宇宙時間 ソラノトキ

風樹晶・かざきしょう

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リーフ 43

2008-10-20 21:47:47 | 小説 リーフ
 だれ?
 レムは、その人物を見て足を止めた。
 カルの前にいるのは、一人の少年。多分、レムたちよりもすこし年上くらいだろう。その割りに、妙に大人びているようではあるが・・・。
「待ってたよ、カル」
 へ? カルの知り合い?
 レムは、ちら と、カルの顔に視線を送ったものの、何の反応もない。彼の方はといえば、困ったような顔で笑みを浮かべている。
「これ、覚えてない?」
 彼は、カルの手の前で握っていた手を広げた。そこにあるのは、青い紐の付いた緑色の丸い石。
 それを見たカルが、目を大きく見開く。
「香珠・こうじゅ?」
「そう」
 彼が、頷く。
 コウジュって・・・・でも、それって、確かカルが探してた・・・・。まさかあの紐の付いた緑色のちっこいのが、そうなの? それに、どうして、彼が持ってるの?
 レムが問う暇もなく、彼は手のひらを傾ける。と、緑色のそれは、一瞬彼の指に引っかかり、ぽとり と、草の中に落ちた。
 「まさか、こんなに待つ事になるとは、思わなかったよ。結構、長いものだね一年っていう時間は」
 言いながら、一歩二歩・・・・、カルを誘うように彼が後ずさる。そして、草の上に落ちた石を指差した。
「自分で、取り戻してごらん。それも出来ないようなら、君を香珠の玉主とは、認めない」
 ???? 何なの? コウジュって、ギョクシュって、言ってる意味が分からない。
 頭を混乱させながらレムが、カルに視線を走らせる。と、カルはレムに背を向けたまま、彼にというか地面に落ちた石に向かって、ゆっくりと歩き出していた。
 それを見た彼の表情が変わる。
 ゆらり と、彼の周りの空気が変化し、それを見たレムが叫んだ。
「カル、避けてっ」
 その声にカルが横に飛ぶ。その途端、カルのいた場所で、土砂が吹き上がった。
「うわっ?」
 駆け出そうとしたレムの周り、半径一メートルほどの地面がいきなり浮き上がったのだ。足元をすくわれ尻餅をついた状態で辺りを見回すと。
 こ、これは、何事?
 レムは、土で出来た円盤のようなものに乗せられ、二人を見下ろす上空に浮いていたのだ。
 イッタイアタシノミニナニガオコッタノダロウ?
 あまりの出来事にしばらく頭の中が白紙状態になっていたレムが、気を取り直すと、二人の間でなにやら会話が交わされていたらしく、彼がカルに花もほころぶような綺麗な笑みを向けた。
 イッタイカレハナニモノナンダ?
「では、香珠の香縷・カル殿。正式にお手合わせ願います」
 とても、お手柔らかに。なんて茶化せる雰囲気ではない。
 彼の台詞にカルの視線は、無言のままレムと彼そして、石の間を行って来て戻って・・・・。
 そして、意を決したように、胸の前で両手をあわせ、ぺこり と、頭を下げた。
 かれも、それに合わせるように、片手を顔の前に上げ、頭を下げる。
 それを境に二人の空気が変わった。

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