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支流からの眺め

死に損ない体験(1)―ヒートショック

 中山美穂さんが急逝された。お悔やみ申し上げたい。諸説あるが、公式の死因はヒートショック(HS)による事故死だ。その後は、HSに関する啓発、浴室温熱機の販促などが目立つ。HSや入浴関連死は年間1-2万人(交通事故死の数倍)という。少し勉強していて、自身の恐怖体験を思い出した。

 HSとは「身体加温による低血圧発作」だ。脱衣場や洗い場が寒いことに注意が行く(確かにそれは重要だ)が、問題の本質は全身を急に加温することだ。これで一気に血管が拡張して血圧が下がり、脳への血流が減ってしまう。最悪には意識を失い、浴槽で溺れてご昇天となるのだ。

 危険因子には、高齢(高齢者が8割)、高血圧や糖尿病(動脈硬化となる)、降圧薬服用(血圧の回復が鈍い)、肥満や不整脈(心臓に余力がない)などがある。生活上で避けるべきは、急な全身の加温、飲酒や飲食後の入浴(夕食前の入浴が望ましい)、疲労(自律神経の失調)などだ。

 仕事で疲れたある日のこと、晩酌と夕食の後に浴室に向い、洗い場は冷えていたので急いで浴槽に入る。するとどうなるか。血圧を上げるホルモンが一気に放出され、次にそれが突然止まる。この乱高下で血圧は急降下だ。特に飲酒後は、アルコールが意識レベルを下げて事故の危険が高まる。

 その思い出は筆者が五十代の2月某日、場所は中国の高地だ。祝宴は大いに盛り上がり、茅台(マオタイ)酒を何瓶も空けた。会場からホテルまでは、酔い覚ましにと10分ほど歩いて戻った。ホテルに着く頃にはすっかり体は冷えてしまい、部屋に入るなりシャワールームに直行した。

 バスタブに横になり、暖かいお湯に身を浸す。あー有難いなぁと目を閉じてほっこりしているうちに気を失ったのか・・・ふと気づいて目を開けると、なぜか海の底から空を見上げるような光景で、水面を照らす光が波打っている。ハッと気づいてお湯をかき分けて体を起こし、浴槽から這い出した。

 典型的なHSだ。同室者はなく、翌日浴槽内で全裸の姿で発見されることになったかもしれない。酔っぱらっての客死など、不名誉かつ迷惑この上ない。今思い出してもゾッとする。そう言えば、他にも死にかけたことがある。運命の日が来る前に、その体験も語っておくべきかも・・。(続く)

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