海に行くのが好きです。
目の前に空と海しかないことにホッとします。
そこには仕事で使う漢字だらけの書類も、ハンコも交渉相手もいません。
似合わない愛想のある声を電話で出して、無理に笑顔を作らなくても良いのです。
ただただ、青い光景を見て、深呼吸をしていれば良いのです。
遠くを行く船や、たまに浮かぶヨットの進み、すうっと空を切る鳥の影を見ていればいい。
そうすれば、海の方から来た潮風に、ねぎらいのように頬を撫でてもらえます。
ただ、ずっとそうしていろと言われるとそれはまた難しいもので。
健康な身体をしたお腹の空く働き盛りは、縁側で茶を啜って1日を過ごせば幸福な身ではまだなくて。
まだまだ貪欲に体験したがる心を胸に抱えて、明日の書類のことを考えながら海の前でひとつ伸びをして帰路につきます。
たまには休むのも良いよね、と思える健やかさに感謝して。