平成28年9月8日 富山新聞掲載
らかん様へのお願い
ひろし君がお父さんと一緒に、となりの町内にある、お祖父ちゃんの家に自転車に乗って遊びに来ました。
自転車は、四年生になったお祝いに、お父さんに買ってもらった赤色もようの、いかにも、スピードが出そうな子供用のものです。
お祖父ちゃんが「すばらしいのをかって貰ったね、道路に出るときは、じゅうぶん気をつけてね」と、少し心配そうに言いました。
ひろし君は、「うん、分かっている。」と元気よく返事をしました。
しかし、お父さんと帰るときに、見送っていたお祖父ちゃんは、心配になりました。
それは、お父さんが道路の左側を走り、ひろし君は道路の中央を走っていたからです。
その少し先に、一時停止の看板がありました。お父さんもひろし君も停止することなく右に曲がって行き、見えなくなりました。
お祖父ちゃんは、もう、ひろし君のことが心配で心配でたまらなくなりました。
どうしたらよいか、必死に考えました。
「そうだ、もうすぐ、らかん祭があるから、らかん様に交通安全をお願いすることにしよう。だけど、本人の交通安全に対する強い自覚がなくては、らかん様も、おまもりの仕様がない、というかもしれない。」
「ひろし君と一緒に、団地内を実際に自転車でまわって、交通の決まりを知ってもらうことにしよう。」と思いつきました。
さっそく、ひろし君の家に電話をしました。
「今度の土曜日か日曜日に、ひろしちゃんと妹のれいちゃん、遊びにきてちょうだい、ひろしちゃんに交通安全のお話をしたいの、いちごのケーキを準備して待っているからね。」と連絡しました。
日曜日に、れいちゃんとお母さんは車で、ひろし君は自転車で来ることになりました。
その日に、お祖父ちゃんは自転車に乗って、ひろし君を迎えに行きました。
ひろし君は、お祖父ちゃんの横に来て、並んで走ろうとしたので、お祖父ちゃんは停まって、言いました。「自転車は、二列になってはダメなんだよ、お話が出来なくて、さみしいけれど、自転車に乗っているときは、集中して、しっかりと前を見る必要があるの。だから、うしろから付いてきてほしいのだけど、分かったかな。」「うん、分ったよ、うしろから付いてゆくよ」
そして、お祖父ちゃんの団地を、二回まわって、「信号のあるところでは、信号を守ること、一時停止の看板があれば停止し、右と左を見ること、歩道のあるところでは歩道を走ること、そのときには車道に近い部分を、ゆっくりと走り、歩道だから歩いている人に、めいわくをかけないようにすること」を勉強しました。そのあとで、いちごケーキを、みんなで食べました。
つぎの日曜日が呉羽山五百らかん祭です。みんなで一緒に行って、交通安全のお願いをすることを約束しました。
お祖父ちゃんは、それでもまだ心配で、帰りも自転車でひろし君の家まで一緒に付いてゆきました。ひろし君が先頭になり、お祖父ちゃんが後からついてゆきました。
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