活躍したわけではない。そんな当たり前のことを改めて気付かせてくれて、生き方の落とし所、ある意味「意趣返し」と言いますか、落とし前の付け方のようなものを、この作品から教わったような気がします。
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