見出し画像

支流からの眺め

WBC優勝、おめでとう

 World Baseball Classic(WBC)での日本優勝は、久しぶりに国民の誰もが喜べる明るいニュースであった。著者自身は、野球をプレイしたことがほとんどなく、スポーツ一般に興味があるわけでもなく、WBCの試合もテレビ中継を時に覗く程度でしかなく、周りにはしゃぐ人もいない環境にある。つまり、野球解説どころか野球談議をする資格もなく、解説者の弁もうるさく思う程度の者である。それでも、今回の勝利には感動した。

 予選リーグは、いわゆる格下の相手であり、危な気なく順調に勝ち進んだ。しかし、準決勝のメキシコ戦は容易ではなかった。たまたま3月21日が祝日で、試合を最後まで生中継で見ることができた。「先行され、追いついては再び引き離され」を繰り返した。相手選手の運動能力にも目を見張るものがあった。惜しくも勝てないという顛末となりそうな雰囲気の中、日本はしつこく食い下がり、9回裏の劇的なサヨナラ勝ちとなった。

 決勝戦は翌日で、時差ボケもまだ残る日程で、中休みなしの試合となった。相手は本場の米国チームで、単純に体格を比較すれば、かないそうもなかった。案の定、準決勝と同じように先行された。しかし、追いついて逆転し、終盤であわやと思われる追撃を受けるも、それを振り切って優勝を獲得した。勝利の主因は、要は優秀な選手が多数揃っていたことであろう。そのなかで、筆者の印象に残ったことは、3つあった。

 まずは、選手の資質であった。打者はファールでしつこく食い下がり、多数の四球を選びとった。その中で、唐突な初球打ちで長打を繰り出した。相手投手の神経はひどく逆なでされたであろう。豊富な投手陣は若々しく、小さめの体格をものともせず、速球をきめ細かく選球して投げ続けた。これらは、日本の野球選手層の厚さと技術の高さを示すものであろう。丁度高校野球も開催されていたが、高校球児の夢がWBCを支えている。

 次いで、選手の闘志であった。参加する以上は優勝を目指すのは当然としても、実際の戦いの場で日本選手全員にその気迫を感じた。とりわけメキシコ戦では、土壇場に追い込まれた9回裏で、大谷がいきなり初球を叩き二塁打とした。その走塁中にヘルメットを投げ捨て、二塁ベースから雄叫びを挙げて選手全員の士気を鼓舞した。これが、不振であった村上のサヨナラ打につながったことは、(証明しようもないが)間違いない。

 最後は、運の力であった。勝負は非情である。負ければ、「何々だから、負けたんだ」と講釈される。反省は必要だろうが、悪者探しで陰謀論までが出てくる。その一方勝てば、「何々だけど、結果的にはよかった」となる。準決勝の土壇場で、不調の村上にバントさせても不正解とも思えないところ、監督は打って来いと背中を押したらしい。勝機を感じたのか?それこそが運が巡ってきたということであろう。

 この展開は日露戦争の対馬沖海戦を想起させる。東郷の采配は定石を破るもので、一歩誤れば日本軍の惨敗となる可能性があった。しかし、結果は大勝利で、海戦史上に残る果敢な作戦と評価される。作戦はいくらでもあったろうが、それらを熟慮していては決行できなかった。東郷が幸運児とされる所以である。ただ、日露戦争後に日本への風向きが変わった。戦勝気分に水を差す気は毛頭ないが、今こそ反感を買わない周囲への心配りが重要なのであろう。


ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

コメント一覧

dankainogenki
おめでとうございます。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「世情の評論」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事