【申告】
何年か電池を入れたまま眠らせていたら、液漏れを起こし電極が腐食し動きません。
【診察】
山陰地方からの来院です。
夢の子ネルルの初期バージョンと思われます。外観はきれいですので、あまり共に過ごさずに眠っていたものと推測されます。
電池ホルダーや本体の電極に少し腐食を削り落とした跡がありますが、ひどい状態です。
内部を開けて診ます。
鍾乳石のような状態です。外して腐食を落とせるか確認します。
コイン電池の電極は清掃すれば良い程度ですが、電池ホルダーとの電極の1つは金属が腐食してやせており、使用できる状態ではありませんでした。そのため、燐青銅で電極を作成することにしました。
また、この腐食した電極に接続されていた電源配線類も腐食しているので交換しました。
幸い制御基板まで電解液は達しておらず、きれいな状態でした。
電池ホルダーの電極を確認しました。電極を抜こうとしましたら脆く壊れてしまいました。
この電極はネルル用のもので、ましてや負極側でバネの付いているものです。作成するとなるとちょっとうなる所(おもちゃドクターの楽しみ)でしたが、幸いにして献体されているネルルが居てそこから流用することにしました。(ちょいと近道をしました。f(^_^; )
電極を電池ホルダーに組み込みました。
これで、無事にネルルは目覚め、機能的にも動作の確認ができました。
【治療後記】
今後の発病の可能性とすれば、長年眠っていたのでセンサー類は問題ないと思われますが、内部のセンサー類と接続されている配線の断線です。配線の柔軟性が失われていますので断線の可能性は高いと思われます。特におててセンサーに接続されている配線です。使用頻度が高く手や腕をにぎられると配線も屈曲されるからです。
今回の電池の液漏れ病は、電池切れとトップを争う病気です。今回は、4本ある内の1本から液漏れを起こし腐食がここまでひどい状態になっていました。使わなくなりましたら是非電池を抜いて眠らせて上げてください。そうすれば、再び電池をいれれば目を覚まします。
【おまけ】
アルカリ電池の液漏れについてお話しします。
電池の液漏れの原因についてはいくつかあるようですが、おもちゃの場合は電池を入れたままにより微弱でも電流が流れ続けたり、自然放電により過放電になる場合です。
過放電とは、電池が通常放電が終わり(おもちゃが正常動作をしなくなる電圧と考えて良いです。)、更に放電を続けるとなる状態を言います。
このような状態になると、電池内部からガスが発生します。電池は破裂を防止する目的で、電池内部の部品に安全弁を設けています。ガスが発生すると、電池内部の圧力が高くなり、破裂防止のために安全弁が作動し電池内部のガスを電池の外に逃がしますが、その時にガスと一緒に電池内部の電解液が出てきます。これが液もれの原因です。
電池の内部から出てくる液体は、「電解液」と呼ばれるものです。電解液の主成分は水酸化カリウムで、非常に強いアルカリ性です。そのため金属の電極が腐食します。液もれした液が目に入ったり、肌についたりした場合は失明や化学やけどにいたる危険性があります。液もれした液には直接触れないようご注意ください。万が一、身体に液が付着した場合は大量の水で洗い流してください。また、目に入った場合はこすらずに流水で洗い流し、すぐに医師の診断を受けてください。
パナソニックのホームページを引用して掲載しています。くわしくお知りになりたい方は、下記のホームページを参照ください。
液漏れは何故起こるのか? - 乾電池 - Panasonic