「プカプカで投げ銭ライブがあるから行きませんか」
年下の同僚からメールがあり行って来た。
ジルはとうとうトンする気力も体力も無くなり、地面に寝そべったまま馬の水飲み場から動こうとしない。
雨は雪になる気配なのでUncleBeeが橇に乗せ、デッキの雨の当たらないところに引っ張り上げた。
「ジル」と声を掛けると顔をあげ私を眺める。
まだ大丈夫ね。
撫でてやり、
「ちょっと行ってくるからね」
観客は見知った顔ばかりだったけど、こんな天気のせいかちょっと少なかった。
ノンアルコールビールとゴボウのフライ。
夕食にたっぷりの行者ニンニク餃子を食べたので、お腹は空いていなかったけど。
いよいよ演奏が始まった・・・・
お、中々良いじゃない。
ところが始まってしばらくしたら、胃がシクシク痛み出した。
だんだんひどくなり、こうなると聴くどころの気分じゃなくなってしまった。
拍手するのも胃に響いて辛い。
帰りたかったけど みんな乗ってるし投げ銭をどうすればいのか分からず席を立つに立たれず。
ひたすら時計を眺めてじっと耐えた。
最後の曲でほっとしてコートを着たらどこかの誰かがアンコールの手拍子。
くーーー。
仕事が休みの日だったので銀行にも行かず財布を見たら、なんと1500円くらいしかない。
わーどうしよう。
もう最悪。
最後に笊が回って来てみんな1000円くらい入れてたのに、私は500円で勘弁してもらった。
痛みはMAXでおまけに吐き気まで。
頭の中に「摩周厚生病院」の文字が浮かぶ。
会計して飛び出す。
植え込みにしゃがんで・・・
夜で良かった~。
何とか胃痛も治まり、ジルの体を拭いて撫でてやりながらふと気が付いた。
そう言えば誰にも挨拶もしないで帰って来てしまったって。