8月31日に金融庁から令和5年度税制改正要望が公表され、NISAの抜本的拡充策が明らかになりました。要望では、「簡素で分かりやすく、使い勝手のよい制度」ということが掲げられています。具体的には制度の恒久化、非課税保有期間の無期限化、年間投資枠の拡大、非課税限度額の拡大が盛り込まれています。
しかし、これで本当に「貯蓄から投資へ」は進むのでしょうか?
◆株式投資で損をした場合の税制の充実が必要
岸田内閣が成立するはるか以前から「貯蓄から投資へ!」と政府は叫んでいますが、あまりそれが進んでいません。それは、国民は株式投資で「損をしたくない」からです。
株式投資を経験した人であれば、株価なんてあっという間に買ったときの半分になるのを知っています。「半値になるから倍にもなる。そして最後は10倍になる」、この域に達するにはそれを裏付ける成功体験と確かな知識(まぐれで儲けたのではない)、さらに資金的な余裕が必要です。
多くの人は保有株の急落に驚いて投げるように売ってしまい、「もう二度と株は買わない!」となって株式市場から去っていきます。「貯蓄から投資へ」を実現するにはこの「悪循環」を断ち切らなければなりません。
◆譲渡損失の繰越期間を延ばす
現行の税制では、特定の年度で生じた株式投資の損失を繰越して、翌年度以降3年間の利益から差し引くことができます。この期間をもっと延長するべきです。株式市場というのはひとたび低迷すると相当長期化することが常です。これは、我が国のバブル崩壊後の「失われた?年」などからして明らかなことです。損失の繰越期間は10年どころか「生涯」にしてもいいと思います。
◆税率の累進化(総合課税にする)
なけなしの(少額な)資金で株式投資をしている人もいます。「貯蓄から投資へ」という国策においてはこのような人を大切にしなければなりません。現状の株式譲渡益に対する税率、所得税15%(さらに復興特別所得税が2.1%上乗せされる)、住民税5%は明らかに高すぎます。
譲渡益や配当に対する税率は累進化すべきです。それには、譲渡益を総合課税(累進税率)に含めることも一法です。
◆必要経費を認める(一定額は非課税とする)
株式投資に成功するには継続的な情報収集が欠かせません。これには相応の労力を要しますのでこれに関するコストを必要経費として認めるべきです。ただし、この「実額」を把握するのは容易でありませんので、一定額を譲渡益あるいは配当から控除する、つまり一定額を非課税にすることが必要です。
◆確定申告を不要とする仕組み(原則として1人で1口座)
上記のような制度を適用するには、自身で複雑な確定申告をしなければなりません。そこで、ITを駆使して、証券会社のシステムで税額を確定できる仕組みを確立すべきです。そのためには、証券口座は1人で1口座でなければなりません。
それならばNISAと同じかもしれませんが、NISAは「どんぶり勘定」的であることを否定できません。一定額、一定期間が「税とは無縁の世界」です。確かな計算の基づく税額のほうが国民は納得できるのではないでしょうか。
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★株式投資はギャンブルではない
資本主義社会においては「株式会社」が大部分の商品やサービスを供給しています。株式はこの株式会社への資金提供であり株価はその出資価値(企業価値)です。株価が低迷すればこの出資の価値も下がり株式会社の資金調達力も低下します。株式会社の活力を維持向上させるために株式投資が欠かせないのです。「貯蓄から投資へ」を推し進めるにはこの点を国民に認識させる必要があります。
株式投資で儲けた人のことを、「楽して儲けやがった」とか「たっぷり税金を払わせろ」とかいって批判する風潮を一掃しなければなりません。株式投資は、資本主義社会を維持発展するための「勇気ある行動」なのです。(ただし、短期間の投機的売買はそうではないと思います。さらに、インサイダー取引など不正な取引は論外であることはいうまでもありません。)
★海外に資金が流れるようでは・・・
昨今、若年層の一定割合では株式投資が定着してきています。しかし、投資の主流は米国株を中心とした外国株式に投資する投資信託です。これでも資産形成という点においてはいいのですが(売却益や配当で増えた資産が国内の消費に回る)、「貯蓄から投資へ」を推進するにあたっては国内産業の発展という点も重視しなければならないと思います。海外に資金が流出すると国内企業の株価が低迷し、外資による買収の標的とされてしまいます。
★今の仕事に将来性がないので株を買う・・・
これも何とかしなければなりません。誰もが株式投資で生計を立てることはできません。株式投資は経済の一機能です。日本経済全体が発展する政策を期待したいです。
【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。
しかし、これで本当に「貯蓄から投資へ」は進むのでしょうか?
◆株式投資で損をした場合の税制の充実が必要
岸田内閣が成立するはるか以前から「貯蓄から投資へ!」と政府は叫んでいますが、あまりそれが進んでいません。それは、国民は株式投資で「損をしたくない」からです。
株式投資を経験した人であれば、株価なんてあっという間に買ったときの半分になるのを知っています。「半値になるから倍にもなる。そして最後は10倍になる」、この域に達するにはそれを裏付ける成功体験と確かな知識(まぐれで儲けたのではない)、さらに資金的な余裕が必要です。
多くの人は保有株の急落に驚いて投げるように売ってしまい、「もう二度と株は買わない!」となって株式市場から去っていきます。「貯蓄から投資へ」を実現するにはこの「悪循環」を断ち切らなければなりません。
◆譲渡損失の繰越期間を延ばす
現行の税制では、特定の年度で生じた株式投資の損失を繰越して、翌年度以降3年間の利益から差し引くことができます。この期間をもっと延長するべきです。株式市場というのはひとたび低迷すると相当長期化することが常です。これは、我が国のバブル崩壊後の「失われた?年」などからして明らかなことです。損失の繰越期間は10年どころか「生涯」にしてもいいと思います。
◆税率の累進化(総合課税にする)
なけなしの(少額な)資金で株式投資をしている人もいます。「貯蓄から投資へ」という国策においてはこのような人を大切にしなければなりません。現状の株式譲渡益に対する税率、所得税15%(さらに復興特別所得税が2.1%上乗せされる)、住民税5%は明らかに高すぎます。
譲渡益や配当に対する税率は累進化すべきです。それには、譲渡益を総合課税(累進税率)に含めることも一法です。
◆必要経費を認める(一定額は非課税とする)
株式投資に成功するには継続的な情報収集が欠かせません。これには相応の労力を要しますのでこれに関するコストを必要経費として認めるべきです。ただし、この「実額」を把握するのは容易でありませんので、一定額を譲渡益あるいは配当から控除する、つまり一定額を非課税にすることが必要です。
◆確定申告を不要とする仕組み(原則として1人で1口座)
上記のような制度を適用するには、自身で複雑な確定申告をしなければなりません。そこで、ITを駆使して、証券会社のシステムで税額を確定できる仕組みを確立すべきです。そのためには、証券口座は1人で1口座でなければなりません。
それならばNISAと同じかもしれませんが、NISAは「どんぶり勘定」的であることを否定できません。一定額、一定期間が「税とは無縁の世界」です。確かな計算の基づく税額のほうが国民は納得できるのではないでしょうか。
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★株式投資はギャンブルではない
資本主義社会においては「株式会社」が大部分の商品やサービスを供給しています。株式はこの株式会社への資金提供であり株価はその出資価値(企業価値)です。株価が低迷すればこの出資の価値も下がり株式会社の資金調達力も低下します。株式会社の活力を維持向上させるために株式投資が欠かせないのです。「貯蓄から投資へ」を推し進めるにはこの点を国民に認識させる必要があります。
株式投資で儲けた人のことを、「楽して儲けやがった」とか「たっぷり税金を払わせろ」とかいって批判する風潮を一掃しなければなりません。株式投資は、資本主義社会を維持発展するための「勇気ある行動」なのです。(ただし、短期間の投機的売買はそうではないと思います。さらに、インサイダー取引など不正な取引は論外であることはいうまでもありません。)
★海外に資金が流れるようでは・・・
昨今、若年層の一定割合では株式投資が定着してきています。しかし、投資の主流は米国株を中心とした外国株式に投資する投資信託です。これでも資産形成という点においてはいいのですが(売却益や配当で増えた資産が国内の消費に回る)、「貯蓄から投資へ」を推進するにあたっては国内産業の発展という点も重視しなければならないと思います。海外に資金が流出すると国内企業の株価が低迷し、外資による買収の標的とされてしまいます。
★今の仕事に将来性がないので株を買う・・・
これも何とかしなければなりません。誰もが株式投資で生計を立てることはできません。株式投資は経済の一機能です。日本経済全体が発展する政策を期待したいです。
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