山口童話 

山口弘信作成の童話です。

おまもり神様たちの秘密会議

2017-07-16 20:18:59 | 童話

 

 

平成27年9月10日 富山新聞掲載

 

おまもり神様たちの秘密会議

 

 ひろし君と妹のしほちゃんが、押入れの戸に、そっと耳を当てて、中のお話しを聞いています。

その押入れの中には、天神様とおひな様と五月人形かぶとが入っているのです。

 天神様がかぶとに、「ひろし君が、自転車の練習をしていて、たおれて手をすりむいたでしょう、しっかりと守ってやらないと、だめでしょ」と言っています。

 かぶとは「そうなんですけど、骨折をさせないで、手をすりむいただけで、終わらせるので、せいいっぱいでした。」「うん、そうだな、本人にも、自転車に乗るときは、気をつける必要がある、ということを知ってもらうためにも、それでちょうどよかったのだろうね」と言っています。

 この中では、天神様が一番えらそうにしています。

 おひな様にむかって「しほちゃんは、かぜをひいたけど、どうだったんですか」「ようち園でかぜがはやっていて、仕方なかったのです」と会議をしていました。

 「ひろし君の勉強は、本人がやる気になっていますので、このまま見守りたいと思っています、どうでしょう」と天神様が言いました。

 十一月一日に、押入れの中で、ひみつの会議が、開かれることを、ひろし君は、学校の友達から、教えてもらったのでした。

 その会議の話は、大人には聞こえなくて、子供だけに聞こえる、ということでした。

 ひろし君の家の天神様は、かけじくに天神様の姿が描かれたものです。おじいちゃんが、買ってくれたものです。

 正月に、ひろし君の勉強が出来ますように、また、家族全員が幸せでありますように、との願いをこめて、かざられます。

おひな様は、おだいり様だけのものです。しほちゃんが生まれた年に、おじいちゃんとおばあちゃんが、しほちゃんの幸せを願って、買ってくれたものです。

おひな様祭りにそれをかざって、おじいちゃんとおばあちゃんをお呼びして、ごちそうを食べながら、しほちゃんの幸せと、みんなの幸せをお願いします。

五月人形かぶとは、仙台のだてまさむねのかぶとを、ひろし君が、実際に冠れるようにしたものです。こどもの日に、取り出して、くだものやおはぎをお供えし、その横に、花びんをおいて、しょうぶを差しておきます。しょうぶの香りが部屋一杯に漂います。

その日は、そのしょうぶをお風呂に浮べ、しょうぶ湯を楽しみながら、ひろし君の無事な成長と家族の無事をお願いするのです。

 ひろし君は、自分がけがをしないように、お父さんとお母さん達が、心配してくれていることを知っていました。天神様達の、ひみつの会議を聞いてから、かぶとも自分のために、見守ってくれていることを知りました。

ひろし君はしほちゃんに「ひみつ会議のみんなに、めいわくをかけちゃだめだよ」と兄ちゃんらしく、言いました



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