先般、台湾の船舶が尖閣諸島周辺の領海を侵犯した。その背景と今後の日米関係を考えてみる。
尖閣諸島に対する日米安保条約の適用についてのアメリカの方針の変転
中国・台湾による領海侵犯事件は、日米、中国・台湾の主な動きを振り返ると日米安保条約が尖閣諸島に適用されるかどうかに関するアメリカの方針転換が背景にあることが分かる。アメリカの尖閣諸島防衛についての主な動きを列挙する。
・1993年から1996年まで駐日大使を務めた民主党のウオルター・モンデールは、「(中華人民共和国との)尖閣諸島の帰属に関する実力行使を伴う国際紛争の場合、日米安保は発動しない」と発言し石原慎太郎などから批判され帰国後に退任した。 民主党は戦前から親中で、その本音が出ただけだ。2008年8月20日、大統領選挙民主党候補バラック・オバマの対日政策顧問グループに名誉会長として参加した。オバマ政権の対日政策の顧問だ。
・2004年(平成16年)3月、アメリカ国務省・エレリ副報道官は、「尖閣諸島は日本国政府の統治下にあり、日米安保条約が適用される」とメディアとの会見で表明した。このときアメリカは、共和党政権であった。
・2008年6月13日、台湾・国民党政府の劉兆玄行政院長(首相)が、日本との領有権での争いには、解決の最終手段として「開戦の可能性を排除しない」と立法院で答弁した。台湾は、大陸側への傾斜が強い国民党政権になって一段と強行になった。
・2009年2月16日、中共海洋気象局は、2008年12月に海洋調査船を諸島沖の日本領海へ侵入させたことについて「(この海域が)中国の主権であることを実際の行動で立場を示した」と北京市内の会議中に発表した。
・2009年2月28日、アメリカ国防総省のセドニー次官補代理が訪問中の北京で「尖閣諸島の最終的な主権問題について、米国はいかなる立場も執らない」と述べ、日米安保の適用内とした2004年3月のエレリ会見を踏襲せず、中立の立場へと方針転換した。
民主党政権は、第二次世界大戦では米中同盟として日本と戦った。もともと共和党より反日親中の性格が強い。
・2009年3月5日、河村建夫官房長官は、尖閣諸島が侵略・攻撃を受けた際に日米安保が適用されるかについて「アメリカの見解は従来のものであることを(アメリカ側に)確認を得た」と言及。沖縄返還の一環とされた同諸島は日本の施政下にあり、日米安保第5条に適用される見解を強調した。
日本側が、安保条約の適用をアメリカ政府に確認したことに対抗し、麻生首相の鳩山総務相更迭に伴い支持率は20%程度に低下、政界のごたごた、国民に不満充満、国の危機管理機能低下に乗じて領海侵犯したものと推定される。今般の台湾船舶による領海侵犯は、日米安保条約の効力をテスト、または無効化を意図したものだろう。
アメリカの安保条約に関する方針転換が領海侵犯の背景にあることが分かる。
日米安保条約は永遠ではない
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(日米安保条約、昭和35年6月23日)の第十条の条文は下記のとおり。通告するだけで日米安保解消である。
「この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府およびアメリカ合衆国政府が認めるときまで効力を有する。
もっとも、この条約が10年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行われた後1年で終了する。」
片方の国が、破棄を通告すれば、通告後1年で失効する。“日米の離婚”は、夫婦の離婚より簡単だ。”離婚届け”に相互の了解のハンコは要らない。通告するだけで離婚だ。
“日本を守る核”など存在しない、
アメリカの“核”作戦に関与できない
アジアにおける米国の同盟国は、NATO諸国と同じようには核計画策定に組み込まれておらず、運搬手段システムへのコミットメントをするように求められてはいない。NATOに加盟しているドイツ、イタリアなどは、アメリカが保有している核兵器を自国の航空機などに搭載して作戦に使用することが出来る。
しかしながら、日本や韓国はNATO加盟国と同じような扱いを受けていない。アジアでは、中国、ロシアなどの核の脅威に対する抑止機能は、ロサンジェルス級攻撃潜水艦の巡航核ミサイル、トマホーク陸地攻撃ミサイル/核である。この核兵器は、これを維持する措置が講じられなければ2013年に退役となる予定である。グアム島の倉庫で保管だろう。
脅威の対象が中露よりも地球規模のテロに換わり、アメリカ海軍の潜水艦はトマホーク陸地攻撃ミサイル/核から巡航ミサイルへ換装しつつある。
換言すれば、核の脅威から日本を守る核兵器は無いに等しい。日本がアメリカの核作戦に関与することも出来ない。文書の約束や声明は、利害関係が一致しているときは有効だろうが、利害が対立すれば破棄か無視される。全幅の信頼はできない。外交におけるアメリカのリップサービスに惑わされてはならない。
アメリカは利用価値がなくなれば
“それではサヨウナラ!”の国だ!
利用価値がなくなったら切り捨てられた国がある。最近、金融危機で国が破綻したアイスランドだ。人口約32万人、軍隊がない四国と北海道を合わせた面積の島国だ。 第二次世界大戦中はドイツ軍の占領を恐れた米英軍が守った。戦後の東西冷戦期は、ワシントンとモスクワを結ぶ線の中間に位置していたので戦略的価値がありアメリカ軍が駐留した。 東西冷戦が終結するやアメリカ軍が撤退しようとしたので、アイスランドは駐留経費を負担するので撤退しないで欲しいとアメリカに申し出たが、2006年9月アメリカ軍は撤退した。
アメリカは自らの戦略遂行に必要なときは駐留したが、利用価値がなくなったため“はいそれまでよ”と撤退したのだ。アイスランドの要求は聞き入れられなかった。他山の石だ!
日米安保は“永遠”、それは幻想だ!
アメリカは、日本の面倒を中国に任せ、アジア、もちろん日本からも手を引きたがっている。現に、米軍の世界規模の再編という形をとりながら叙々に手を引いている。日米安保条約が永遠に続く保証はない。
惰性で衰退と没落にまかせるならば、子孫は、“日本人らしい生活ができた昔はうらやましい。今は(中国人または朝鮮人と同じような生活やしきたりを守らないと)生活しにくい世の中だ。”と孫やその子が嘆く世の中にならないとも限らない。
旧来の考え方に安住している政治家はもとより、日本国民全体が目を覚ます時期に来ているのだ。日本は、国のあるべき姿や国際社会のなかでの生き方を、憲法、日米関係などすべてを白紙に戻して考え直すべき時期に来ているのだ。民主党も小沢一郎も好きではないが、彼の”第7艦隊”発言は、間違いではない。
核兵器を持った周辺国家の中で、どのような生き方をするのかであるい。国際社会で名誉ある国家として生きるのか、反対に生命の保証はあるが、今以上に他国に隷属し屈辱に耐えながら生きるかである。その選択の時期が来たのだ。
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