順番からいっても、これまでの病歴からいっても、先にこの世からオサラバするのはこのポンコツだと思っていたのに、神さまの気まぐれかなんだか知らないが、思いがけずにアッという間に4つ下の弟が逝ってしまった。
弟が亡くなる直前くらいから痛み始めた左肩と、ひっきりなしに痙攣する左目が鬱陶しく毎晩飲まずにはいられないが、酔いつぶれて寝てしまうことはなく、かといって目をつぶってもちっとも眠くならず、もう何日も悶々として朝を迎えている。
気がつけば両腕の青アザが酷く、
擦ってもいなけりゃ力仕事もしていないのに、青アザが破れて血が滲んでいる有り様。
目を瞑ると脳裏に響くのは「吉田拓郎」の「おきざりにした悲しみは」。
作詞 : 岡本おさみ
生きてゆくのは ああ みっともないさ
あいつが死んだ時も
おいらは飲んだくれてた
そうさ おいらも罪人のひとりさ
ああ また
あの悲しみを おきざりにしたまま 🎸
我が家の墓地の管理料は長男に引き継がれるのだが、このポンコツがあとどれくらい生き永らえるのかわからないし、もしくたばっちまったら小僧が引き継がなければならず、それはちょっと厳しいので弟に引き継いでくれないかと頼んで手続きしたのは彼が白血病になる少し前、いま考えるとそれはなんだか切なく、てめえのことしか考えていないようにも思われ・・・。
葬祭センターの納棺の儀式で死出の装束の手っ甲脚絆などを弟に付けたが、ばあさんの時もじいさんの時もこれやんなかったよなぁ。
まあこれも料金の内なんだろうが、係の人に聞いたら、野球好きだったりサッカー好きだった人はそういう格好をさせたりもできるんだそうな、なるほどね。
「納棺師」に化粧をしてもらい、ほんとうに穏やかに寝ているような弟に「夜明け前」を綿に湿して口に含ませてやった。
ブログを見た「バーバーくん」が「夜明け前」の大吟醸を送ってくれたので、自宅の仏前に供えてから弟の息子たちと口開けしよう、ありがとう「バーバー」🙏
葬儀の時に弟の写真をたくさん飾り、その中に彼が描いたイラストがあった。
聞けば生前、酒を飲みながらよく絵を描いていたという。
仕事のPOPを作ったり、旅行のお土産を職場の人にあげる際にちょこっとイラストを添えたりしていたんだそうな。
へぇ、そんなことはぜんぜん知らないし考えもしなかった。
お斎の献杯をして各テーブルに「夜明け前」を注ぎにいって職場の人に話しを聞いても、弟が日本酒が好きでそういう集まりにも出ていたとか、カラオケで弟が「サザン」を歌わないと始まらなかったとか、お斎に参加してくださったほとんどの職場の方がモグランポへ食べにいらしてくれたと聞き、情けないやら申し訳ないやらで身が縮む思いだった。
仮面ライダーのフィギュアが柩に入れられているのを目にし、そうかぁライダー好きでもあったのかぁ、ソフビも入れてOKなのかぁとトンチンカンなことを考えつつも、柩にたくさんの花を入れてお別れする女性方が涙で鼻声なのにつられて、このオヤジも痙攣する目からタラ〜ッと涙が垂れてしまった。
ほんとうに弟のことは何にも知らなかったんだなぁと、何年かぶりにスーツにネクタイ、革靴履いて、借りてきた猫みたいにかしこまっていたけれど、弟のことばかりかいい歳こいて世の中のこともなあ〜んにも知らなかったんだなぁと、己のオメデタさにため息が出てしまう。
『人生についてよく考えろって。
ぼけっとしている間に、
あっという間に骸骨になっちゃうんだから人間は』
(男はつらいよ 第22作 噂の寅次郎 より)
骨つぼに入っちまった弟に、そう言われているような気がしてしまうポンコツであった・・・。