先日テレビで数学者藤原正彦が「セクハラ問題もなく無事御茶ノ水女子大を定年退職しました」と話していて彼らしいと大笑いした。「国家の品格」がベストセラーになり、「遥かなるケンブリッチ」では我が家のイギリスでの生活と同じようなことが書かれ、高名な先生一家でさえ…と共感を覚えた事を思い出す。長女が中学生の時、学校で彼の母藤原ていが講演をした。終戦後幼い三人の子供を抱え、満州から北朝鮮を放浪し38度線を突破し命からがら帰国したその壮絶な体験談は30年たった今でも私の脳裏から離れない。その真ん中の男の子が”ヒコベエ”です。「小説にはフィクションをどんどん入れて面白くした方が良いかもしれないが、純粋無垢清廉潔白完全無欠な自分の人生にわざわざ一点の曇りを入れる事もあるまいと事実を回想した自伝的小説」と彼らしい事を言っている。戦後、皆極貧であったのに笑いがありお互い助け合った暖かな生活があった。”いじめ”もあったが陰湿ではなかったなど彼のユニークな性格が実に面白い。中学生に読んで欲しいと思う。