近くのお百姓さんが目の前で摘んでくれた初そら豆です。豆は柔らかく口の中でつぶれてしまう。豆の口が黒くなるまで畑においておく人もいるけれど、やはり若い豆(この辺りの方言で”みるい”と言う)の方が甘くて美味しい。戦時中、父が作ったそら豆を干して炒ったものをお茶缶に入れて常備してあり、これが子どもたちのおやつであった。空襲警報が鳴ると弟の手を引いてこのそら豆缶と”ござ”を持って防空壕へ駆け込む事が私の役目とされていた。ひもじい思いをした事がなかった。父の五人の子どもを守る”働き”に折々に感謝している今です。そら豆に出会う度に思い出す。