ヨーコとヨウコウを愛でる

「オレの手術から1年たったのでお祝いですね」

 

小僧がそう言っておにぎりを頬張った。

 

去年の3月11日、大きな癌がみつかった小僧の腎臓の摘出手術が行われ、オヤジは同日白内障の手術で入院していた。

 

あれから1年経って、癌の転移もなく経過は良好で、もう片方の腎臓に石がまだ残っているもののすぐに取るほどではないとのことで、引き続き経過観察。

 

毎日のように汐入公園などの桜の開花状況を歩いて見てまわっていて、緋寒桜などの早咲きの桜がいい感じだったので、家族3人で花見へ出かけたのだ。

 

汐入大橋を渡って右手にはそこそこ人がいて賑わっていたが、こちらは背後のマンションで日陰になるのがわかっていたから、

反対側の日当たりの良いところへシートを引いてお弁当を広げた。

小僧は早速おにぎりに手を伸ばし、オヤジは自宅にほんの少し残っていたデュワーズとアーリータイムスをブレンドしてペットボトルに詰め、コンビニのアイスコーヒー用の氷に入れて花見酒。

花は毎年見てまわっていたが、花見酒は何年ぶりだろう?

 

お日様の下で桜を愛でながら飲む酒は格別であります。

 

子供たちと鳥たちは花から花へと飛び回り、デジイチを構えたお年寄りが熱心に写真を撮っている。

ふと見ると、ウエディングドレスの女性が花の下でボーズをとっているではないか。

ようやくコロナが開けたのだなぁと思い、ウエディングドレスのお姉さんをツマミにブレンドしたウイスキーをグビッと。

 

 

それから5日後の水曜日「ヨーコ」から連絡があり、再び花見の段取りとなった。

 

前回はまだあんまり開花していなかった「ヨウコウ」がようやくポツポツ咲きはじめ、木によっては6分咲きぐらいで、ニュースではソメイヨシノの開花宣言が出されたと言っていた。

前回よりも人が出ているかと思ったが、平日だしソメイヨシノはまだまだなのでほぼ貸切状態で場所は取り放題。

 

で、前回とは違う場所で、「ヨウコウ」の咲いている木の近くで「ヨーコ」を待っている間にプシュッと。

札幌の限定醸造「サクラビール」、なかなかうまいね。

朝からひき肉と玉ねぎを炒めソースで煮込んでタコスのタネを作り、トルティーヤに包んでタコスにしたが、ちょっと見た目はイマイチだけど味はまあまあ。

5、6年前までは花見の人を横目に走っていたものだが、ソメイヨシノが満開になる頃には少し走れるだろうか❓

 

ふと見ると、今日は若いお兄さんたちがカメラの前で踊っていた。

YouTubeかTikTokへでもあげるのだろうか、何度も何度もテイクを重ねていたが、まあやるがいいさ若いんだから、花よりダンス🕺

 

さらにふと見れば、白い箱を持った何人もの人たちが地面を見ながらかがんで落ちた花びらを拾っている。

 

何に使うんだろうかとかあちゃんと顔を見合わせる。

 

ケーキとかスイーツの飾り❓押し花、フラワーアート❓

こちらにやって来た良さげなお姉さんに何に使うんですかと問うと、「結婚式用」だとのこと。

 

なるほど、前回のウエディングドレスといい、コロナ明けでウエディング業界もリキが入っているのだろうか。

 

そしてさらにまたふと気がつくと、ワシらの目の前の桜の木にやたらとカメラマン、ウーマンがやって来て写真を撮っているのだ。

 

やはり毎年のようにサクランをして桜を見て回っているこのオヤジの鑑賞眼が確かなのだと思ってはみたが、いやしかしでもなぁと思い直し一心に写真を撮っている良さげなお姉さんに声をかけて問うと、

な〜んだ、桜なめでスカイツリーかい。

 

すると缶チューハイなんぞを飲んだ「ヨーコ」が、アタシなめで「ヨウコウ」を撮ってと言う。

まあまあ4人の子持ちも子供がいないときはムスメになるかぁ。

 

二週連続の良い花見であった。