天秤座の期間中ということで、「天秤」にまつわる言葉の話題を紹介したい。
この前は二つの「scale」について書いたが、ここでは「天秤」の語源と「秤」という漢字の音読みについて書きます。
河島英五の『てんびんばかり』という曲がありますね。
「てんびんばかり(天秤秤)」というと「秤(はかり)」が二重になっていて変な感じするけど、(釣り合いを量る道具は)「てんびんばかり」が本来の言い方で、「てんびん」はそれを略したものとのこと。
というのは、「秤」という字は本来「びん」とは読まない(正しい音読みは「しょう」)。「てんびん」は本来「天平」と書いた。「びん」は「平」の唐音。「てんびん(天平)」とは本来「一本の棒の左右両端にぶら下がった物体がある形状」を表す言葉らしい。時代劇によく登場する、左右の荷物が入ったかごを肩に担いで物を運ぶ「てんびん棒」という道具もあり、重さを量る道具だけを表す言葉でもなかった。はかり(てんびんばかり)のイメージと「秤」という字の右側の「平」の音の連想が合わさったことにより「天秤」と書くものだという誤解が生まれ、慣用となったものだろう。
中国語では現在でも「てんびんばかり」のことを「天平秤(tiānpíng chèng ティエンピンチョン)」と言い、略して「天平(tiānpíng ティエンピン)」、「天秤(tiānchèng ティエンチョン)」とも言う。
日中辞典でたまたま「秤(はかり)」の見出しを見た時、対する中国語は「秤」でピンインは「chèng」とあったので、「てんびん」の「びん」や「平」という字の音とだいぶ違うなと思って、日本語の音読みはどうなっているか気になって漢和辞典も引いてみたら、「ショウ」とあった。「秤」という漢字は形声文字ではなく会意文字である。普通話(標準中国語)では「chèng」としか読まないが、南方の閩南語や広東語では読みが二つあって、一つは「平」の音に引かれて生まれた慣用読みと思われる。日本語の「天秤」も中国語の南方方言から来た可能性も考えられる。
「秤を使って重さを量ること」や「その秤の計量可能な最大重量」を意味する「秤量」も本来「しょうりょう」と読むが、「秤」の右側の「平」の音に引かれて「ひょうりょう」という慣用読みが生まれた。
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