中国「戦後賠償の請求権放棄、民間は含まず」 新華社が論評
日本経済新聞2014/4/24 20:01
【北京=島田学】中国の国営新華社は24日までに、中国政府が1972年の日中共同声明で放棄した戦争賠償の請求について「民間・個人の請求権は含まない」と明言する論評記事を配信した。これまで個人請求権の問題に曖昧な立場を示してきた政府の方針転換を公に示したものだ。今後、中国で戦時中の強制連行などを巡り日本企業への民間の提訴が続けば、日本企業への賠償命令や中国国内での資産差し押さえが相次ぐ恐れもある。
ただ、商船三井の輸送船が中国当局に差し押さえられた問題は、中国側は「日中戦争の賠償問題とは無関係な事例」と主張する。賠償請求の対象が日中戦争前の船舶賃貸契約だからとみられる。
中国外務省の秦剛報道局長は24日の記者会見で、商船三井が差し押さえ解除のために約40億円の供託金を支払ったことについて「中国の裁判所は法に基づいて裁決し、商船三井も法に基づき金を支払った」と強調。中国側は一般の商業契約をめぐる民事訴訟として対応していると主張した。
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天津でも戦争賠償訴訟 反日団体準備 最高額400億円か 被告は未定
MSN産経ニュース 2014.4.24 09:26
「商船三井」所有の貨物船が差し押さえられた中国で、第二次大戦中の「戦争賠償」を日本側に新たに求める動きが進んでいる。米国では「慰安婦」問題で中国と韓国の共闘が続き、「歴史」で日本を追い込もうとする意図が明確になっている。
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【北京=矢板明夫】中国上海の裁判所が1930年代の船舶賃貸をめぐり、商船三井が所有する貨物船を差し押さえたことが日中両国で大きな波紋を広げる中、天津市でも同じように戦時中に日本に徴用された船舶を所有していた企業家の関係者が、対日訴訟を準備していることが分かった。複数の関係者が明らかにした。損害賠償総額は400億円を上回るとみられ、戦争賠償をめぐる一連の訴訟で最高額となるのは確実だ。
訴訟を支援する反日団体の関係者らによると、天津市の裁判所に提訴を準備しているのは、30年代に天津で海運会社「北方航業」を経営した企業家、陳世如氏の親族。
同社が所有する4隻の船舶が日中戦争中に日本海軍などに徴用されたが、45年の終戦までに3隻が沈没し、1隻が行方不明となった。
関係者の試算によれば、「北方航業」の損失は約25億元(約425億円)と主張する。
支援者や弁護士と相談しながら現在は訴状を作成しているところで、損害賠償の金額はまだ固まっていないとされるものの、25億元に近い金額になる可能性が大きいという。
被告については、当時の日本の船舶会社、もしくはその流れをくむ会社が存続しているか不明なため、日本政府を相手取ることも検討しているという。
その一方で関係者は、これは戦争賠償訴訟ではなく、一般の民事事件と位置づけようとしている。
日中両国政府が72年に合意した「日中共同声明」では、中国の「戦争賠償の放棄」が明記されているため、「一般の民事事件」として提訴すれば、裁判所に受理されやすいと関係者らは考えているようだ。
対日強硬派の習近平国家主席は安倍晋三政権に圧力をかけるために、中国人元労働者による「強制連行」訴訟など、一連の対日訴訟を暗に支持しているといわれている。
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「和解妨げず」政府及び腰 戦争賠償訴訟
MSN産経ニュース 2014.4.24 09:20
菅義偉官房長官は23日の記者会見で、日中戦争当時の船舶賃貸契約をめぐる新たな賠償訴訟が中国で準備されていることについて、「日中共同声明はお互いの国が正式に署名をしたものだ。それがすべてだと思う」と述べた。
日中戦争当時の賠償請求権放棄を盛り込んだ共同声明の精神に反するとして不快感を示したものの、突如としてわいた中国リスクに振り回されているのが現実だ。政府は船舶差し押さえについて外交ルートを通じて中国側に遺憾の意を伝達している。にもかかわらず上海海事法院による商船三井の船舶差し押さえに至った訴訟を支援している反日団体が23日、天津市でも同様の提訴をする準備を進めていることを明言したことに困惑を隠しきれない。
ただ、外務省は23日も、今後の裁判対応について「戦後補償に含まれるかどうか白黒をはっきりさせることは難しい。最終的に和解を目指すという方向を政府が妨げるものではない」(幹部)と静観の構えを崩していない。22日に開かれた自民党外交部会でも議員から「和解交渉はあしき前例となりかねない」と批判の声が上がったが、外務省側は「(船舶差し押さえは)日中共同声明への明白な違反とまでは言えない」と終始及び腰だった。
商船三井が船舶差し押さえに屈して和解金の支払いに応じたとみられることで、天津市にとどまらず同様の訴訟が中国で乱発される可能性がある。政府は今後も対応に苦慮しそうだ。
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日本の企業がなす術は無い、
国が守ってくれないから愛国心も生まれない
日本政府は日中国交正常化をうたった1972年9月の共同声明は、「中国政府は日本国に対する戦争賠償の請求を放棄する」と規定しているので個人の請求権を含めて存在しないとの立場をとっている。国際司法裁判所(ICJ)に案件を持ち込み、日中共同声明の「戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」という文言の解釈を争うことになる。
習近平指導部は、日本潰しに動いているので司法当局が日本側に不利な判決を下すことを止めない姿勢に転じているので、国際司法裁判所での紛争解決に同意することはなさそうである。
外国で賠償支払いを命じる判決が確定した場合、日本の企業が判決を覆すためにできることはほとんどないといわれる。どの国でも確定判決を執行するために、自国内にある相手企業の資産を差し押さえることは通常の手続きだからだ。
外国で賠償支払いを命じる判決が確定した場合、日本企業ががとりうる対応は
・賠償金を支払って差し押さえを解除してもらう
・差し押さえられた資産(船舶)を放棄する
・和解交渉を続ける――のいずれかになりそうだ。
中国でも有名な「三井」「三菱」系企業が標的になっており、日本企業全体のイメージダウンにつながる。長期的には日本製品全般がボイコット、日本企業の締め出し、それを避けるためには中国側の言い分に従うという事態に追い込まれそうだ。中国へ進出した企業は、中国に残るのも出るのも地獄である。中国はうまくやったと韓国はほくそ笑んでいるであろう。
競争に徹すれば、負けたときにはすべてが失われる、安全第一に生きるのなら、狭いながらも楽しいわが家で、出世はあきらめなくてはならない。しかし、人間のもつこの2つの願望、上昇志向と安全志向をともに満たしてくれる場があったとすれば、こんな素晴らしいことはない。
欧米では、国民の安全は国家が守る。その中で国民一人一人は腕をふるって上昇志向を満足させる。この分業体制が実にはっきりしている。国民が縛られるのは、投票によって自分たちがつくった国家だけだ。あとは自由にとびまわり、能力を認めてくれるのなら、他の会社に移るのはかまわない。
日本ではどうか。たとえば海外活躍している日本企業の社員がゲリラに襲われたり誘拐された場合、政府は何等救出行動が出来ない。政府は外国に解放してもらうよう働きかけるのが関の山、所属の企業が身代金を払って釈放してもらうケースばかりである。
釈放された者は記者会見でこう言う。「怖かったし不宏だった。しかし、会杜が必ずなんとかしてくれるとおもい、それだけを心の支えとして生き抜いてきた」と。政治・政府への信頼感はゼロに等しい。欧米のように、国に頼っていれば国民の安全は大丈夫だという状況にはない。政府が頼りにならないのである。
日本人にとって、上昇志向と安全志向を満足させてくれるのが、会社である。生活が保証され、身が安全であるという実感は企業が提供する。だから、愛国心はなくても愛社心は生まれる。愛国心は育たない、国防・安全保障に対する関心も低調である。
日本は腹を立てていいころだ
1980年代に始まった日米構造協議以来、アメリカは日本に市場の開放を迫ってきた。1993(平成5年)7月の宮澤首相とクリントン大統領との会談で決まったとされる「日米規制改革及び競争政策イニシアチブに基づく要望書」(年次改革要望書)で毎年、「白由貿易の死守」というアメリカの理念に反するにもかかわらず、アメリカは日本にこの理不尽な要求を呑ませ続けてきた。
TPP交渉でもアメリカは日本に無理難題を突きつけている。おそらく日本は決裂を覚悟しない限り譲歩を強いられる。日本が自由貿易を守るため、新たなルールを作るため自ら率先して譲歩するならまだしも、アメリカのゴリ押しに屈しては世界の笑い者になりかねない。尖閣諸島を守ってもらうから、アメリカに譲歩しつづけなければならないのか。舐められてはならない。侮られてはならない。
マキャベリは「国家にとって厳に警戒しなければならぬことは、軽蔑されたり、見くびられたりすることである」といった。慈悲深い仏さまでも、何度でも顔をなでられたら腹を立てるという。
日本ではどの親もわが子に「世間の笑いものになるな」と教えているはずなのに、国となると当てはまらない。「恥を知る」ことが忘れ去られている。世界の笑いものになるまいという「気概」が無い。これでは、まともな外交は期待できない。中国になめられ、アメリカにもなめられる。そろそろ日本も腹を立てていい頃である。それは相手に対してというよりも、自らのふがいなさに対してである。