【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
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社長貸付金(発生原因を絶ち、善後策を講じる)

2020-01-14 18:00:00 | 経理業務(帳簿の作成)
社長貸付金(役員貸付金)に関しては、その発生原因を知り、それを根本から絶ち社長貸付金が生じないようにしなければなりません。それでも、社長貸付金が生じてしまったならば善後策を講じる必要があります。

◆社長貸付金を何に使ったかは明かす必要はありません

社長貸付金の話になると激高する社長がいます。無理もないと思います。しかし、社長貸付金として会社から引き出した資金を何に使ったかは、金融機関にも税務署にも、当然、経理担当者や会計事務所(公認会計士、税理士)にも明かす必要はありません。

社長貸付金に関して大切なことは、社長貸付金であることを認め、しかるべき経理処理をすることです。

◆役員報酬を定期的に支給していますか(役員報酬の金額を知っていますか)?

社長貸付金が発生する原因の第1位は、「役員報酬を定期的に支給していない」です。役員報酬を定期的に支給していないと、どれだけ会社からお金を引き出したかがわからず、つい限度額をオーバーしてしまうのです。「役員報酬の金額を知らない(税理士が決めると思っている)」「役員報酬が低すぎる」が原因であることも多いです。

会社形態で事業をしている場合には、役員報酬の金額(正しくはそこから税や社会保険料を控除した額)しか会社から引き出すことはできません。それ以外に引き出した場合には、それは役員報酬でもその他の費用でもなく社長貸付金なのです。

◆資本金の返金

資本金は金額が大きいほど体裁がいいので、会社設立時にはできるだけ多くの出資をして、設立後にその資金を社長に「返金」することがあります(中小零細企業では社長が株主であることが通常です)。これは社長貸付金です。出資された資金は会社経営のために使わなければなりません。出資者に返金してはいけないのです。それは、返金ではなく貸付です。

◆経理担当者や会計事務所に手当り次第領収書を渡していませんか?

「節税をしたい」「邪魔くさい」「判断は任せる」ということで、「あらゆる領収書を」手当り次第、会社の経費になるかを考えずに経理担当者や会計事務所(税理士)に投げつけている場合、その一部が社長貸付金と処理されてしまいます。

◆私生活の出費があまりにも多い

「投資をしている」「贅沢な趣味がある」「子供の教育費が大きい」「慰謝料や損害賠償金を要求されている」「治療費が必要」など、役員報酬だけでは到底足りない私生活の出費があり、それを会社から役員報酬以外に引き出している場合には社長貸付金が生じます。「会社の定期預金を解約して」「会社で借りて」となるのです。

この場合の社長貸付金は高額になることが多いです。また、「お気の毒」な理由であることもあります。しかし、「会社→社長」と役員報酬以外の現金が移動しているのは事実ですので、そこには所定の経理処理が必要となるのです。

◆社長貸付金を返済できる場合

社長貸付金を返済できる場合にはできるだけ早く返済することです。また、金利も社長から会社に支払います。社長貸付金が着々と減り続けていれば税務署や金融機関の印象も違ってきます。

◆社長貸付金を返済できない場合

社長貸付金の返済ができない場合には、社長から会社に金利だけでも払うことです。それも無理な場合には、会社側で利息の未収計上をしておきます。

このような場合の社長貸付金は、会社を清算するまでは消えません。清算すると会社も消えますので、結局は消えないということです。社長が退職して、その退職金と相殺するという方法もありますが、この場合も結局は会社を清算することになりますので同じです。

社長貸付金というのは、会社が存在する限りは決算書(貸借対照表)に表示される「傷」、「汚点」なのです。これほど厄介なものはありません。

社長貸付金は会社経営の「禁じ手」であると肝に銘じなければなりません。

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★社長貸付金は短期(流動資産)か長期(固定資産)か
社長貸付金については流動と固定の区分という問題があります。社長貸付金の金額が比較的少なく、変動が激しい場合には、仮払金と同じく短期貸付金として流動資産の部に表示します。一方、貸し付けたままで、一向に返済がない場合には長期貸付金として固定資産に計上します。

★社長貸付金利息は雑収入で計上するのが無難
預金利息も社長貸付金利息も受け取った利息であることは同じですが、社長貸付金利息は雑収入に計上するのが無難です。社長貸付金を受取利息に計上すると、預金残高に対して受取利息が異常に多いように誤解される恐れがあるからです。

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