あけましておめでとうござります!
今年もどうぞよろしくお願いいたしまする。
お正月3が日は外出を自粛し、家から1歩も出ぬお籠り正月だったのでございます。
で、昨日は久々に、2つの美術館をハシゴしましたのじゃ。
美術館のハシゴは、体力的にも気力的にもしんどいのじゃが、緊急事態宣言が出たら美術館もお休みになるやもと危惧したからのぅ。
渋谷区立松濤美術館「舟越 桂 私の中にある泉」
https://shoto-museum.jp/exhibitions/191funakoshi/
(展示室以外は写真撮影可)
舟越桂の都内での個展は、2008年の東京都庭園美術館「舟越桂 夏の邸宅」以来で、楽しみにしておったのじゃ。
2008年の「舟越桂 夏の邸宅」、ビスうさであるわたくしはまだ生まれておらんかったが、お供のEは感動し、「2008年 E的ツボな展覧会ベスト10」に入れたのでありました。
本展は、1978年から2020年までの代表的な彫刻作品、ドローイング、メモ、自作のおもちゃや小物などと、芸術家の父母や弟らの作品も展示。
彫刻作品は、ぐるっと360度観られるように展示されておるのが嬉しいのぅ。
キャプションも丁寧で分かり易うござります。
構成は以下の6章。
展示と作品リストは順番が違いまするが、作品リスト順に、気になった作品なども挙げまする。
ささ、まずは地下1階へまいるぞよ。
第1会場。初期から2000年頃までの作品が並んでおりまする。
【1章:私はあゆむ、私はつくりだす】
《午後の遺跡 No.2》1978 楠に彩色
木枠で囲われた美しい右足。
《聖母子像のための試作》c.1979 石膏
カトリック逗子教会の、174㎝の木彫の聖母子像の為のマケット。
舟越の聖母子像、しかも石膏の作品は、観る機会はあまりないやも。
《妻の肖像》1979-80 楠に彩色
木彫半身像の第1作目。まだ目も大理石ではなく木のままじゃ。
《マスク》1982 楠、大理石
大理石の玉眼を使った最初の作品。
彫刻家である父・保武が使う大理石の欠片にヒントを得、1982年以降、大理石に彩色しラッカーでコーティングした目をはめ込むようになったのじゃ。
艶やかな大理石の目を使った人物像は皆、左右の目が少し外に向いておるゆえ、視線が合う事はありませぬ。
《冬の本》1988 楠に彩色、大理石
ショートカットの小顔に細い首、白ブラウス白セーターの女性で、優しい表情と雰囲気がお気に入り。
【2章:私は存在する】
実在のモデルで制作する事は次第に減り、1990年代前後から、体の一部が変形した「異形」と呼ばれる人物像が現われまする。
木彫作品の制作は、作品と同じサイズのデッサンを描く事から始まるそうな。
《遅い振り子》1992 楠に彩色、大理石、鉄
頭部と胴体の前後が逆向きで、手も不思議な位置にあるのじゃ。
《山を包む私》2000 楠に彩色、大理石
1990年代から登場する「山」シリーズのひとつで、胴体を山に見立てておりまする。
《無題(未完)》late 1990's-c.2002 紙に木炭
美しい裸婦のドローイング。
ここから先は、2階の第2会場じゃ。
【3章:私の中に私はみつける】
2000年代に入ると「異形化」は更に本格化。
2004年には、半人半獣、両性具有の「スフィンクス」シリーズが登場。
《水に映る月蝕 》2003 楠に彩色、大理石
2003年、20年ぶりに制作したという裸婦像。
《言葉をつかむ手》2004 楠に彩色、大理石
Eが庭園美術館「夏の邸宅」で観て感動した美しい作品で、女性の左肩後ろから別の手が。
隣には《「言葉をつかむ手」のための習作》(作品リストでは第4章に記載)も展示され、見比べる事ができまする。
《海にとどく手》2016 楠に彩色、大理石、雑木
東京都美術館「木々との対話」で、非常に印象深かった作品。
東日本大震災を受けて制作した2作目。
《スフィンクスには何を問うか?》2020 楠に彩色、大理石、革
「スフィンクス」シリーズの新作。
オカピをイメージしたようなシマシマの、青いグラデーションの彩色が印象的。
【4章:私は思う】
木彫作品の為の習作やドローイング。
自らを「メモ魔」と語る舟越が書き留めたたくさんのメモや小さなスケッチも、たいそう興味深うござります。
舟越は「テレビっ子」でもあり、アトリエでもテレビを見ているそうな。
そんな舟越のアトリエも一部再現され、置かれたテレビでは3分程の映像[舟越桂 作品を語る 「スフィンクスの話」]も流れておりまする。
《「深い森」のためのドローイング》2011 紙にアクリル
深いブルーグリーンの、静かで神秘的なドローイング。
【5章:私の中をながれるもの】
彫刻家の父をはじめ、舟越家各人のドローイングと絵画作品の展示。
舟越直木《マグダラのマリア》2013 厚紙に木炭、パステル
2017年に逝去した弟の作品。
舟越道子《しづかな町で長生き時計が鳴る》1977 紙にグアッシュ
俳人であり、洋画も学んでいた母の作品。
舟越桂の独特な作品名は、俳人であった母の影響もあるそうな。
【6章:私ははぐくむ】
舟越が家族の為に制作したおもちゃや絵本が展示され、たいそう楽しいですぞ。
かような温かみのあるおもちゃや絵本を作ってくれるお父さん、羨ましいのぅ。
展示の1982年と1984年の絵本は、小さな画面で映像も流されておりまする。
《遊べる家》c.1991 合板、針金、ブリキ、ピアノ線、蝶番、電球、電池
ドールハウス好きなわたくしの心を擽る作品。
高さ42㎝の家は、正面にドアと5つの窓、煙突もある吹き抜け2階建てで、1階にはベッドやソファ、2階にはバスルーム。
こっそり持って帰りたい・・・(こら)
《顔のないイス》1990 欅と楠に彩色、シャベルの柄、皮
四つ足動物の姿で、頭部はシャベルの柄をそのまま使ったワクワクする椅子。
座りたい・・・(こらこら)
《ヤギの形をした木馬(ルイのヤギの木馬より)》1982 楠と欅に彩色、ボルト
アトリエの再現コーナーに展示。たいそう素敵な木馬じゃ。
乗ってゆらゆらしたい・・・(こらこらこら)
《皮手のうさぎ》c.1980 皮手袋、軍足、糸
かような人形も作っておったとはのぅ。
《あの頃のボールをうら返した。》2019 皮、紙
ラグビーボールを裏返したような皮のボールのあちこちに、紙製の人やら動物やら建物やらチェロやら舟越作品まで乗っており、そのボールを両手が支えておるのじゃ。
作品は勿論、松濤美術館の空間と舟越作品の雰囲気もぴったりで素晴らしく、ひとり占め状態でどっぷり堪能いたしました。
特に、彫刻作品の初期から現在までの変遷をしっかり観る事ができたのと、手作りおもちゃなどで新たな一面を知る事ができたのが嬉しゅうござりました。
会期は1月31日まで。ご興味ある方はぜひ。
もうひとつ観た展覧会の話は、また後日書きまする。
さて、ここからはおまけ話じゃ。
★本の話:其の壱
お籠り正月中に読んだ本の中から1冊。
服部まゆみ『一八八八切り裂きジャック』、分厚さに躊躇して未読だったのじゃが、読み出したら一気に読んでしもうた。
ちなみに今まで読んだ服部まゆみ作品で一番印象に残っておるのは、『この闇と光』でございます。
★本の話:其の弐
年末年始に見た「教場Ⅰ」と「教場Ⅱ」、見るのがキツいシーンもかなりあったのじゃが、気になる点も色々あり、原作の長岡弘樹『教場』シリーズを一気読み。
なるほど、ドラマと原作では違う部分もあるのじゃな。
ちなみに「教場0」は、警察学校が舞台ではなく、風間がまだ現場で若手刑事を指導していた頃の話じゃった。
★お菓子話
頂き物の和菓子、どれも美味しゅうござりました。
信玄餅は今まで桔梗屋しか知らず、金精軒のを食べたのは初めてじゃ。