直木賞受賞作家の乃南アサさんの著した「女のとなり」
題名から想像するには、恋愛小説か、または夫婦の物語りか?
と思うかもしれないけれど、これは漢字エッセイです。
「女のとなり」というのは女偏のつく漢字の事。
例えば「好」「嬉」「妖」「妥」「妄」「妨」など。
これらの漢字の成り立ちを様々な女性達、または男性だったり、男女のエピソードをからめて、
流石の観察力と人生経験とをもって書かれています。
「こんな女性が近くにいたら嫌だわー」とか「こういう人いるー!」と
共感したり「自分にもこういう性質があるかもしれない」と自戒の気持ちを
抱いたりと、とてもスラスラ読めていろんな気持ちを味わえます。
特にわたしが心惹かれるのは漢字の成り立ちの部分。
普段、さりげなく使っている漢字ですが、どれを一つとっても
昔の人の様々な人間模様や経験などが積み重なって、それが結晶みたいになって
漸く出来上がったものなんです。
だから、一つの漢字でも実は色んな意味があって、すごく味わい深く
面白いものだって実感させられました。
「妙」という字は「みょう」と読んで、「珍妙」とか「奇妙」とか
嫌なイメージで使われる事が多く、不思議な様、細かくて見分けられない
不思議な動きという意味。
その、一方で、きめ細かいとかきめ細かくて美しい様等、女性の小柄で細く美しい様子を
表してもいるのだそうです。
そういえば、「妙子」さんとか、かわいい女性の名前に使われたりしますよね。
そして、「妖」という字。「妖怪」とか「妖気」等、不穏な雰囲気の漢字ですが
これは、「あやしい」「なまめかしい」「わざわい」等と読むそうで、
女がなまめかしくからだをくねらせている様子から出来上がっているようです。
コワイ!
昔の世界は今より断然、男社会だったのでしょうから、勿論漢字をつくったのは
男の人達でしょう。
漢和辞典を開いてみると女偏の漢字はかなり数多い事に気がつきます。
という事は、殿方達は女を馬鹿にしたり、尊敬したり、守ったりする事に
結構大きな比重をおいていた事と思われます。
そして、「妄」という字なんかは女によって心が惑わされ我を忘れた振る舞いを
表しているそうで、一度位は騙されても、妖怪だとしても、妖しい女に翻弄されたい
願望が見え隠れする気がしてなりません。
女偏の以外の漢字だって、いろんな意味や成り立ちがあります。
私は出来れば、全部知りたい!
やっぱり日本語は奥深くって興味深い!
そんな風に日本語を愛でる気持ちが溢れ出し、日本人に生まれて良かったと思える一冊です。
※参考 祥伝社文庫「女のとなり」乃南アサ著