レムが振り返ると、彼の周りに土と砂と小石が漂っていた。それが、ゆっくりと渦を巻き始める。その渦がひとつの方向に集中し始めた。
ふわり と、カルの髪が広がる。
風が 吹いた。
はじめはゆったりと。段々、早く強く激しく・・・・。それは、カルを中心に渦巻いた。
二つの渦に挟まれて、レムの座っていた皿がくらり と、揺れる。
カルから生まれた轟風は、皿ごとレムを吹き飛ばし、地面の小石や土砂、丸太までも吹き飛ばし、小さな竜巻のようにしばらく荒れ狂った後、唐突に止んだ。
吹き飛ばされた皿は地面に落ちて割れ、そこに乗っていたレムは、跳ね飛ばされて地面を転がり、そばにあった岩に当たって止まった。
背中をしたたかぶつけ、やっとの事で顔を上げたレムが見たものは、仁王立ちになった彼と香珠を握り締め地面に座り込んでいるカルだった。
しばらくして、顔を上げたカルの口から言葉が漏れた。
「来鬼・ライキ?」
「 そう 」
カルにライキと呼ばれた彼は、笑って剣を鞘に収めた。
「思い出した?」
彼が座り込んだカルに歩み寄って、手を差し出す。
ひとつ頷いて、カルがその手を掴んで立ち上がる。
「おいで、帰ろう」
そう言った彼にカルが頷き、そのカルの背に彼の手が伸ばされた。
え? え? え? え? え? え? え? 何なの、一体?
まだ痛む背中をさすりながら、立ち上がったレムが見たものは、ゆっくりと霞のように消えていく二人の姿だった。
ゆっくりと、色が薄くなり、幽霊のように二人の向こうの景色が透けて見える。
「・・・・・カルっ」
思いっきり切羽詰ったようなレムの声に、カルが振り向いた。
薄くなる姿のまま、カルの口が動くのが見える。が、声はまったく聞き取れず、結局、そのまま消えていってしまった。
「コウジュのカル。本当にカルが香樹の香縷だとしたら、間違いなく、風の精霊玉の主でしょうね」
館に帰ったレムの話を聞いて、館の主人・マリーヌは、ためらう事無くそう言った。
精霊玉。確か伝説に登場する“精霊の力を秘めたもの”であり“自ら持ち主を選ぶもの”で、だけど、それは、世界に“天”“星”“火”“雷”“風”“水”“時”“土”“地”の九つしか存在しないと言われている。
その一つ、風の精霊玉の主がカル?
ふわり と、カルの髪が広がる。
風が 吹いた。
はじめはゆったりと。段々、早く強く激しく・・・・。それは、カルを中心に渦巻いた。
二つの渦に挟まれて、レムの座っていた皿がくらり と、揺れる。
カルから生まれた轟風は、皿ごとレムを吹き飛ばし、地面の小石や土砂、丸太までも吹き飛ばし、小さな竜巻のようにしばらく荒れ狂った後、唐突に止んだ。
吹き飛ばされた皿は地面に落ちて割れ、そこに乗っていたレムは、跳ね飛ばされて地面を転がり、そばにあった岩に当たって止まった。
背中をしたたかぶつけ、やっとの事で顔を上げたレムが見たものは、仁王立ちになった彼と香珠を握り締め地面に座り込んでいるカルだった。
しばらくして、顔を上げたカルの口から言葉が漏れた。
「来鬼・ライキ?」
「 そう 」
カルにライキと呼ばれた彼は、笑って剣を鞘に収めた。
「思い出した?」
彼が座り込んだカルに歩み寄って、手を差し出す。
ひとつ頷いて、カルがその手を掴んで立ち上がる。
「おいで、帰ろう」
そう言った彼にカルが頷き、そのカルの背に彼の手が伸ばされた。
え? え? え? え? え? え? え? 何なの、一体?
まだ痛む背中をさすりながら、立ち上がったレムが見たものは、ゆっくりと霞のように消えていく二人の姿だった。
ゆっくりと、色が薄くなり、幽霊のように二人の向こうの景色が透けて見える。
「・・・・・カルっ」
思いっきり切羽詰ったようなレムの声に、カルが振り向いた。
薄くなる姿のまま、カルの口が動くのが見える。が、声はまったく聞き取れず、結局、そのまま消えていってしまった。
「コウジュのカル。本当にカルが香樹の香縷だとしたら、間違いなく、風の精霊玉の主でしょうね」
館に帰ったレムの話を聞いて、館の主人・マリーヌは、ためらう事無くそう言った。
精霊玉。確か伝説に登場する“精霊の力を秘めたもの”であり“自ら持ち主を選ぶもの”で、だけど、それは、世界に“天”“星”“火”“雷”“風”“水”“時”“土”“地”の九つしか存在しないと言われている。
その一つ、風の精霊玉の主がカル?