【申告】
購入して18年経過してます。現在の「ネルル」
人形の頭部、胸部、両手にセンサーがあるらしいのですが、左手を
【初診】
関西地方からの来院です。
リセットボタンを押してから様子を確認します。
・右手スイッチが反応しません。
・左手スイッチは反応していますが、クリック感が鈍いです。
・胸の寝かしつけセンサーが反応しません。
・姿勢センサーが反応しません。
・おはなしセンサーの働きは、別途確認です。
・なでなでセンサーの働きは、別途確認です。
・まぶたが動いたり、動かなかったり不安定な動きをしています。
年数が経過しており、ネルルドックを実施して全身治療の必要性がありそうです。
①両手のスイッチ状態から確認です。
いつもあるはずのスイッチ部の根元の収縮チューブがありません。詳しい背景は不明です。
配線の外皮は劣化で破れていましたが、芯線は切れていませんでした。スイッチ接点の開閉機能がなくなっていました。
初期の頃のネルルは、スイッチ傍だけ収縮チューブを縮めていたのか、他の部分は収縮されていません。スイッチ開閉動作はしていますが、クリック感が鈍く間もなくスイッチ動作をしなくなる状態です。
これらは、スイッチを含め配線を全て交換します。いつものように柔軟性のあるシリコン外皮の配線で制御基板に接続します。
②寝かしつけセンサーの確認です。
センサーとして使用している圧電ブザーへの配線の半田付け部が剥がれています。半田付けにて対応です。
③まぶた動作の確認です。まぶたを駆動させているギヤボックスを確認します。
ギヤは、3つありギヤ1は良く崩れるような壊れ方をすることがあるのですが、問題ありませんでした。
ギヤ2は、過負荷に対するクラッチ構造を持つ複合型です。やはり、クラッチギヤが割れていました。3Dプリンタで作成したギヤに交換します
ギヤ3も、割れが確認されました。極論割れによる空転が起こっても問題を起こさないギヤですが、軸にヤスリで溝をつくりΦ0.35mmのステンレス線で締め付けました。
これでギヤボックス内の治療は終了です。
まぶたの開閉度を決めるスイッチの確認です。すこぶる優秀な(???)指先でのスイッチの反発力の比較とテスターで接点抵抗値を測定しましたが、異常を確認できませんでした。
④姿勢センサーが働いていないようなので、センサー側壁に穴を開け接点復活剤を塗布してからセンサーを何度も振って機能が戻った事を確認しました。開けた穴は、ホットボンドでふさぎました。
⑤お話しセンサーであるマイクを配線先のコネクタ部で機能に問題がないことを確認しました。
⑥音量切替スイッチの切り替えレバーが重くなっていましたので、接点復活剤を塗布してスムーズに切替ができる様にしました。
⑦リセットスイッチ、アジャスタスイッチ、バッテリードアスイッチも正常に機能します。
経過観察をして、ネルルが帰りたいと言い出したら退院にしましょう。
【治療後記】
センサー類の無反応はセンサーの故障や断線でした。まぶたの異常な動きはまぶたを動かすギヤの割れによるものと思われます。
”しゃべりかけても音声反応もありません。
このネルルも新しいネルルには代えがたい思い出のいっぱいつまっているネルルでした。これからも持ち主様と大切な時間を紡いでいかれると思います。
【おまけ】
①ネルルのめじりはキズが付いていることが多く、この患者さんも例外ではありませんでした。
ひとみのキズはまぶたのまつげにより、目尻のキズはまぶたにより傷つけられています。
目玉は、2本のバネで前方に押し出されるようになっていますが、まぶたと目玉を引き離すように、目玉を2本のネジで前方への押し出し具合を調整しました。これにより隙間が作られキズの発生を予防できます。
②ひとみに一部剥がれがありましたが、思い入れのある場合があるので持主さまに了解を頂きペイントを施しました。ひとみのキズは、まつげによるものです。
ひとみのキズも、目尻のキズもまぶたの樹脂成型時の残留応力により時間と共にまぶたが変形しているのかもわかりません。
③まぶた開閉ブロックをネジ止めしていると気がついた事がありました。今まで治療したネルルではなかったのですが、ネジが1本いつもと違います。
まぶた開閉ブロックをネジ止めしている4本の内、3本がワッシャー一体型のネジなっているもので1本だけがワッシャーのないネジなのです。それが4本ともワッシャー一体型のネジで締められています。そのためネジが斜めに傾いてしまっています。手持ちのネジと交換しました。
元を正せば、明らかな構造設計ミスと言えるでしょう。この1本をワッシャーなしのネジを使用する理由がありません。ワッシャーが干渉するので、ワッシャーなしのネジを使用していると思われます。製造工程にとっては迷惑な話です。今回のこのネジが使用されている背景についてはわかりません。